
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・修学支援や授業料無償化でよく起こるトラブルについて知りたいと思っている人。
はじめに:”経済支援制度”をめぐる学校現場の実態を知っておこう!
「高等教育の修学支援新制度」
「私立高校の授業料実質無償化」
大学や高校に対するこうした「経済支援制度」に関する情報を耳にする機会が増えたと感じている人は少なくないと思います。
頻繁に制度変更され、個人的には支援が充実してきたと感じています。

私の学生時代はほぼ貸与奨学金一択でしたからね。
これらの「経済支援制度」についてはこれまでも記事にして取り上げてきました。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
ただ、度重なる改正に保護者の方の理解が追いついていないと感じることもあります。
事務員の方は実務をやっているので何とかついていっていますが、正直、いっぱいいっぱい。
私個人としては「もうこれ以上改正しないで」というのが本音のところです。
そんな保護者と事務員との情報格差のようなものが、しばしばトラブルに発展することがあります。

事務員は理解しているけど、保護者は理解できていないというケースは少なくないですからね。
そこで今回の記事では、この奨学金や授業料無償化をめぐって起こるトラブルの数々を、私の実体験に基づき紹介します。
現場でどのようなことが起こっているのかという実例を知ることで、私立学校事務員の仕事の理解が深まると思われるからです。
参考にしていただければ幸いです。
入学前も後も!理解の違いで生じた”いざこざ”3選
それでは早速、具体的な事例を見ていきましょう。
”経済支援制度”にからむトラブルは、生徒が入学する前にも後にも起こる可能性があります。

説明会なんかでどれだけ資料を作りこんで、丁寧に(あくまで自己評価では)説明しても、全員に理解してもらえることはないんですよね。
そうして割合としては少ない「理解が追いついていない保護者」による想定外の言動によって、現場で”いざこざ”が生じるわけです。
そんな”いざこざ”のなかから、私が経験したものを3つピックアップして紹介したいと思います。
その3つとは以下のとおりです。
- 「入学前は対象外」という制度の壁
- 入学後もある「対象外」という制度の壁
- そんなにすぐには支援されない
なお、これらは保護者の理解力の問題だけでなく、こちらの案内の仕方などにも至らないところがあったから起こったと私は思っています。

正直、実務をやっているからわかっているだけで、自分が保護者だったら理解できていないでしょうね。
皆さんも、決して保護者側だけの問題ではないということを念頭に、以降のエピソードをお読みいただければと思います。
エピソード①”あてにしてたのに…”「入学前は対象外」という制度の壁
進学手続きの際、入学試験に合格してから入学するまでの間に、様々な「お金」を支払う必要があります。

入学金や教科書代、学校指定品代なんかがあったりしますね。
そしてこれらは基本的に、授業料無償化の対象外となっています。
だから、「なぜ、入学金は授業料無償化の対象じゃないの?」という保護者の声が、事務員のところに届くケースもあります。

これらは決して小さな金額ではないですからね。
しかし、まだこれは「入学金は無償化の対象じゃない」ということを理解してくれているだけましな方です。
「え、無償化の対象だったら入学金も当然払わなくていいんでしょ?」と思っている保護者が少数ですがいます。
私の勤め先の高校ですが、あるとき、入学手続きの期日ぎりぎりになっても入金のない人がいました。
公立高校の併願で受験したわけではなく、本校の専願。
さすがに気になって保護者に連絡をとりました。
すると返ってきた返事が先ほどのセリフ。
加えて「自分は住民税非課税世帯だから、確実に無償化の対象だ」と主張するわけです。
仮にそうであっても、制度上、入学金は無償化の対象外。
期日までに払っていただく必要があります。

細かいことを言うと、当時の就学支援金は住民税非課税世帯でも、うちの授業料を全部賄えるほどは交付されていなかったんですよね。
根気よく説明し、その保護者の子どもが通う中学の先生の協力も得ながら、なんとか期日までに入金していただくことができました。
そしてこのケース、大学への進学の際にも起こりえるのです。
これも、私の勤め先の話ですが、高校3年生のある生徒の保護者が事務室に飛び込んできたのです。
事情をきくと、進学先の入学金などが期日までに支払えないので困っているとのこと。
思わず「どうして準備していなかったんですか?」と尋ねたら、

予約採用で「採用」になったから、入学前に奨学金がもらえると思っていた。
との返事が。
担任や奨学金担当の教員が何度も「奨学金は入学後」と伝えていたのですが、ちゃんと聞いていなかった様子でした。

