
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・仕事が「属人化」していてなんとかしたいなぁと悩んでいる人。
「仕事の属人化」を解消して、安心安全な学校を作ろう
私立学校事務員の仕事では、「この作業はあの人しかできない」「担当者が休むと業務が止まる」といった“属人化”の悩みが後を絶ちません。

同じ学校法人内で異動しても、別の学校法人に転職してもこの悩みは立ちはだかりますね。
特に中学や高校の事務室では人員が限られ、行事などのように年に一度しかない業務も少なくないため、気づけば特定の人に仕事が集中してしまうことも珍しくありません。
しかし、属人化は放置するとミスの増加や引き継ぎ困難、組織全体の負担増につながり、学校運営そのものに影響を与えるリスクがあります。
だからこそ、日々の業務を「誰でもできる状態」に整える“マニュアル化”や“仕組み化”が欠かせません。
この記事では、私立学校事務員の仕事で属人化が起きる理由から、実務で使えるマニュアル化や仕組みづくりのコツなど、現場で今日から実践できる方法をわかりやすく解説します。
みなさんの学校でも、業務がスムーズに回る「属人化しない体制」を一緒につくっていきましょう。
私立学校事務員の仕事で属人化が起きる理由
冒頭で述べたとおり、私立学校の現場では、少ない人数で多岐にわたる業務をこなし、さらに年に1度の仕事がいくつも存在します。
そのため、気づけば「この仕事はあの人しかできない」という状態が生まれやすくなります。
まずは、なぜ属人化が起きるのか、その背景を整理してみましょう。
担当者しか知らない「暗黙知」が多い
私立学校事務員の仕事には、マニュアル化されていない細かな判断や、過去の経緯を踏まえた対応が多く存在します。

「何で?」と尋ねたときに「前からそうなっている」という回答を受けた回数は数えきれないですね。
「去年はこう処理した」「この先生はこういう対応を好む」といった“暗黙知”が担当者の頭の中に蓄積され、それが共有されないまま業務が進むことで、属人化が進行します。
年度業務が複雑で引き継ぎが難しい
学校事務は、年度ごとに発生する業務が多く、しかもそのタイミングが限られています。
例えば、行事の準備、予算・決算の策定、各種調査の回答、補助金申請など、年に1回しか行わない業務は、引き継ぎの機会が少ないため、担当者以外が手順を把握しづらいのです。

最終的に出来上がった資料だけ残っていて、過程がわからないなんてこともありましたね。
しかも前任者は1年前に退職していて質問もできない。周囲への聞き込みでとりあえずなんとかやり遂げましたが。
刑事ばりの推理力と聞き込み力が求められる場合があります。
人員が少なく“その人に頼る”構造になりやすい
私立学校の事務部門は、一般企業と比べて少人数で運営されることが多く、担当者が固定化されやすい傾向があります。

「とりあえずお願い」から「去年もやったよね?」になるパターンは本当に多いですね。
さも前から「担当者」だったかのように扱われます。
さらに「忙しそうだから任せるのも悪いかな」「自分がやったほうが早い」という心理が働くことで、他人に仕事を振ろうとせず、属人化が深まっていくという悪循環にはまってしまうわけです。
マニュアルが古い・存在しない
私立学校事務員の仕事では、マニュアルがあっても更新されていなかったり、そもそも作られていなかったりするケースが少なくありません。

マニュアルがないのは、本当にしょっちゅうありますね。
あと、当時の「〇年△組教室」と書かれていて、「これ、今はどこの教室?」という状況に陥ったこともあります。
この他にも規程で「別に定める」と書いてあるにも関わらず、その別の定めがないというケースもありました。
このように「作成当時の状況で書かれている」「根拠となる規程が改廃されている」など、実務に合わないマニュアルは結局使われることはありません。
そして、マニュアルが更新されたり、新たに作成されることもなく「マニュアルは担当者の頭の中だけにある」という属人化へとつながっていくわけです。
属人化が続くと起きるリスク
属人化は、担当者が頑張っているうちは問題が表面化しません。
しかし、長期的に見ると、組織に大きな負担をもたらします。
実際に私が直面したリスクを紹介していきます。
担当者不在で業務が止まる
急な休暇や退職が発生したとき、誰も業務を引き継げず、学校運営に支障が出ることがあります。
特に、給与・人事・補助金などの重要業務は、止まると大きな影響が出ます。
私の勤め先のケースでは、コロナウィルスの感染が拡大した際に給与業務が止まりそうになったことがあります。
担当者のご家族が感染し、当人も出校停止となったのです。

