
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・イマイチよくわかっていないのに契約書や見積書のチェックを担当させられる人。
どうすればいいの?なぜか回ってくる契約書・見積書チェック業務
私立学校事務員として働いていると教員から、

この契約書、見てもらえませんか?
という依頼を受けることがしばしばあります。
そのたびに、

いや、別に法務の専門家じゃないんですけど。
と言いたくなります。
というより、実際に言います。
それでも教員の頭の中では、
- お金のことは事務員
- 契約のことは事務員
- 社会保険のことは事務員
などといった固定観念ができあがっていて、こちらの反論に聞く耳を持ってくれません。
結果的に、チェック業務が回ってきてしまいます。
そして契約書や見積書をチェックすると、
「どこを見ればいいのか分からない」
「これで本当に大丈夫なのか」
という不安に襲われます。
繰り返しになりますが、私立学校の事務員は法務の専門家ではありません。
にもかかわらず、契約内容の妥当性を判断し、学校のリスクを最小限にする役割を担うことが多いというのが私の実感です。

教育学部卒業の人間に契約書の中身なんてわかるわけないでしょ。
私の周りでもこのような声を何度も耳にしています。
それだけ、事務員にとってこの業務のストレスは大きいということです。
そこでこの記事では、私自身が契約書・見積書チェック業務を担当した際に気になったポイントや役立ちそうな視点、知識などをまとめてみました。
新人の方はもちろん、経験者でも「そうそう、これある!」と感じるような内容を集めています。
皆さんが契約書・見積書チェック業務を担当するうえでの一助となれば幸いです。
なぜ事務員は契約書・見積書チェックで悩むのか
契約書や見積書をチェックする場面は、私立学校事務員にとって日常的に発生します。
先述したように、教員から依頼を受けるケースもありますが、自分の担当業務を進めるなかで契約書や見積書のチェックをする必要性が生じることも少なくありません。
多くの学校法人では経理規程などで、
「〇〇円以上の場合、1社以上の見積書が必要」
「△△円以上の場合、契約書が必要」
といった基準が定められています。
だから、自分の担当業務に必要な物品やサービスを注文する際、こうした基準に当てはまると、自ら見積書や契約書を相手先に依頼し、受領する必要があります。

もちろん、内容もその人がチェックしますよ。
しかし、ただでさえこうした書類に触れる機会の少ない事務員にとっては、チェックポイントがわからない。
そんな不安を抱えながら確認作業を進める羽目になるわけです。
では、なぜこの業務は他の事務員の仕事と比べてこんなにも不安を感じやすいのでしょうか。
まずはその理由を整理しておきましょう。
理由1:補助金の不正受給リスク
まず大きな理由として、学校法人特有のリスクがあります。
それが「補助金の不正受給リスク」です。
一般企業と異なり、学校は教育機関としての公共性を持ち、保護者や地域社会からの信頼を基盤に運営されています。
その公共性を表すものの一つが補助金です。
教職員の人件費や学校の運営費の一部を税金が原資となる「補助金」によって賄っています。
そしてこの補助金について、定期的に外部からの検査を受けます。
代表的なものとしては会計検査院の検査があります。
これについては、別の記事でも取り上げていますので、そちらもご参照ください。
そうした検査の際には規程に則って、
「ちゃんと見積書を確認しているか」
「契約書を締結しているか」
というところを見てきます。
この検査によって、契約の不備や見積内容の不整合が発覚すると、単なる事務ミスでは済まされず、「補助金の不正受給」として取り扱われてしまいます。

