
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人の決算で起こりやすいトラブルやその防止策を知っておきたいと思っている人。
年度初めならではの業務の一つが「決算業務」です。

この記事がアップされる頃には、その決算業務もだいぶ落ち着いてきているころでしょうね。
学校法人の決算業務は、一般企業とは異なる会計ルールに基づいて進める必要があり、経理担当者にとっては専門性の高い業務です。
しかも、日々の経理処理に加えて、決算期には確認事項や資料作成、監査対応などが重なり、業務負担が大きくなりがちです。
そのため、ちょっとした認識のズレや確認不足が原因となり、思わぬトラブルにつながるケースも少なくありません。
特に学校法人では、補助金や固定資産、独自の財務諸表など注意すべきポイントが多く、企業会計の感覚のまま処理してしまうとミスが発生しやすくなります。

特に補助金ですよね。
そこでこの記事では、私の実体験に基づく「学校法人の決算で起こりやすいトラブル」を5つ取り上げ、その原因と具体的な防止策について詳しく解説します。
実務に直結する内容を中心にまとめていますので、ぜひ日々の業務改善の参考になれば幸いです。
学校法人の決算でトラブルが起こる理由
具体的なトラブルの中身や対策を見ていく前に、そもそも決算業務においてなぜトラブルが発生するのかについて確認しておきましょう。
私の経験上、次の2つがトラブルの主な原因となるケースが多いように感じています。
担当部署と他部署との認識ミス
学校法人会計は、「学校法人会計基準」に基づいて処理されるため、私たちの普段の感覚とは大きく異なる考え方が多く存在します。
その最たるところで言えば「資金収支」の考え方です。
「未収入金」や「未払金」といった私生活では馴染みのない処理や、1年単位での収支管理といったところに意識の違いがよく現れます。
このような違いを十分に理解しないまま業務を進めると、収益や費用を計上するタイミングを誤ったり、補助金の扱いを誤解したりするリスクが高まります。
特に、企業経理から転職してきた担当者も含めて、学校法人会計に関する業務経験がない人にとっては「補助金への影響」という点は理解が難しいところです。

この辺りは新任の職員にとっても、最初につまずきやすいポイントですね。
学校法人に勤める以上、会計担当以外の人でも理解しておくべきことではあるのですが。
こうしたミスは決算終盤で発覚することが多く、修正に時間を要する原因となります。
私も何度か経験しています。
4月中旬を過ぎたころに、他部署の事務員が前年度に処理しなければならない内容のものをポロっと提出してくるのです。
提出した当人は「何が問題なの?」という様子ですが、担当者は顔面蒼白もの。
大急ぎで修正作業にかかります。
この「認識ミス」は決算における最大のトラブル要因というのが私の印象です。
内部統制・チェック体制の不備
認識ミスの次に大きなトラブル要因が「内部統制・チェック体制の不備」です。
学校法人では、経理担当者の人数が限られていることも多く、業務の属人化が進みやすい傾向があります。
その結果、入力内容のダブルチェックが不十分となり、ミスが見過ごされるリスクが高まります。
特に決算期は業務量が増加するため、確認作業が後回しになったり、形式的なチェックにとどまってしまったりすることがあります。

あの人がやってるから大丈夫だろうと思ってチェックが甘くなりがちなんですよね。
まぁ、忙しさを言い訳に面倒なことからできるだけ逃れたいという意識もありますが。
こうした状況では、未収入金や未払金の計上漏れ、固定資産データの不一致といった基本的なミスが発生しやすくなります。
実際、私の勤め先ではこれに起因して、未収入金の計上漏れをやってしまってことがあります。
高校の決算業務を3人で行っているため、

私は人件費担当

私は学納金担当
といったようにまさに属人的に決算業務が進められていました。
だから、お互いに「これはあの人が担当だから、任せておこう」という意識が働き、チェック体制がうまく機能せず、計上漏れに至ったというわけです。