給与支給日を間近に控えていたので、本当に焦りましたね。
担当者本人は体調に問題なかったため、前月の給与資料を確認しつつ、担当者と電話等で連絡をとりながらなんとか手続きを進め、事なきを得ました。
ミスが増え、学校全体の信頼に影響する
属人化した業務は、チェック体制が弱くなりがちです。
「担当者の頭の中だけで処理されている」状態では、ミスが起きても気づきにくく、保護者や教職員からの信頼低下につながります。
これは私の以前の勤め先のケースですが、学納金の徴収業務に関するマニュアルが整備されていませんでした。
そのような状況で業務を引き継いだのが私。
とりあえず昨年度の資料を見るなどして、作業を進めました。
上司からは、

確認したか?
と言われますが、正直なところ何を確認すればいいかわかりません。
とにかく思いつくことはすべてやり、請求書を発送しました。
ところが、請求書を受け取った保護者から何件か連絡があり、誤請求が発覚。
お詫びをする事態となりました。
原因は、チェックすべき資料のチェック漏れ。
そもそも、このミスが発覚するまでその資料の存在を私は知りませんでした。
この事態について上司は、

確認したか?ってきいただろ。
と言いますが、発送時点で思いつく限りの確認はしています。
結局のところ、上司も担当したことがない業務のうえにマニュアルもない状態だったので、具体的な指示ができなかったわけです。
この件は大事には至りませんでしたが、属人化はこうしたチェック体制の弱さにつながります。
新人が育たず、負担が固定化する
属人化が進むと、新人が業務を覚える機会が減り、育成が進みません。
結果として、ベテランに負担が集中し、疲弊してしまう悪循環が生まれます。
例えば決算業務。
学費請求のような通常業務よりも個人の能力や知識に頼る部分が大きくなりがちです。

属人化を超えて職人化していることもありますね。
しかも前述したとおり、年度業務で引継ぎがしづらいという問題もあります。
こうした要因が重なり、なかなか腰を据えて新人に決算業務を教えることができず、ベテランへ負担が集中するわけです。

資料のコピーや決算書のデータを元資料とチェックする業務ばかり任せてしまうんですよね。
改善が進まず、非効率が積み重なる
属人化した業務は、担当者のやり方に依存するため、改善の余地が見えにくくなります。
「昔からこうやっているから」という理由で非効率な方法が続き、組織全体の生産性が下がります。
特に、私立学校事務員は私のように前年踏襲型の人間が多い傾向があります。

あくまで私個人の感覚に基づく意見ですけどね。
だから、異動などで新しい業務を引き継いだ際、つい「前と同じやり方にしておくか」という気持ちになりがちです。
こうして、前年踏襲型ではない人間からすれば非効率極まりないやり方が続けられてしまいます。
これは以前の勤め先の話ですが、会計帳簿を全て手書きで作成している業務がありました。
PTAなどの団体のお金を管理する業務でしたが、例によってマニュアルなどはなく、しかも手書き。
さすがの私でも「え?」と思いました。
そこで、学校が導入している会計ソフトを利用して会計帳簿や伝票を作成するように業務を見直しました。
ここまで極端な例はないかもしれませんが、多かれ少なかれこのような業務は学校現場に埋もれています。
属人化を防ぐためのマニュアル化・仕組み化の基本
属人化を解消するための第一歩は、業務を「見える化」することです。
そこで基本となるのが「マニュアル化」と「仕組み化」
どちらも同じようなものですが、微妙に異なりますので、それぞれについて解説していきます。
属人化の防止策1:マニュアル化
マニュアルは属人化防止の中心となるツールですが、作り方を間違えると使われないまま終わってしまいます。
注意したいポイントを順に解説していきます。
まずは「手順を見える化」する
最初から完璧なマニュアルを作る必要はありません。
まずは、担当者が普段どのように作業しているかを、箇条書きで書き出すだけで十分です。
- どのファイルを開くか
- どのシステムを使うか
- どの順番で処理するか
- 注意点は何か
このように「次にどんなアクションをとればよいか」を明確にするだけで、業務の全体像が共有しやすくなります。
さらにスクリーンショットや動画で残すとビジュアル的にも「見える化」でき、わかりやすくなります。

再現性がアップしますよ。
生成AIを活用すれば、うまくまとめてくれますので一度試してみることをおすすめします。
年度業務は時系列で整理する
私立学校事務員の仕事の特徴である「年度業務」は、時系列で整理すると一気にわかりやすくなります。
- 4月:給与改定、教職員名簿更新
- 6月:補助金申請
- 10月:学費請求
- 12月:予算資料作成
このように一覧化することで、担当者以外も業務の流れを把握でき、引き継ぎがスムーズになります。