「ミス」ではなく「故意に」多く補助金の交付を受けたとみなされてしまうおそれがあるんですよね。
そうなってしまえば当然、学校全体の信用問題に発展する可能性があります。
事務員はそのリスクを肌で感じているからこそ、慎重にならざるを得ないのです。
理由2:契約書・見積書の多様性
さらに、高校の事務室などでは契約や見積の依頼が多様であることも悩みの種になります。
備品購入、修繕工事、ICT機器導入、教材のサブスク契約、行事旅行の手配など、ジャンルが幅広く、毎回同じ形式の契約書が来るわけではありません。
仕様も金額も期間もバラバラで、事務員はその都度「今回の契約はどこに注意すべきか」を判断する必要があります。
また、先述したように学校法人は法務部門が充実しているとは限らず、必ずしも専門知識を有しているとは限らない事務員が一次チェックを担う構造になっていることも多いです。
専門家ではないのに、様々な契約書・見積書に対し、専門家のような視点が求められる。
ここに大きなプレッシャーが生まれます。
対策:自分の力不足と考えない
これまで見てきた2つの理由からわかるように、事務員が契約書・見積書チェックで悩むのは、能力不足だけではなく、学校法人という組織の構造的な理由も大きいのです。
だからこそ、悩むこと自体は自然であり、むしろ慎重に確認する姿勢は学校にとって非常に価値があります。
その慎重さを持ちながら、以降で紹介する「最低限のリスクを回避するための“判断の軸”」を学ぶことで、専門家でなくても、学校を守る立場を担うことができるようになります。
それらを一緒に見ていきましょう。
契約書チェックでまず見るべき“2つの軸”
まずは契約書の“判断の軸”についてです。
契約書をチェックする際、すべての条文を細かく読み込む必要はありません。
もちろん、細かく読めるに越したことはありませんが、契約書の知識が十分でない事務員がまず押さえるべきポイントは、実は大きく分けて2つだけです。
その2つとは、以下のとおりです。
- 金額・支払条件
- 期間・納期
とりあえずこの2つを軸に確認すれば、重大なリスク、特に補助金の不正受給リスクを見落とす可能性は大きく減ります。
本当はこれに加えて、責任範囲(瑕疵・再委託・損害賠償)なども見ておきたいところですが、専門的な内容が多いのでここでは省略させていただきます。

機密情報に注意して生成AIを活用すれば、専門知識なしでも責任範囲についてはある程度チェックは可能ですよ。
それでは、一つずつ見てみましょう。
①金額・支払条件
まず1つ目は 金額・支払条件 です。
契約書と見積書の金額が一致しているかは必ず確認しましょう。

そんなの一致していて当然じゃないの?
そう思った人がほとんどだと思います。
しかし、これが実際合わないことがあるんです。
私の勤め先で、ICT機器の購入をした際の話です。
機器の選定等については情報科の教員に任せ、私の方は補助金申請を担当。
見積書など申請に必要な書類は全て整い、申請し、その後無事内定の連絡を受けました。
そして事業に着手するために、取引会社へ契約書作成を依頼。
ほどなくして契約書が私の手元に届きました。
「大丈夫だろう」と思いつつも、補助金がらみなので念のため補助金申請時の見積書と見比べたところ金額が異なっているのです。
すぐに取引会社に連絡したところ、納入を予定していた物品の一部が入手できなくなったため、代替品を手配し、それにより金額に変更が生じたとのこと。
その旨は情報科の教員には連絡済みで、新たな見積書も当該教員に渡しているとの説明を受けました。
事情はともかくとして、補助金上は軽微な変更も手続きが必要な場合があります。
すぐさま計画変更の手続きをとり、事なきを得ましたが、こんなケースは少なくありません。

教員あるあるです。
確認したら「何が問題なの?」といったリアクションなんですよね。
あと補助金には直接関係しませんが、支払い条件もよく見ておきましょう。
「月末締め、翌月10日払い」のように、支払いまでの期日を短く設定する会社もあります。
「月末締め、翌月末払い」や「20日締め、翌月20日払い」など各学校のルールがあると思いますので、そちらに合わせるようにしましょう。
他にも旅行会社に多いのですが、代金が前払いのケースもあります。
思いもよらないタイミングで請求書が届き、慌てふためくことがありますので、注意が必要です。

代金前払いは経理担当があまりいい顔しないんですよね。
もちろん私も前払いの請求書が来たらいい顔しませんが。
②期間・納期
2つ目は期間・納期です。
学校法人は年度単位で動くため、契約期間が年度をまたぐ場合は特に注意が必要です。
前出した会計検査院に関する記事の中でも取り上げましたが、契約期間に関するミスは検査で頻繁に指摘されています。
- ライセンス契約
- リース契約
- 業務委託契約
これらの契約のように一定期間契約が続くものについては「いつからいつまでの契約か」を必ず確認しましょう。
また、物品購入のように基本的に1日で契約期間終了となるものも注意が必要です。
具体的には「契約締結日」と「納品予定日」をチェックしましょう。
「契約締結日」については、「内定前着手」を防止することが目的です。
この「内定前着手」も以前の記事で紹介しましたが、会計検査院指摘事項の常連です。
必ず「内定日より契約締結日が後の日付」になっているかを確認しましょう。
あとは「納品予定日」です。
補助金のルール上、「いつまでに事業が完了していなければならないか」が定められている場合があります。
だから、納品予定日がこの定められた期日より前になっているか確認する必要があります。

