
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・「金利」が私立学校の運営にどのように関係するか知りたいと思っている人。
嬉しいことだけじゃない|”金利”が与える私立学校への影響
一時期とは打って変わって、ようやく「金利のある世界」が戻ってきました。

小数点以下に何個”0”があるんだろう、と思うくらい金利が低かった時期もありましたね。
預貯金口座に今までとは桁が違う(と言ってもまだまだ少額ですが)利息が付いているのを見て、ほんの少し嬉しさを感じている人もいるのではないでしょうか。
ただ、こうした金利変動は、私たちの日常生活だけでなく、当然私立学校の運営にも大きな影響を与えています。
例えば、
- 収入のほとんどを占める学納金(保護者の家計負担増)
- 施設設備更新のための借入
- 特定資産・預貯金を活用した資産運用
といったようなところです。

もちろん、貸与型の奨学金に係る金利なんかも関わってきますね。
どれも、私立学校の永続的な運営には欠かせないものばかり。
つまり、金利の変化がそのまま経営リスクにつながることがありえるというわけです。
このように、学納金、奨学金制度、学校法人の借入金、さらには資産運用まで、金利は学校経営のあらゆる場面に関わる重要な指標と考えられます。
本記事では、その金利が変わると私立学校の運営にどのような影響が出るのかを、わかりやすく整理します。
私立学校事務員として働くうえで、今日からの実務に役立つ視点をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
はじめに|金利が私立学校の運営に与える影響とは
金利は、一般家庭の住宅ローンや預貯金だけでなく、私立学校の運営全体に影響を与える重要な経済指標です。
特に私立学校は、学納金収入に大きく依存しているため、金利の変動が保護者の家計に影響し、その結果として学校の収入にも波及します。
そのため、私立学校の経営を支える私立学校事務員にとって、ある程度の金利に関する知識は必須とも言えるわけです。
そこでまずは、「金利」についての基本事項を整理しておきましょう。
金利とは何か
まずは以下の2つ状況を想像してみましょう。
- お金を借りるとき
- お金を預けるとき
前者の例としては「教育ローン」、後者の例としては「金融機関への預貯金」が挙げられます。
教育ローンの場合、基本的に借りた分にプラスアルファしたお金を返す必要があります。

100万円借りたら105万円返すみたいな感じですね。
このケースの場合、金利は以下のとおりとなります。
(105万円-100万円)÷100万円×100=5%
なお、プラスアルファの分5万円のことを「利息」と言います。
逆に金融機関への預貯金の場合はプラスアルファした分、お金がもらえます。

100万円預けたら105万円に増えたといった感じですね。
この場合も先ほどの例と同じく「金利5%」「利息5万円」となるわけです。
違いを理解しておきましょう。
なお、このあたりの知識を習得するために、3級FP技能検定レベルの内容を理解しておくことをおすすめします。
過去の記事でも解説していますので、そちらをご覧ください。

国の教育ローンの仕組みや「元利均等返済方式」などのお金の返し方に関する知識は、保護者や学生生徒への説明の際に役立ちますよ。
金利が変動する背景
では、どんな時に金利は変動するのか。
主なものを挙げると以下のとおりとなります。
- 景気の良し悪し
- 物価の上下
- 為替相場の変動
全国銀行協会のホームページでもう少し詳しく解説していますので、よろしければそちらもご覧いただければと思います。
景気・物価・為替と金利の関係
(一般社団法人 全国銀行協会ホームページへのリンク)
日本では長らく低金利が続いていましたが、近年はこれらの要因が複合的に影響し、金利が上昇する局面が増えています。
そのため、私立学校も金利動向を無視できない状況になってきています。
以降では、そのなかでも特に金利の影響と関りが深いものを詳しく見ていきたいと思います。
① 学納金への影響|保護者負担と学校側の判断
学納金は学校の主要な収入源であり、保護者の家計状況に大きく左右されます。
金利が上昇すると、
- 住宅ローン
- 教育ローン
- クレジット分割
などの返済負担が増え、学納金の支払い余力が低下する恐れがあります。

学納金の支払いよりも生活の安定の方が優先順位が高くなるのは当然のことですからね。
特に住宅ローンは借入額も大きいケースが多く、金利上昇による家計へのダメージは大きいものと予想されます。
また、変動金利を適用した教育ローンも、金利上昇局面では返済額が増加します。

国の教育ローンだと固定金利なんですけどね。
その結果、
- 入学辞退者の増加
- 分納、延納希望の増加
- 滞納リスクの上昇
といった影響が出る可能性があります。
さらにクレジット払いの金利負担増の影響も無視できません。
以前にクレジットカードを利用した学納金の支払いサービスを紹介しましたが、金利が上昇すると、こうしたサービスの利用を差し控えることも予想されます。

学校側もすすめるのを躊躇してしまいますよね。
これらローンやサービスにかかる金利は学校が直接設定するわけではありませんが、その動向は注視しておく必要があります。
② 奨学金制度への影響|収入源と財源の観点
続いては奨学金制度についてです。
貸与型奨学金は、金利が上昇すると返済負担が増えます。
特に日本学生支援機構(JASSO)の第二種奨学金は変動金利であり、金利上昇局面では返済額が増える可能性があります。
第一種奨学金では借りられる金額が少ないため、第二種を選択または第一種と第二種を併用しているという学生は少なくありません。