具体的な業務の中身がわからなくても、「次に何があるのか」だけでもわかっていれば何かしらのリアクションがとれますよ。
逆に何も知らないと、突然背後から殴られたような衝撃を受けてしまいます。
属人化の防止策2:仕組み化
マニュアル化が「見える化」だとすれば、仕組み化は「ルール化」するための工夫です。
ルール化することで「誰がやっても同じ」という状態を目指します。
この「仕組み化」を検討するうえで参考となる考え方などが紹介されている書籍がありますので、そのなかから特に私が重要と感じたものをピックアップしたいと思います。
【参考書籍】
書籍名:とにかく仕組み化—人の上に立ち続けるための思考法
著者名:安藤 広大
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2023年5月30日
ミスが起こったら人を疑わず、仕組みを疑う
ミスが起こるとどうしても「ちゃんとしろよ」とその人を責めてしまいがちです。
しかし、前述した私の学費請求の例のように本人としては「ちゃんとやっている」という感覚であることがほとんどです。
だからそのような場合、「仕組み化ができていない」と考える必要があります。
このことについて書籍では以下のように解説しています。
圧倒的多数である「できない人」に合わせて、仕組みを作り、全員で活かしたほうがいいのです。
「とにかく仕組み化—人の上に立ち続けるための思考法」より引用
そのためには、「がんばらない理由」が何なのか。人間の本質を見抜き、それを前提にした「仕組み化」が必要なのです。 P46
ここでは「がんばらない理由」の部分は「できない理由」に読み替えていただければと思います。
- できない人に合わせる
- 全員で活かす
仕組み化はこの2点を意識して取り組む必要があります。
私の学費請求ミスの事例では、その後マニュアルを整備し、部署内で共有しました。
そしてそのマニュアルに従い、担当者以外にもう一人がチェックする仕組みを作ったことで、同様のミスは起こらなくなりました。
期限を設けて遵守する
まずは書籍の解説を見てみましょう。
「忘れていました」が言える環境になっているのであれば、仕組みは機能しません。
「とにかく仕組み化—人の上に立ち続けるための思考法」より引用
締切が存在しない仕事はありえません。締切のない仕事は、ただの趣味です。 P48
マニュアルは「次のアクション」を明確にすることが主な目的です。
そこに「締め切りを設定し、それを遵守する」という「ルール」を設けるわけです。
皆さんも実感があると思いますが、人によって時間に対する感覚は異なります。

「至急」と言っても、今日中か明日の朝イチか分かれますからね。
業務によっては、自分の作業の後に控えている人がいたりします。
その人たちは、例えば「前の担当者は締め切りの1日前に資料を提出してくれていた」という経験に基づいて、予定を決めていることが多いです。
そのような状況で、新たな担当者が締め切りに遅れて資料を提出していると思惑が外れてしまいます。

担当者が変わるたびにコロコロとタイミングも変わってしまうと、業務が進めにくくなりますからね。
そうしたことが起こらないように、その期限を誰もが守るように「ルール化」するわけです。
決めたことを守り切る。
この意識を浸透させることが仕組み化には大切です。
「あなたがいないと困る」という言葉に注意する
「余人をもって代えがたい」
こんな風に思われたいという人は多いのではないでしょうか。
このように人から言われ頼られると、人はどうしても嬉しくなってしまいます。
しかし、これが「属人化」を招いてしまいます。
書籍では次のように書かれています。
「あなたがいないと困る」
「とにかく仕組み化—人の上に立ち続けるための思考法」より引用
この言葉は、麻薬だ。 P4

書籍の冒頭でこのように書かれていたのを見て、私はドキっとしましたね。
まさにこの言葉のとおり、その人は自分が頼られる状態を継続したいと考え、自分の知識やスキルを抱え込んでしまいます。
その結果、その人がいなくなってしまった際に残された人たちは困った状況に追い込まれるわけです。
皆さんも周囲を見渡して、「この人がいないと困る」という状況になっていないかチェックしてみましょう。
まとめ
属人化は、担当者の努力だけでは解消できません。
属人化を防ぐのは「仕組み」と「文化」です。
マニュアル化で業務を見える化し、仕組み化で誰でもできるようにルール化をつくり、チームで改善し続ける文化を育てることが重要です。
今日からできる小さな一歩として、まずは「一つの業務を見える化する」ことから始めてみてください。
その積み重ねが、現場の環境を大きく変えていきます。
属人化を解消し、ミスやトラブルを減らして、周囲からの信頼獲得を目指しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
