
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・ネット詐欺に遭わないために普段の業務で気をつけるべきことを学びたい人。
私立学校にとってネット詐欺は身近に潜む脅威の一つ
年々、教育機関を狙ったネット詐欺やサイバー攻撃が増えているように感じます。
この記事を執筆している2026年6月には、静岡県の市立中学校で事務員がサポート詐欺に遭い、保護者から預かった現金等約1,000万円を不正送金してしまった事件が話題になっています。
この事件以外にも、高知県の小学校で学校のパソコンが遠隔操作されるという事案も報じられています。

こちらもサポート詐欺のようですね。
「学校は狙われにくい」というイメージを持つ方もいますが、これらの事件からわかるように、実際には私立学校は攻撃者にとって“侵入しやすいターゲット”と思われている節があります。
特に事務員は、保護者・取引先・行政など多方面と連絡を取るため、外部とのメールや請求書のやり取りが多く、日常業務の中で詐欺メールや偽サイトに接触する可能性が高くなりがちです。
一方で、学校現場には専任の情報セキュリティ担当者がいないケースも多く、事務員一人ひとりの判断が被害を左右する場面も少なくありません。

専門家を雇えるような余裕のない学校の方が多いでしょうね。
しかし、心配する必要はありません。
ネット詐欺の多くは、「知っていれば防げる」ものばかりです。
この記事では、
- 私立学校事務員が遭遇しやすいネット詐欺の実例
- 今日からできる実務的な対策
を中心に、学校現場に合わせた形でわかりやすく解説します。
なお、以前の記事で、小規模私立高校における情報セキュリティ対策について紹介していますので、そちらも参照していただければと思います。
以前の記事とあわせて参考にしていただければ幸いです。
なぜ私立学校がネット詐欺の標的になるのか
私立学校がネット詐欺の対象になりやすい理由はいくつか考えられます。
まず、学校は企業と比べてセキュリティ投資が十分でないことが多く、攻撃者から「突破しやすい」と見られやすい点が挙げられます。
特に中小規模の学校では、IT専任者がいない、セキュリティポリシーが形骸化している、セキュリティ対策をする資金的余裕がないといった状況が珍しくありません。

緊急性を考えると、熱中症対策とかを優先してしまうんですよね。
また、先述のとおり私立学校事務員は外部とのメール連絡が非常に多く、保護者・取引先・行政など、さまざまな相手とメールでやり取りをします。
攻撃者はこの“メールの多さ”に目をつけ、巧妙なフィッシングメールを送りつけたり、逆に学校になりすまして偽メールを送ったりするわけです。
さらに、学校の公式サイトや教職員アカウントが乗っ取られると、保護者や生徒にも被害が広がるため、攻撃者にとっては「影響力の大きいターゲット」として魅力的です。

氏名住所だけでなく、口座情報や場合によっては所得に関する情報まで保有しているケースがありますからね。
つまり、学校は「狙われる理由がある」組織であり、事務員はその最前線に立っていると言えます。
私立学校事務員が遭遇しやすいネット詐欺の具体例
ここからは、学校現場で実際に起きやすい詐欺の手口を確認していきたいと思います。
ニュースなどでお馴染みのものも多いとは思いますが、情報の整理の意味も込めて今一度見ておきましょう。
① フィッシングメール(アカウント情報の窃取)
私の個人的な感覚としては、遭遇する確率がダントツに高いのがこのフィッシングメールです。
具体的なメールの内容については、以前に記事として取り上げていますので、そちらもあわせてご覧いただければと思います。

