

この記事は以下のような人を対象としています。
・「発達特性」を持った同僚との付き合い方について悩んでいる人
“発達特性”を理解して人間関係のストレスを減らそう

Aさんがまた他部署の人とトラブルになったからフォローしないといけない。

Bさん、何度同じ説明をしても同じミスを繰り返しちゃうんだよなぁ。
職場でこういった経験はありませんか。
私立学校事務員の仕事は、教職員・生徒・保護者・取引先など、多くの人と関わりながら進んでいきます。
その中で、なぜか言動が気になってしまう同僚がいたりします。
指示の受け取り方が独特だったり、急な変更に強いストレスを示したり、こちらの意図がうまく伝わらなかったり。
悪気がないことは分かっていても、日々の業務の中で小さなすれ違いが積み重なると、関係にストレスを感じるようになってしまい、場合によっては自分の仕事に悪影響を及ぼすことも。

他人なんで、多かれ少なかれ理解できない部分があって当然なんですけどね。
ただ、こうした人間関係の問題を「あいつが使えないやつだから」という一方的な思い込みで片づけてしまっている人が少なくないように感じています。
もちろん、そういった面もあるかもしれませんが、一方で「発達特性(発達障害・グレーゾーンを含む。以下同じ)が関係しているのでは?」と考えることもできるわけです。
そう考えると、私たちが「発達特性」についての基本的な知識やその活かし方を身につけることで、問題を解消できるかもしれません。
特性を理解せずに接すると「なぜ伝わらないのか」「どう関わればいいのか」と悩みが深くなりますが、逆に特徴を知り、適切な関わり方を押さえるだけで、職場のストレスは大きく減らせる可能性があるということです。
そこでこの記事では、私立学校の事務員が知っておきたい
- 「発達特性の理解」が求められる理由
- 発達特性のおさえておきた特徴
- 今日からできる具体的な対応法
を、実務に即してわかりやすく解説します。
発達特性の特徴やよくある困りごと、向き合い方について学び、何か一つ理解に向けた行動を取ることで、明日からのコミュニケーションが少し楽になるはずです。
さらに、一人ひとりのやり方を尊重しながら仕事を進められるようになり、組織としての生産性アップも期待できます。
参考にしていただければ幸いです。
書籍の紹介
書籍名:部下の発達特性を活かすマネジメント
著者名:佐藤 恵美
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2025年7月25日
私立学校の職場で「発達特性の理解」が求められる理由とは
以前から学校現場で問題となっている「学級崩壊」
その背景には「発達特性」を持った学生生徒等の存在があると言われています。

いわゆる「じっとしていられない生徒」が増えているなどといった話は、ときどき耳にしますよね。
そんな学校現場に20年以上携わってきた私の感覚として、学生生徒等以外でこの「発達特性」を持った人との関わりが以前よりも増えているように感じています。
もちろん同じ職場で働く事務員もその例外ではありません。
それが冒頭で紹介した悩みに繋がっているのです。
だから、人間関係のストレスを減らし、円滑に仕事を進めるためには「発達特性の理解」が必要だと私は考えています。
以降でもう少し詳しく解説していきたいと思います。
学校事務の仕事は「人との関わり」が多く、”すれ違い”が起こりやすい環境
繰り返しになりますが、私立学校の事務員は、教職員・生徒・保護者・外部業者など、多様な立場の人と日々関わりながら業務を進めています。
一般企業の事務員と比べても、私立学校事務員は「人とのやり取り」が圧倒的に多く、しかもその内容は事務処理から相談対応、緊急対応まで幅広いのが特徴です。

メインはルーティン事務業務ですが、「教育」というサービスを提供している「サービス業」という見方もできますからね。
そのため、コミュニケーションの質が業務の質に直結する職場と言えます。
しかし現場では、「あの同僚の行動だけ気になる」「話がかみ合わない」「指示が伝わりにくい」といった悩みが増えているように感じています。
その背景として、発達特性を持つ事務員が一定数存在することが挙げられます。
発達特性は外見からは分かりにくく、本人も自覚していないケースが多いため、周囲から見ると「なぜこの人だけこんなに反応が違うのか」などと感じてしまい、人間関係の溝が生じやすいのです。
さらに、私立学校の事務部門は少人数で運営されることが多く、1人の行動やコミュニケーションのクセが職場全体に影響しやすい環境にあります。

怒りの沸点が低いので避けたい同僚がいましたが、事務員が私とその人を含めて5人。事務室内がいつもピリピリしていましたね。
「サービス業的側面」と「少人数組織」
こうした構造的な要因が、発達特性への理解の必要性を高めています。
発達特性があると職場でどんな“すれ違い”が起こるのか
では、この発達特性が引き起こす具体的なトラブルもおさえておきましょう。
発達特性を持つ人は、特定の場面で困りごとが生じやすい傾向があります。
例えば次のようなケースは、学校現場でもよく見られます。
- 相手の表情や意図を読み取るのが苦手
- 口頭で伝えた内容が正確に伝わらない
- 同じミスが繰り返される
- 急な予定変更に強いストレスを示す
- 独り言など気になる行動をとる

