
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人の「予算作成業務」に関わる人の話を聞きたいと思っている人。
以前の記事で学校法人の予算制度に関する内容を取り上げました。
今回はその予算制度に基づき、実際に予算を作成する流れやその作成業務を担当した私の体験談等をご紹介させていただきます。
民間企業のように年度途中で業績が上向き、突然まとまった収入が入ってくる可能性が低いというところが学校法人の特徴の1つです。
そのように限られた資金のなかで、うまく学校運営を進めていくためには、資金的裏付けのある計画の策定が重要となってきます。
その計画が予算というわけです。
ちょうどこの年末年始のシーズンに、次年度の予算作成に向けて動きだしているという学校は多いのではないでしょうか。
そんな予算作成業務を遂行するうえでの参考になれば幸いです。
加えて、ちょっとした息抜きの意味合いも込めてエピソードを紹介していますので、お読みいただければと思います。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【おさらい】学校法人の予算にまつわる法令
突然ですが、クイズです。
以下の選択肢の中で、予算または予算書の作成を義務付けていないものはどれでしょうか。
ア.学校法人会計基準
イ.私立学校法
ウ.私立学校振興助成法
正解:A
条文を確認しておきましょう。
私立学校法
e-GOV法令検索より引用
第九十九条 学校法人は、毎会計年度、予算及び事業計画を作成しなければならない。
私立学校振興助成法
e-GOV法令検索より引用
第十四条 第四条第一項又は第九条に規定する補助金の交付を受ける学校法人(以下この条において「助成対象学校法人」という。)は、収支予算書を作成しなければならない。
一方、学校法人会計基準にはこのような条文はありません。
従って正解はAとなります。
私立学校の公共性の根拠となる私立学校法
私立学校の財政を行政が支援するためのルールを定めた私立学校振興助成法
どちらの法律も、私立学校の運営に深く関係しています。
その法律が、予算や予算書の作成を義務づけているわけです。
このことは、経理・会計業務を担当している事務員以外の方も理解しておく必要があると私は思っています。
そのため、以前の記事の内容と重複しますが、ここであらためて紹介させていただきました。
私立学校事務員として、この「予算の重要性」を認識しておきましょう。
【計画プラスお金】予算作成の流れ
では、そんな予算はどのように作成されていくのでしょうか。
具体的な作成方法については、法令等に特段の定めはなく、各学校によって様々であるというのが私の認識です。
従いまして、ここでは参考までに私がこれまで勤めた学校法人での例を紹介させていただきます。
大まかな流れとしては以下のとおりです。
- 予算編成方針の作成・周知
- 予算作成資料の配布・回収
- 予算査定・査定結果の通知
- 査定結果への異議・申立て
- 予算案の審議・承認
一つずつ見ていきましょう。
①予算編成方針の作成・周知
前述のとおり、私立学校法や私立学校振興助成法、学校法人会計基準では具体的な予算作成に関する定めはありません。
そこで参考となるのが「学枚法人の予算制度に関する報告」です。
第1号から第4号まであり、予算制度の意義や一般原則などについて解説されています。

この記事では、当該報告が掲載されたホームページへのリンクを貼っていません。リンクフリーかどうか判断がつかなかったので。
当該報告の中で予算の編成について触れており、そこでは「予算編成方針の明示」が必要であるとされています。
おそらくはこれに則って、各学校法人では予算編成方針の作成および周知が行われていると思われます。
従って、まずはこの方針を作成し、関係者へ周知するところから予算作成は始まるわけです。
②予算作成資料の配布・回収
予算編成方針に従って、関係者が予算を作成するわけですが、作成には各学校法人で定められたフォーマットのようなものがあります。
今の私の勤め先では、エクセルやワードのファイル形式でフォーマットが配布されます。
それに入力して、メールに添付し、提出といった流れです。
会計ソフトは使用していませんでした。
一方、以前の勤め先では、各部署等が直接会計システムに予算要求額を入力していました。
ただし、それでは数字だけなので具体的な計画の中身がわかりません。
そのため、別途計画書のフォーマットが配布され、それに計画内容や実施に必要な金額を記入して、メールで提出していました。

どちらにしても会計ソフトだけで完結するようなものではなかったですね。
フォーマットの準備が面倒なんですが。
このような流れで、関係者から予算要求を受け付けます。
③予算査定・査定結果の通知
予算の要求を受け付けたら、査定を行います。
まずは、経理・会計担当部署による第一次査定です。
このタイミングでは過去の実績等と比べるなどして、割と機械的に査定している印象があります。