やっかいなことに、どんどん巧妙になってきているんですよね。
パッと見、普通のメールと区別がつきません。
- 「ポイント失効」
- 「パスワード有効期限切れ」
- 「口座引落不能」
などそのバリエーションも様々。
学校でそのポイントやサービスを利用している場合は、思わず本物のメールだと勘違いしてしまいます。
あと、この手のメールが届くのは、たいていネットショッピングで利用しているアカウントです。
こうしたアカウントは、その部署に所属する事務員でIDやパスワードを共有して使用しているケースが多いと思います。
そのため、自分が気を付けていても他の誰か一人がうっかりメール記載のリンクを開いてしまうという可能性がある点も注意です。
② サポート詐欺(不正送金)
冒頭で挙げた静岡県の市立中学校の事例はこれに該当します。
偽セキュリティ警告の画面を表示するなどして相手を不安に陥れ、偽のサポート窓口に電話させます。
偽サポート窓口では、有償のサポート契約が必要といった旨のことが告げられ、サポート料をクレジットカードや電子マネーで支払うように促されるというのが基本的な流れになります。

私の父親が自宅のパソコンを使用中にこの画面が出たことがありますね。
慌てて私を呼びに来たので何事かと思いました。
かなり不安をあおる画面になっているので、全国各地の学校で同様の手口による被害が報告されているのも納得できます。
③ 請求書・振込先変更詐欺(金銭の窃取)
こちらはまだそれほど被害の情報を聞いたことがありませんが、個人的にはこれから増えるのではないかと警戒している詐欺です。
というのも、最近多くの取引先が、従来の紙による請求書を見直し、WEB請求書サービスや請求書をPDFにしてメールで送付する形式に変更しているからです。

コスト増で郵送費もバカにならないですからね。
これがもっと普及してくると、WEBやメールによる請求書のやりとりが当たり前になります。
そうなると、もし取引先を装ったところから「こちらに振り込んでください」と偽の請求書情報が送られてきても、気づかずにそのまま振り込んでしまうというケースが増えるのではと考えています。

特に年度末なんか、請求書が集中するうえに繁忙期になるため、攻撃者にとっては狙いやすいタイミングではと懸念しています。
今のうちに準備を進めておきたいところです。
私立学校事務員が今日からできるネット詐欺対策
続いては、専門知識がなくてもできる、実務的な対策を紹介します。

情報セキュリティ対策ってお金がかかるのよねぇ。
そういった印象をお持ちの方も多いと思います。
実際、冒頭で述べましたとおり資金的に理由により、情報セキュリティへの投資を後回しにしているという声は私の周りでもよく聞きます。

情報セキュリティ対策は導入時の費用に加えて、導入後のランニングコストも割とかかるんですよね。
私の勤め先では、校内の無線LANの運用管理を外部の会社に委託していますが、サービス料として年間100万円ほどの費用が発生しています。
規模の小さな学校としては、決して小さな額ではありません。
非常時に備えた「保険料」と割り切ることも時には必要かもしれませんが、あまりお金をかけるのは個人的にはおすすめしません。
というのも、人的な取り組みでも十分な効果が期待できるからです。
そこで以降では、私の勤め先のような規模の小さいところでも、それほどお金をかけずに実践できるセキュリティ対策を紹介したいと思います。
どれも私自身効果を実感しており、さらに「今日からできる」ものばかりです。
対策①送金はダブルチェック体制で実行する
1つ目はサポート詐欺対策がメインです。
インターネットバンキングを使って送金する場合のチェック体制が、被害を防ぐカギとなります。
サポート詐欺の事案を見ていると、一人の担当者がインターネットバンキングを使用してお金の送金まで行っている様子です。
この状況はセキュリティの観点からかなりよくありません。
「お金を出す準備をする人」と「お金を出す権限を持つ人」は分けるべきです。

会計ソフトで仕訳を入力する人と、インターネットバンキングで「送金」まで実行できる人を分けるというイメージですね。
こうすることで、実際にお金を出す段階で「これ、何のための出金?」と確認することができます。

送金権限を持っている人がサポート詐欺に遭ったら意味ないんじゃないの?
そう感じた方もおられると思います。
だから、送金権限を持った人が変なことをしないようにするための仕組みも必要となってきます。
参考ですが、私の勤め先では、送金する前に必ず自分とは別の事務員に声をかけ、送金内容を確認するようにしています。
性善説に頼ったやり方ではありますが、私個人としては有効だと実感しています。
なお、こうしたお金の出金に関する仕組みづくりは、横領などの不正防止にも役立ちます。