一応「高等教育の修学支援新制度」は、入学金も免除・減額の対象のようですけどね。
入学前に払って、入学後に返金というパターンがよく見受けられます。
とにかく、進学先へ事情を説明しつつ、社会福祉協議会などに相談してお金の準備を進めるように指導。
どうにか入学までこぎつけることができました。
どちらも、期日が切迫した状況で発生したので、なかなかの緊張感だったのを覚えています。
エピソード②”こんなにかかるの?”|入学後もある「対象外」という制度の壁
続いては入学後に発生したエピソードです。
色々なところで情報が発信されていますが、私立高校の授業料無償化は、行事代や修学旅行代などは対象としていません。

私立大学が対象の「高等教育の修学支援新制度」も同様に「〇〇学会費」や「同窓会費」は支援の対象外のはずですね。
だからあくまで「授業料」無償化なわけです。
現場で働く事務員からすれば、「授業料と言えば授業料」「行事費は授業料ではない」というのが基本的な理解。
ところが保護者によっては、「学校に払うもの=授業料」という認識を持っているケースもあります。
そのような意識の保護者に行事費や修学旅行費などを請求した際に、「私、無償化の対象になっているのにどうして請求されるの?」という問い合わせを受けることになるわけです。

しかも、その金額が割と大きいので心に動揺を与えてしまうんですよね。
これも一度こじれると理解していただくまで一苦労。
担任や学年主任なども交えながら、なんとかわかってもらうように粘り強く説明することになります。
延納や分納といった制度が整備されているのであれば、それを適用させるのも一つの手です。
こうしたトラブルは「団体戦で挑む」「既存の制度をフル活用して柔軟に対応する」といったところがポイントとなってくるというのが私の実感です。
大学・高校どちらでも起こりえるトラブルだと理解しておきましょう。
”他の学校では…”|保護者の思いとタイミングのギャップ
最後は、制度が適用されるタイミングにまつわるエピソードになります。
基本的に国や地方自治体等が窓口となっている経済支援制度は、
募集→申請→審査→決定
といった流れを経ることになります。
だから、申請したら即制度適用となるわけではありません。

日本学生支援機構の貸与型奨学金の予約採用対象者は採用が決定しているので、入学後にすぐに手続きすれば、割と早く支援(貸与)を受けられるんですけどね。
しかし、この適用のタイミングが学校によってバラバラ。
特に兄弟姉妹が別の学校に在籍している場合、「あっちの学校では、このタイミングで適用してくれた」と言ってきたりします。
先ほどの「支援の対象となるお金」「支援の対象とならないお金」というのは、国や地方自治体が定めたルールなので、学校による取り扱いの違いは生じません。
ところが、この制度適用のタイミングは特に定めはなく、学校にお任せというのが実情です。
そのため、このようなことが起こるわけです。
こうなると、「対象外となるお金」の時のようにルールを盾にすることができません。
しかも別の学校では対応できているので、「無理です」とも言いにくい。
実に事務員泣かせのケースだというのが私の率直な思いです。
そんなときのために、入学時の説明や先述の流れでいう「募集」のタイミングで「うちは例年このタイミングで制度適用していますよ」ということをアナウンスしておきます。
問い合わせがあった際には、「以前にお伝えしましたが…」や「募集のときの資料でもお知らせしましたが…」という説明だけを武器に、なんとか理解を求めようと奮闘します。

それでも「聞いてない」とか「見てない」と言われるんですけどね。
なかには「説明会の時にこのタイミングで適用すると言った」と主張してくる保護者もいたりますが、これを言われると、もはや「言った」「言わない」の話になって収拾がつきません。
実際に私の勤め先でこの事態が起こり、長時間、不毛なやりとりを続ける羽目になりました。
お互いわだかまりを残す結果となり、非常に残念な事案だったと今でも思います。
まとめ
修学支援や授業料無償化といった制度自体は、経済的な理由で”学ぶ機会”を失わせないための大切な仕組みだと私自身感じています。
しかし、その一方で、内容が複雑になり過ぎている印象も持っています。
そのことが原因で、保護者と事務員との間で情報のギャップが生じ、それがトラブルに発展している可能性もあるように思います。
ただ、一方的に保護者に対し「もっとちゃんと理解しろ」と言ってもそれは無理な話です。
むしろこの状況を「保護者からの信頼獲得のチャンス」と考え、活用することをおすすめします。
保護者の心配事に対して丁寧に情報提供し、対応することで、信頼を得ることができるというわけです。
その第一歩としてまずは、こうしたお金の直接の担当でなくても、何が支援の対象で何が対象外かを明確に説明できるように準備してはいかがでしょうか。
保護者にとっては皆「学校の事務員」
担当者かどうかは関係ありません。
意識しておきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。