割と大きめのボリュームで頻繁に「ん~!」とうなる人がいましたね。
正直、奇声を発していると思っていました。
これらは一見すると「性格の問題」「やる気の問題」「クセの問題」と捉えられがちですが、実際には発達特性の特徴が影響している場合が多いのです。
だから特性を理解しないまま接すると、注意や指導が逆効果になったり、本人のストレスが増えたり、周囲の不満が蓄積したりと、双方にとって良い結果になりません。
特に私立学校事務員の職場は、前述のとおり、事務仕事メインでありながら人とのコミュニケーションが多く、また少人数の環境で様々な突発的な仕事が舞い込んできます。
こうした環境は、発達特性を持つ人にとって負荷が大きい。
そのため特性が強く現れてしまい、その人と接した周囲の人との意識の“すれ違い”を引き起こしやすくなります。
発達特性なのか単なるクセや性格の問題なのか。
これらの区別ができるように発達特性について理解しておかなければ、問題の本質を見誤りやすいということです。
発達特性の理解があると職場のストレスが大きく減る
発達特性の理解があるだけで、コミュニケーションの質は大きく変わります。
例えば、
- 口頭ではなく「書いて伝える」
- 抽象的な表現ではなく「具体的な行動レベル」で伝える
- 得意・不得意を把握し、業務配置を工夫する
といった工夫をするだけで、発達特性を持った相手は仕事を進めることができます。
また、発達特性の理解は「相手のため」だけではありません。
事務員自身にとっても、次のようなメリットがあります。
- 「なぜ伝わらないのか」が分かり、イライラが減る
- 「どう関わればいいか」が明確になり、指示が通りやすくなる
- 無駄な衝突が減り、職場の雰囲気が良くなる
- 自分の説明力・段取り力も向上する

具体的な対応法などについては、この記事の後半で触れています。
つまり、発達特性の理解は自分の仕事のスキルアップや職場環境の改善にもつながるわけです。
学校現場は、これからますます多様な人材が働く場所になっていきます。
その中で、発達特性への理解は「特別な知識」ではなく、誰もが持っておくべき基礎教養になりつつあると私は考えています。
相手を理解し、自分のストレスを減らし、職場全体のコミュニケーションを良くする。
そのために発達特性への理解を深めることは、私立学校の事務員にとって欠かせない視点なのです。
職場で理解しておきたい「潜在的了解の困難」の特徴
私立学校事務員が発達特性について理解しておくべき背景や理由などを確認したところで、より具体的な内容に入っていきます。
ちなみに、以前の記事で「ADHDの強み」について紹介していますので、そちらもあわせて読んでいただければと思います。

厳密には「発達特性」と「ADHD」は異なるかもしれませんが、ここでは同様のものと考えてください。
一言で「発達特性」と言っても、その内容はかなり多岐にわたります。
そこで、私の私立学校事務員歴約20年の経験を基に、「この特性を持っている人、事務員でもよく見かけるなぁ」と感じるものを1つ紹介します。
それが「潜在的了解の困難」です。
「潜在的了解の困難」とは
まずは書籍の解説を見てみましょう。
「潜在的了解の困難」とは、「見えにくい・はっきりしていないことを理解するのが難しい」という意味です。もっと簡単に言えば、「あいまいなものや直感的に把握するものがよくわからない」ということになります。 P60
「部下の発達特性を活かすマネジメント」より引用

ん?ちょっと何言ってるかわからない。
そう感じた人もいるかもしれません。
もう少し具体的なこの特性の「弱み」を解説している箇所がありますので、そちらも引用します。
潜在的了解の困難があると、この「想像する力」が十分に働かず、ひとつの考えから離れにくくなってしまいます。そのため、急な変更が多い業務や状況に応じて柔軟に対応しなければならない仕事はストレスを感じやすく取り組みにくい業務といえます。 P63
「部下の発達特性を活かすマネジメント」より引用
要するに「臨機応変に対応して」と言われても何をすればいいかわからず、それを大きなストレスに感じてしまうという特性だと私は理解しています。
一方、「物事を積み重ねていく力」を持っているという「強み」があるとこの書籍では述べられています。
「柔軟な対応」は苦手だけど「コツコツ仕事に取り組める」
この特性を持った事務員、本当に多いです。