PTAのお金を横領したみたいな事件のことですね。
あの手の事件も、出金時のダブルチェック体制が整備されていれば防止可能です。
詳しくは別の記事でも触れていますのでご参照ください。
お金もかけず、しかもそれほど手間もかからずにリスクを軽減できますのでおすすめです。
対策②メールの「送信元」「URL」「添付ファイル」を必ず確認する
2つ目は不審なメールへの対策です。
繰り返しになりますが、私立学校事務員の職場には様々なメールが毎日のように届きます。
日常業務をこなしながら、いかにしてそれらの中に紛れる巧妙なフィッシングメールを避けるかというところがポイントとなります。
資金的に余裕があれば、そもそもそういったメールが届きにくくする仕組みを作ることも可能かもしれません。
しかし、そのような資金的余裕がない学校も少なくないというのが現状です。
従ってまずは、自分の力でフィッシングメールを見分けられるようになりましょう。
その「ど定番」とも言える方法が以下の3つとなります。
- 送信元アドレス
アドレスを見て「意味不明な英数字の羅列である」や「会社名が入ってない」をチェック - URL
クリックしない。ダメ、絶対 - 添付ファイル
開かない。ダメ、絶対
当たり前すぎる内容と感じられるかもしれませんが、この当たり前を確実に実行することが何よりの対策になります。
あと、よく時間術の書籍などで紹介されている「メールを見る時間帯を決める」という方法。
これはそもそも、メールを随時確認することによる時間のムダを削減するためにすすめられている方法ですが、メールによるネット詐欺対策にも有効だと私は感じています。
「この時間はメールチェックに充てる」と決め、そこに集中することで、冷静に不審なメールを見極めることができます。

落ち着いて見れば「あれ?」という点に大概気づきますよ。
もちろんいつもの取引先などからのメールであることが確認できれば、URLをクリックしたり、添付ファイルを開いたりしても問題ありません。
落ち着いて対処しましょう。
対策③情報は「早く」「広く」共有する
先述したように、事務員間でアカウントを共有して利用しているサービスがあったりします。
そんな状況で、自分一人だけがリスクを回避できても、周りの別の人が引っかかってしまう可能性があります。
だから「こんなメールが届いているよ」など気づいたことを早く周知することが大切です。
そしてよくありがちなのが「所属部署にだけ周知してしまう」ということ。
高校だと「事務室の事務員」には周知したが、「職員室の教員」には連絡していなかったというケースはよく起こります。

良くも悪くも切り分けられていますからね。
同様のリスクが別の部署にも及んでいる可能性がありますので、必ず「学校全体」に周知するようにしましょう。
おすすめなのは、校内の教室配置図を常に机上の見えるところに置いておくこと。
「校長室」とか「職員室」、「保健室」など物理的に場所を確認することで、「ここにも知らせておかなきゃ」という気づきにつながります。
大学など大きな組織であれば、情報機器管理担当部署が設置されていると思いますので、そちらに連絡して、対処を任せましょう。
まとめ
ネット詐欺は年々巧妙になっていますが、お金をかけなくても基本的な対策を徹底するだけで、多くの被害は防げます。
私立学校事務員は、日々の業務の中で詐欺メールや偽サイトに触れる機会が多いため、「気づく力」がとても重要です。
- お金の出金はダブルチェックを基本とする
- 時間を決めてメールの確認を丁寧に行う
- 学校全体で情報を共有する
こうした小さなことの積み重ねが、「気づく力」の養成だけでなく、リスクを避ける仕組みづくりにも役立ち、学校全体の安全を守ることにつながります。
今日からできる対策を一つずつ取り入れ、安心して働ける環境を整えていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。