ちなみに学校法人本部の事務員はいますが、高校とは離れたところにあるため、決算の会計監査の時だけ様子を見に来る程度です。
その計上漏れは、決算監査の様子を見に来た本部の事務員が発見したわけですが、これは結構レアなケースだと思います。
さらに、担当者が長期間同じ業務を担っている場合、「これまで問題なかったから大丈夫」という思い込みが生じ、リスクの見直しが行われないケースもあります。
誰がやっても同じ結果になるような仕組みづくりが私立学校事務員の仕事には必要です。
決算トラブル対策だけでなく、そのような内部統制の観点からも含めて、定期的な業務の見直しに取り組んでおきましょう。
学校法人の決算で起こりやすいトラブル5選
ここでは、実務で特に発生しやすいトラブルを5つ紹介します。
その5つとは以下のとおりです。
- 前払金の計上漏れ
- 資産・経費の計上ミス
- 未収入金の計上漏れ
- 未払金の計上漏れ
- 周辺会計の処理漏れ
特に最初の2つは、会計検査院の指摘事項としても頻出事項です。
詳しくはこちらの記事もご参照ください。
以下、一つずつ見ていきましょう。
前払金の計上漏れ
まず一つ目は、前払金の計上漏れです。
「保守料」や「ライセンス料」といったものには「期間」が設定されていることが多いです。
学校法人の会計年度は4月1日から3月31日と定められているので、この期間に当てはまらない部分は適切に処理する必要があります。
具体的には、翌年度にまたがるものは「前払金」という勘定科目で処理しなければなりません。
ただ、これが請求書を見ただけではわかりにくい。
詳しい期間が書いていないケースが多いのです。
先ほど紹介した会計検査院に関する記事でも述べましたが、この処理漏れが指摘されるケースが多いので担当者としては注意が必要になります。
資産・経費の計上ミス
二つ目は、資産・経費の計上ミスです。
工事関係になると「建物」や「構築物」などの「資産」として処理するものか「修繕費」などの「経費」で処理するものか判断に迷うものが出てきます。
これを誤ると最悪のケースでは不当事項として会計検査院に指摘され、補助金返還ということになります。
また、同じ経費でも「教育研究経費」か「管理経費」で処理するかによって補助金に影響を及ぼす場合があります。
大規模な学校法人になると、日々大量の経理処理が発生するためどうしてもミスは発生しがち。
ただこれが決算末期に発覚すると、担当者の頭を激しく悩ませます。

今から修正するのは正直面倒くさい。けど、見てしまったからには・・・。という葛藤に襲われますね。
後々の学校運営に大きな影響を与えかねないトラブルの一つです。
未収入金の計上漏れ
つ目は、未収入金の計上漏れです。
例えば、補助金収入の計上時期の誤り。
新任の事務員に多く見られる勘違いです。
補助金は入金のタイミングではなく適切な基準に基づいて収入計上する必要があります。

大体の場合、交付決定を受けた時点で収入として認識するイメージですね。
これは前出の2つのように補助金返還といったところまで影響はありませんが、所轄の都道府県などが検査に入った際には、適切なタイミングで処理されているかチェックされます。
補助金以外にも、収入科目で計上のタイミングを誤ってしまうケースももちろんあります。
そして、決算末期にふいに預金口座に入金されて事態が発覚。
担当者を大いに悩ませるトラブルへとつながっていくわけです。
未払金の計上漏れ
四つ目は、未払金の計上漏れです。
トラブルの発生件数としてはこれが最も多いような印象があります。

他部署の担当者が平気な顔して請求書を持ってくるんですよね。
しかしこれにより、実態と異なる財務状況が表示されてしまうリスクがあります。
学校法人会計基準の「真実性の原則」からすると、これは一大事です。
第二条
e-GOV法令検索より引用
一 財政及び経営の状況について真実な内容を表示すること。
この原則を遵守するためにも避けたいところです。
周辺会計の処理漏れ
最後は周辺会計の処理漏れです。
学校法人本体の決算に気を取られ、周辺会計に目を向けられなくなってしまうことがあります。