単純に金額だけで見れば、学納金収入の半分以上は日本学生支援機構の第二種奨学金で賄われているような感覚ですね。
また学校独自の奨学金制度を設けている場合も要注意です。
貸与型奨学金の滞納リスクという面はもちろんですが、学校によっては「基金」や「寄付金」などの運用益を財源としていることがあるからです。
このようなケースでは、金利が上昇すると運用益が増える一方、金利低下時には財源が圧迫されることがあります。
- 適切な奨学金枠の設定
- 給付型へのシフト
- 返済猶予制度の整備
金利変動に応じてこうした点を柔軟に見直すことが求められます。
③ 借入金への影響|設備投資・運転資金
次は借入金についてです。
学校法人が借入を行う典型的な場面としては、
- 校舎建設
- 体育館・グラウンド等校舎以外の施設整備
- ICT設備導入
これらは多額の資金が必要であり、借入金の金利が経営に大きく影響します。
ちなみに私立学校にとって最も有力な借入先となるのが私学事業団。
この私学事業団のホームページに融資金利の推移が掲載されています。
そのなかの「一般施設費」の「一般分」という区分を見てみると、
- 2024(令和6)年4月:1.80%(期間30年)
- 2026(令和8)年4月:3.40%(期間30年)
と、ほぼ倍になっています。

私学事業団の融資は固定金利なんで、「返済中に金利負担が増える」といった心配はないんですけどね。
一方で、変動金利で借入をしている場合、金利上昇は返済額の増加につながるため、返済計画に与える影響は決して小さくありません。
- 教育研究活動にかかる費用の圧迫
- 設備更新の遅延
- 人件費の抑制
- 固定金利:金利上昇局面に強い
- 変動金利:低金利時に有利だが、上昇リスクあり
こうした基本的な知識を踏まえて、長期的な視点で金利リスクを管理する必要があります。
④ 資産運用への影響|金融商品の管理
最後は資産運用です。
学納金への依存度が強い私立学校において、収入源の多角化は経営上の課題の一つに挙げられます。
以前の記事でも「収入源の多角化」について触れていますので、そちらもご覧ください。
学校法人が保有する主な資産として、
- 各種特定資産
- 預貯金
- 有価証券
などがよく貸借対照表で見受けられます。
これらの運用益は、奨学金や設備投資、運転資金の財源となります。
従って、金利上昇時には預金利息や債券利回りも上がり運用益が増え、経営も安定します。
一方、当然ですが、金利が低下すると運用益が減り、奨学金や設備更新、支払資金の財源が不足する可能性が生じます。

私の勤め先のような小規模校ですと、そもそも保有する資金の規模も小さいので影響は少ないんですが。
喜んでいいのやら悲しんでいいのやら。
先述のとおり永続的な学校の発展を考えると、収入源の多角化は重要です。
そのなかでも資産運用は収入源の柱となる可能性を秘めています。
チャンスを逃さず、かつ適正なリスクをとりながら取り組んでみましょう。
金利変動に備えるために学校が取るべき対策
基本的に私たち私立学校事務員が金利の動向を左右することはできません。

逆に金利に影響を与えられるような人は私立学校事務員になんかなっていませんからね。
従って、金利の動きに一喜一憂せずに業務の遂行に集中することが求められます。
では、何ができるのか。
それは、「保護者等への適切な情報提供」です。
これまで述べてきたように、金利上昇による学納金負担の増加は、保護者の不安につながります。
学校側は、
- 学納金支払猶予に関する制度の周知
- 各世帯の状況に応じた奨学金制度の提案
- 学校以外の団体等が運用しているサービスの案内
などを丁寧に説明することが求められます。
一昔前の低金利時代であれば、正直なところ、学納金の納付が困難なケースだと気軽に日本学生支援機構の第二種奨学金をすすめていました。
ただ、今はさすがに慎重に対応しています。
もちろん、第一種だと貸与月額単価が低いことや給付型は成績基準を満たさないことなどの事情により、有利息の制度を利用せざるを得ないという状況もあります。
そんな場合でも、固定金利と変動金利の違いを説明したり、シミュレーションを活用してどのくらい返済が必要かを「見える化」するといった対応は可能です。
適切な知識を身につけ、できることに集中した対応を心がけましょう。
まとめ
金利は、私立学校の運営において見落とされがちな要素ですが、
- 学納金
- 奨学金
- 借入金
- 資産運用
といった重要な領域に深く関わっています。
金利変動を正しく理解し、適切に対応することは、学校運営の安定化と保護者の信頼確保につながります。
今後も金利動向を注視しながら正しい知識を習得し、保護者等への説明など実務で活用していくことが重要です。
そのための初めの一歩として私がおすすめするのは3級FP技能士資格の取得です。
興味があれば、ぜひ学習してみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。