内定日→契約締結日→納品予定日→事業完了日の順番をイメージしておきましょうね。
見積書で気をつけたい“抜け漏れポイント”
見積書は契約書ほど複雑ではありませんが、実は見落としやすいポイントが多く、後々トラブルの原因になることがあります。
事務員がまず押さえておきたいのは、
- 「仕様の曖昧さ」
- 「合見積の必要性」
- 「単価と数量の整合性」
の3つです。
以降で詳しく解説します。
①仕様の曖昧さ
まず1つ目は仕様の曖昧さです。
見積書に「一式」と書かれている場合は要注意です。
「一式」は便利な表現ですが、実際に何が含まれているのかが分かりません。
例えば「ICT機器設置作業一式」と書かれていても、配線作業が含まれるのか、設定作業はどこまで対応してくれるのか、現場調査は含まれるのかなど、内容は業者によって大きく異なります。
補助金の申請時には内容が詳しくわかるような明細書の提出を求められることがありますので、2度手間にならないように、あらかじめ入手しておきましょう。
あと、補助金には「対象外経費」というものが定められています。
例えば、ICT機器購入に関する補助金の場合、セキュリティソフトは対象外といった感じです。
これが「一式」表記だと見分けがつきません。
当然対象外のものが含まれていると検査で指摘を受けます。
こうした事態に陥らないよう、できる限り詳細がわかるように取引会社に見積書の作成を依頼しましょう。
ちなみに実際の補助金検査では、申請時に提出した明細を基に物品の確認が行われます。

型番やメーカー名まで細かくチェックしてきますよ。
検査であわてることがないように、見積書のチェック段階から曖昧な部分をなくすようにしておくことが大切です。
②合見積の必要性
2つ目は合見積の必要性です。
経理規程等では、金額に応じて複数の会社による合見積が必要と定めている場合があります。
そうした規程に則っているかは必ず確認しましょう。
なお、補助金申請においては基本的に合見積必須です。

補助金によっては「学校のルールにお任せします」的なケースもありますが、とりあえず金額に関わらず合見積をとることをおすすめします。
普段から経理規程等に関わらない教職員にとっては見落としがちなポイントですので、目を光らせておきましょう。
③単価と数量の整合性
3つ目は単価と数量の整合性です。
ほとんどの見積書の金額は単価×数量で構成されていますが、数量が「概算」になっている場合は要注意です。
数量が確定していないと、最終的な金額が大きく変動する可能性があります。

教員が適当な数量を告げているケースは少なくないですよ。
補助金申請の場合「予備」は補助金対象外となることもあります。
だから、きちんと数量の根拠はチェックするようにしましょう。
これもICT関連の補助金を申請した時の話ですが、見積書をチェックしていると数量が妙に多いように感じたことがありました。
担当教員に確認すると、補助金の対象外である生徒会や部活動で使用する機器が数量に含まれていることが判明したのです。
速やかに取引先へ連絡し、見積書を補助金対象となるものだけの数量に修正しました。
こんなケースもありますので、要注意です。
まとめ
契約書・見積書のチェックは、私立学校の事務員にとって避けて通れない重要業務です。
- 「金額・支払条件」
- 「期間・納期」
- 「仕様の曖昧さ」
- 「合見積の必要性」
- 「数量の妥当性」
これらのポイントをおさえることで、重大な補助金の不正受給リスクを軽減し、後々のトラブルを防止することができます。
そして、こうしたチェックは法律などの専門家でなくてもできます。
地道で面倒なことが多いですが、こうした取り組みが学校に対する世間からの信頼獲得につながります。
避けずに、少しずつでも関わってみましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。

