
この記事は以下のような人を対象としています。
・「少子化」だけでなく「高齢化」も私立学校に影響があるのかなぁと思っている人。

少子化で子どもの数が減っているから、生徒が全然集まらないよ。
こんな悩みを抱えている私立学校事務員の方、結構多いのではないでしょうか。
言うまでもありませんが、私の勤め先はまさにこの状況。
田舎の小規模私立高校には、厳しいものがあります。
このように「少子化」に関する問題は、割と実感する機会が多いので意識されていると思いますが、これに加え「高齢化」も私立学校を悩ませる問題の一つとして挙げられると思います。

「少子高齢化」というセットになった単語でよく耳にしますからね。
ただ少子化の方が、学生生徒等納付金収入の減少など、学校の経営に直接影響を与える面が大きいため、高齢化による影響は比較的印象が薄いように感じています。
そこで今回は、この高齢化にまつわる私の仕事上でのエピソードを3つ紹介し、高齢化の影響を少しでも知っていただきたいと考えています。
その3つとは以下のとおりです。
- 教員募集しても・・・
- 今朝、会った時には・・・
- 授業が・・・
これから私立学校に勤めようと考えている方は「そんな状況なのか」と思っていただき、すでにお勤めの方は「うちもそうだ」など共感していただければ幸いです。
【前提】〇〇年問題について
まず、高齢化について話すにあたって整理しておきたいことがあります。
それがいわゆる「○○年問題」です。
様々な「○○年問題」があって、いまいち情報が頭の中でまとまっていない方もおられると思いますので、一緒に確認しましょう。
とりあえず理解しておきたいのは、以下の3つの「○○年問題」です。
- 2025年問題
- 2030年問題
- 2040年問題
それぞれ、短くまとめると以下のような内容だというのが私の認識です。
- 2025年問題:団塊の世代(1947〜1949年に生まれた世代)が75歳以上に達し、後期高齢者の数が急増する。それに伴い、医療や介護等の費用が増えて社会に影響を与える。
- 2030年問題:少子高齢化がさらに進行。65歳以上の割合が総人口の3割に達する。
- 2040年問題:団塊ジュニア世代(1971〜1974年に生まれた世代)が65歳以上に達する。同時に生産年齢人口(15歳~64歳)が大幅に減少し、労働量不足が深刻化する。
なお、文部科学省のホームページでは、2030年と2040年についてそれぞれ触れていますので、以下のリンクからご一読しておくことをおすすめします。
2030年
(文部科学省ホームページへのリンク)
2040年
(文部科学省ホームページへのリンク)
これら3つの問題のなかで、私がキーワードとして挙げたいのが「労働力不足」です。
これから紹介するエピソードも、この「労働力不足」に関連するものになります。
【エピソード①】教員募集しても・・・

タイトルから想像がつくかもしれませんね。
とにかく教員募集をしても人が集まらず、仮に応募される方がいても65歳以上の方が圧倒的に多いという現状になっています。

50代の応募があったら「若い人が来た!」と思わず声を出してしまうくらいレアです。
教員のなり手がいないというニュースをよく耳にしますが、本当に集まりません。
「教員」という職種に対して若い人たちが魅力を感じておらず、むしろネガティブな印象を持っているからというのが要因の一つだという話を聞いた方もおられるのではないでしょうか。
実際、私の今の勤め先は一番若い教員でも30代後半です。
教育実習生を受け入れもしていますが、様子を見ていると、

教職課程を履修したのだから教員免許はとっておこう。
くらいの思いで実習に臨んでいる印象を受けます。

あくまで私個人の勝手な印象ですが。
そんな教員不足という状況ですので、生徒だけでなく教員も学校同士で取り合いが起こっているわけです。
もちろん、ベテランの方にお越しいただくのはありがたい話ではあるのですが、後述するように、年配の方には特有とも言える問題を抱えているケースがあります。
2040年を待たずして、すでに労働力の問題は私立学校に影響を与えているというのが私の実感です。
【エピソード②】今朝、会った時には・・・
これは私の今の勤め先での話です。
非常勤講師としてお勤めいただいていた方がおられました。
その当時で70歳をこえていましたが、とても元気そうな様子で声も大きく、受け答えもハキハキとした方でした。
そんな様子でしたので、こちらとしては何の心配もなく授業をお任せしていたのですが、あるとき突然異変が起こったのです。
新年度が始まり、何事もなく4月が終わり、ゴールデンウイークをはさんで授業が再開したある日のことでした。
事務室で仕事をしていると、事務室の窓口の方にふらふらと歩く人影が見えました。