正直なところ、各部署等の業務に精通しているわけではないので、こうせざるを得ないといったところでした。
第一次査定が終わったら、次は財務担当理事等による第二次査定です。
第一次査定の内容について報告を受けながら、査定を進めます。
その後、最終的に役員等が集まる「予算会議」が開催され、第二次査定の内容を審議し、査定が終了。
その結果が各部署等に通知されます。
④査定結果への異議・申立て
査定結果にどうしても納得がいかない場合に、異議・申立てができるという仕組みを設けている場合があります。

私の以前の勤め先がそうでした。
異議の内容等を記載した文書を提出し、経理・会計担当部署がその内容をチェックします。
内容が軽微なものであれば、経理・会計担当部署と異議を申し立てた部署との話し合いで終わらせることがありますが、審議が必要なものはあらためて会議を開催し、そこで直接要求内容等を話す機会を設けたりもします。
⑤予算案の審議・承認
こうした流れを経てまとまった事業計画や予算は理事会等で審議や意見聴取を受け、承認されます。
承認後は、予算書の形式で所轄庁に提出されます。
なお、私立学校法上は予算の作成は理事会が行うことになっています。
条文を確認しておきましょう。
私立学校法 第三十六条
e-GOV法令検索より引用
3 理事会は、学校法人の業務に係る次に掲げる事項の決定を理事に委任することができない。
(中略)
六 予算及び事業計画の作成又は変更

直接「理事会が予算を作成する」とは規定されていませんが、理事会は予算の作成を誰にも委任できないと読み取れると思います。
そして理事会が作成した予算は、評議員会で意見を聴取することになっています。
以上が、予算策定業務の大まかな流れです。
【悲しい一言】予算作成業務で起きたエピソード
ここまで、予算作成に関わる法令等とその業務の流れを見てきました。
この予算作成業務の中心となる存在が、財務課などお金を管理する部署になります。
理事会に代わって、予算をまとめ上げるわけですからとても大きな責任を担っているわけです。
そのため、周りからあまり関わりたくないという目で見られることもあります。
また前述のとおり、業務に対する理解が十分でない部署からの要求を査定しなければならないので、ときには、

課長
なに、この査定結果。現場のことを全然わかっていない。
と言われることもあります。
そしてやっとのことでまとめた査定に対し、役員から、

こんな査定じゃだめだ!
と突き返されることも。
まさに上から横からありとあらゆる方向からダメ出しを受けます。
そんな予算作成業務をしているときの出来事です。
先述した「査定結果への異議・申立て」がとある部署からありました。
内容が割と大きかったので、あらためて財務担当理事と当該部署の予算責任者、査定担当の財務課で会議を開催することに。
数日後、その会議は予定どおり開催されました。
当該部署の予算責任者からの一通りの説明のあと、質疑応答に移るのですが、その質疑応答のところで問題が起こります。
財務担当理事からの質問に、予算責任者は曖昧な回答を繰り返すのです。
はっきりした回答が返ってこないやりとりが続き、会議室は嫌なムードが漂います。
そして、ついに財務担当理事のイライラが頂点に達し、ある一言を発します。

そんないい加減な予算を要求するような奴は、罰として財務課に異動だ!
この言葉に私も含め、その場にいた財務課事務員が反応します。
声には出しませんが、一様に「どういうこと?」という思いでお互い顔を見合わせます。
会議終了後、自席に戻った財務課の面々。
なんとなくモヤモヤした気持ちでいる私に先輩事務員が一言。

財務課に配属されることって、懲罰だったんだ。
私、何を悪いことをしたんだろう。
それを聞いた上司は、

俺なんか、もう15年財務課だ。
懲役15年以上ということか?
と嘆きます。
便乗して私も、

私、新卒で財務課配属なんですけど、入職前に何をしたというんでしょう。
と続きます。
前述のとおり、予算作成担当部署は理事会に代わって大事な予算をまとめ上げるという大変な重責を担っている部署なのです。
皆さんは、もう少し温かく接してあげてください。
まとめ
私が財務課に勤務している際、上司から言われたことがあります。
それは、

完璧な予算を作成すれば、あとはそのとおりに行動するだけ。
そうすれば差異が発生しないから決算なんか簡単に終わる。
もちろんこれは極端な話ですが、要はそういう心構えで予算作成業務に当たれ、ということだと私は理解していました。
それだけ、学校法人にとって予算が重要だということです。
この記事のタイトルに「PDCAのP」と記載しましたが、この「P」の精度が学校法人の運営にとって最重要といっても過言ではないと思っています。
皆さんも予算作成を担当する際には、留意していただければと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