本体の決算でいっぱいいっぱいなんですよね。
しかし、この周辺会計が不正経理の温床になっている場合があります。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
目が届かないから「これくらい」という気持ちが芽生えて、不正に手を染めてしまうわけです。
それが数年間蓄積して、ある時の決算で明るみに出ることがあります。

私は幸いそこまで大きな事件に出くわしたことはありませんでしたが、長年放置された周辺会計の預金口座が決算の時期に発見されたことがありました。
処理が大変でしたね。
トラブルが与える影響
これらのトラブルは、単なる事務ミスにとどまらず、さまざまな影響を及ぼします。
まず、監査時に指摘を受けることで、修正対応に多くの時間と労力が必要となります。
決算スケジュールが逼迫する中での修正作業は、担当者にとって大きな負担です。

何度味わっても毎回強い徒労感に襲われます。
また、内容によっては担当理事への報告や説明が必要となり、法人全体の信用にも影響を与えかねません。
特に補助金関連のミスは、返還や行政指導につながる可能性があり、慎重な対応が求められます。
さらに、こうしたトラブルが繰り返されると、監査対応が厳格化され、業務効率の低下を招く恐れもあります。

「このチェック、無駄だなぁ」と思うものの経緯を探ってみると、昔々の決算でのミスが発端だったなんてこともあります。
結果として、経理部門全体の負担が増大し、長期的なリスクにつながります。
決算トラブルを防ぐための具体的な対策
では具体的にどんな対策をとればよいかを見ていきましょう。
挙げればキリがないので、ここでは2つに絞って紹介したいと思います。
【団体戦で挑む】他部署を巻き込んだ事前準備
決算トラブルを未然に防ぐためには、事前準備が不可欠です。
年間スケジュールの中で決算に向けた準備期間を明確にし、必要な資料や確認事項を早めに整理しておくことが重要です。
例えば、固定資産の棚卸しや契約内容の確認、補助金関連書類の整理などを事前に行うことで、決算時の負担を大幅に軽減できます。
特に、契約期間は前述のとおり補助金上も真実性の原則からも最重要事項です。
担当部署から毎回報告を挙げるように仕組みづくりをしておきましょう。
あとは未収入金・未払金の計上漏れ対策。
様々な会議体や学内の連絡システムを活用して呼びかけるのが泥臭い方法ですが有効です。

周知の際には過去のトラブル例なんかも伝えておくと、具体性が増してより効果的ですよ。
【人に頼らない仕組み】チェックリストの活用
チェックリストの活用も有効です。
先述したように、属人化はトラブルのもとになります。

私の勤め先のような規模の小さな学校では特に起こりがちです。
業務ごとに確認項目を明文化し、担当者が変わっても同じ水準で作業できるようにすることで、ミスの発生を防ぎます。
そしてチェックリストは一度作成して終わりではなく、毎年の決算を通じて改善していくことがポイントです。
ミスが発生した時は「改善のチャンス」と捉えてすぐにチェックリストに反映させましょう。

これを後回しにしてしまうと、その後思い出すことはまずありません。
その結果、来年も同じ目に遭うことに・・・。
また、チェックリストは具体的な行動につながるものでなくてはなりません。
詳しくは以下の記事をご覧ください。

「請求書の提出漏れがないか確認する」みたいな項目を作っていませんか?
「確認する」はチェックリストにおいてNGワードの一つです。
「〇〇会議で書面を配布し、呼びかける」などの具体的な行動にまで落とし込みましょう。
まとめ
学校法人の決算業務は、その特殊性ゆえにさまざまなトラブルが発生しやすい分野です。
しかし、よくあるミスの傾向を理解し、適切な対策を講じることで、多くのリスクは未然に防ぐことが可能です。
本記事で紹介した5つのトラブルと防止策を参考に、日々の業務フローやチェック体制を見直してみてください。
例で挙げた「事前準備」「チェックリストの整備」に「会計・補助金等の専門知識の習得」を加えた3点を意識することで、決算業務の精度と効率は大きく向上します。
経理担当者としての負担を軽減しつつ、正確で信頼性の高い決算を実現するために、できることから着実に取り組んでいきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