誰か通ったかな。
と思い、事務室を出て見に行ったのです。
するとそこには、その非常勤講師の方の姿が。

どうしたんですか?
と声をかけてみたところ、

めまいが治まらない。
とのこと。
その声は今朝話をしたときのような元気な声ではなく、とても弱々しいものでした。

いつから調子が悪いんですか?
と尋ねると、

実は4月入ってからずっと調子が悪いんです。今朝はまだましな方だったんですが。
との返答が。
しばらく様子をみていれば、症状がよくなるかなと思い、今までだましだまし出勤していたが、いよいよ耐えられなくなったと仰られます。
そしてその場で、

もう、今日で退職します。
と言い残し、去って行かれました。
私はどうすることもできず、ただ唖然として後姿を見送ることしかできませんでした。
そしてそれ以降、本当にその方は学校には来られなかったのです。
そのあと大変だったのは、授業の穴をどう埋めるかということ。
募集するまでもなく、新年度始まって間もないこのタイミングでは、いつもに輪をかけて人が集まらないことはわかっています。
仕方がないので、その非常勤講師と同じ教科の専任教員が担当することに。
しかし、結局、そのあと代わりの非常勤講師が見つからなかったため、3学期まで専任教員が受け持つことになりました。
こんな感じで、年配の方には「健康」という大きな問題がついて回ります。
もちろん若い人でも起こりえますが、高齢になるとその確率は高くなります。
それは、前述の医療費や介護関連費が増加するという傾向からも推察できる話です。
まさにそうした「健康問題」を目の当たりにした出来事でした。

退職以降、その方から学校へ連絡はありませんが、元気に過ごされていることを願っております。
【エピソード③】授業が・・・
最後も、今の勤め先での話です。
あるとき、事務室の窓口に生徒がやってきました。
何の用事かと思い、話しかけてみると、

△△(教科名)の〇〇先生、何を言っているか全然わからない。
と言うのです。
〇〇先生は非常勤講師の方で、当時70歳代中盤でした。
生徒が言うには、とにかく言っていることが聞き取れないとのこと。
しかもその生徒だけでなく、別の生徒からも同様の声が上がっている様子です。

校長先生にまで言いに行った生徒がいたというウワサも聞きました。
これはかなり極端な例ですが、実際のところ私の以前の勤め先も含めて、こういった年配の方の話が聞き取りづらいというケースはよくあるように思います。

あくまで私の経験上のことを述べているだけで、全ての年配の方の話し方が聞き取りづらいと言っているわけではありませんのでご理解ください。
年齢を重ねるうちに、話し方にも変化が生じてしまうのでしょうか。
当の本人は、学校に対し好意的な思いを持ってくださっていたりするので、こちらとしては対応が難しい案件だと感じています。
ただ、生徒の教育という面ではマイナスの影響が出てしまっているように思われます。
皆さんの勤め先の方は、いかがでしょうか。
ぜひ確認してみてください。
まとめ
冒頭でも述べましたが、私立学校事務員としては「高齢化」よりも「少子化」に意識がいきがちです。
もちろん入学者が減ることは学校経営において深刻な問題ですが、その入学者に教育などを提供する教職員の高齢化も大きな問題だと思います。
いわゆる労働力不足です。
今の段階で、私たちがどうにかできるものではないかもしれませんが、頭の片隅にはいれておきましょう。
個人的な話ですが、2040年になると今40代の私もいよいよ60歳をむかえようとしている頃になります。
一人の労働者として、どのようにあるべきかを今から考えていきたいと思っています。
皆さまの今後について考える参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。