私もその一人です。
ただ、人によって特性の強弱があるため、特に「弱み」の部分が強く表れる人は周りとの溝が深まりがちです。
【深堀り】「心の理論」とは
さらにこの「潜在的了解の困難」の中でも、おさえておきたい特性があります。
それが「心の理論」です。
書籍の解説を見てみましょう。
「文脈や相手の意図を読み取るのが難しい」と「他者の意図や気持ちを推測するのが難しい」というのは、「潜在的了解の困難」の特性の中でも、「心の理論」といわれる特に対人関係で生じる特性です。心の理論(Theory of Mind)とは、他者の考えや気持ち、意図など、目に見えない心の状態を推測する力のことを指します。 P65
「部下の発達特性を活かすマネジメント」より引用
これも事務員によく見られる特性です。
実際に私の以前の勤め先にもこんな事務員がいました。

(内線電話)〇〇です。△△事務長おられますか?

事務員
います。

・・・。

事務員
・・・。

事務長と代わってもらえますか。

事務員
わかりました。
この事務員は「事務長に用事があるんだな。ということは電話を代わった方がいいな」という相手の意図を読むことが難しい様子でした。
ここまで特性が強く表れている人は少ないですが、言葉を額面どおりに受け取る事務員は本当に多いです。
今日からでも実践しやすい発達特性への具体的な対応方法
ここからは、発達特性のなかでも「潜在的了解の困難」について、その具体的な対応やコミュニケーション方法について紹介していきます。
そもそもですが、この書籍を読んで、私自身が「潜在的了解の困難」の特性を持っていることに気がつきました。

前からわかってはいましたが、それが「潜在的了解の困難」という特性だったんだということを知りましたね。
だから、まず私自身を実験台にして、書籍で書かれているこの特性との向き合い方を実践してみました。
その結果、効果を実感したものが以下の2点です。
- 生成AIの活用
- ストック型の学び
順に紹介していきます。
生成AIの活用で特性をカバー
まずは書籍からの引用です。
近年では、生成AIの活用も有効なサポート手段となっています。例えば主旨を入力して「丁寧なメール文面」や「相手に配慮した言い回し」などにリライトしてもらうなど、AIを活用することで自分で一から考えるよりも飛躍的に負担が軽くなります。 また、AIを活用した模範解答を視覚的に明確に確認することができるため、「このような言い方が適切なのだな」と学習しやすく、自分の中に使えるストックを効率よく増やしていけるというメリットもあります。 P151
「部下の発達特性を活かすマネジメント」より引用
これは本当に効果を実感しています。
特に「自分の都合のいいタイミング」で「模範解答をストックできる」という点は私にはピッタリです。
先述した「急な変更が苦手」というこの特性の弱み。
これは「自分が予定したとおりに物事を進めたい」という意識の表れとも言い換えられると思います。
このAI活用という方法だと、自分の好きなタイミングでAIに「○○の場合の具体的な対応方法を教えて」と尋ねることができるため、リズムを崩さずに予定どおりに仕事に取り組めます。
さらに、その模範解答をストックできますので、後から見返すことも可能です。
それが一層、知識の定着につながります。
この「ストック」の効果について、次に紹介したいと思います。
ストック型の学びでコツコツ知識を積み重ね
これもまずは書籍の解説を確認しましょう。
このような特性を持つ場合は、「経験を積むことで要点を抽出し、応用する」という一般的な学習スタイルよりも、「具体的なやり方を”型”として積み重ねていく=ストック型の学び方」が合っています。 ポイントは、「過去に経験したこと」を材料にして、経験を具体的な形で整理・可視化し、ストックを増やしていくことです。 P205
「部下の発達特性を活かすマネジメント」より引用

「応用」って本当に苦手なんですよね。
先ほど紹介したAI活用によって得た知識だけでなく、普段の行動から得た情報をストックすることも大変有用だと感じています。
とにかく、この特性がある人は「コツコツ積み重ねる」ことが本当に得意。
だから、過去の経験を一つひとつ確認しながら地道に物事を進めさせると無類の強さを発揮します。
ちなみに私のノートには、細かい字で様々なことがメモされていたり、AIから得た情報などが貼られていたりします。

ノートをのぞき込んで見た人がちょっと引くくらい細かく書きすぎていますね。
これも特性を活かしたやり方だと実感しています。
まとめ
「特性(潜在的了解の困難)への対応方法」をおさらいしましょう。
- 生成AIを活用してストックを増やす→自分のリズムで学習してもらう
- ストック型の学びをすすめる→学びを積み重ねて一歩ずつ前進する
皆さんの周りに「潜在的了解の困難」の特性があるかもと思われる人はいませんか。
その人は少し「想像する力」が弱いだけです。
「臨機応変に」とか「普通は」といったアドバイスを避け、生成AIや過去の実例などを活用するやり方を教えてあげましょう。
そうすることで、人間関係のストレスも軽減し、職場全体の生産性アップも期待できます。
この記事がその一助になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

