
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人会計に関する知識を身につけたいと考えている人。
以前の記事で学校法人の事業活動収支計算書についてのクイズを出題しました。
以前の記事でも述べましたが、事業活動収支計算書には学校法人の経営状態を表す重要な情報がたくさん掲載されています。
そのため、1回だけでなく複数回にテーマを分けて出題したいと考えています。
そこで今回は、事業活動収支計算書の「教育活動支出の中身」をテーマにクイズを作成してみました。
形式はこれまでと同様にビジネス会計検定3級を参考にしています。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとに今回の出題に関連した情報を紹介しています。
支出のなかでも特に「教育研究経費」と「管理経費」は、簿記では扱われない特殊なものです。
それぞれについてどんなものが該当するのか、大枠だけでも掴んでおけば計算書類を読み解く力がアップすると思います。
少しでも皆さまの理解を深めるための一助になれば幸いです。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】管理経費の分類
次の項目のうち、管理経費に分類されるものの個数を選びなさい。
ア.役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費
イ.本校所在地から離れている学部や学校におかれる事務室のために要する経費
ウ.総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
エ.全寮制を採っている学校における寮のために要する経費
オ.学生生徒等の募集のために要する経費
正解:B
「「教育研究経費と管理経費の区分について(報告)」について(通知)」(昭和46年11月27日雑管第118号)では、管理経費として取り扱うものとして以下の項目を列挙しています。
次の各項に該当することが明らかな経費は、これを管理経費とし、それ以外の経費については主たる使途に従って教育研究経費と管理経費のいずれかに含めるものとする。
1.役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費
文部科学省ホームページより引用
2.総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
3.教職員の福利厚生のための経費
4.教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費
(減価償却贅を含む。)
5.学生生徒等の募集のために要する経費
6.補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費
7.附属病院業務のうち教育研究業務以外の業務に要する経費
従って、設問選択肢のうちア・ウ・エの3つが管理経費となります。
なお、イについては必ずしも管理経費となるわけではなく、例えば経理関係に係るものは管理経費に含め、教務関係に係るものであれば教育研究経費に含めるといったケースに応じた対応が必要となる。
また、エについては全寮制を採っている学校での寮関係経費は教育研究経費、一部の学生に対する寄宿舎程度であれば管理経費に区分するのがふさわしいものと解されています。
こちらについても前掲の文部科学省のホームページに記載されていますので、確認しておきましょう。
【第2問】教育研究経費の項目①
次の項目のうち、教育研究経費に含まれるものの個数を選びなさい。
ア.入学選抜試験に要する経費
イ.WEB出願システムの利用料金
ウ.一般企業から派遣される部活動指導員への報酬
エ.教員募集のための広告掲載料
オ.教員の健康診断に要する経費
正解:A
問題文の項目を区分すると以下のとおりになります。
教育研究経費:ア,ウ
管理経費:イ,エ,オ
前述の「5.学生生徒等の募集のために要する経費」には、入学選抜試験に要する経費は含まないものとされています。
これに基づき、出願までに係る経費は「管理経費」、出願より後に発生する経費は「教育研究経費」で処理するのが一般的です。
従って、アが教育研究経費、イが管理経費に区分されます。
その他の選択肢については
ウ:生徒への教育活動の一環として行われるものと位置づけられるため教育研究経費
エ:人事に要する経費であるため管理経費
オ:教職員の福利厚生のための経費であるため管理経費 となります。
【第3問】教育研究経費の項目②
次の項目のうち、教育研究経費に含まれるものの個数を選びなさい。
ア.過年度に交付を受けた授業料等減免費交付金の返還
イ.卒業生に対する奨励金
ウ.図書の購入費
エ.私学事業団への掛金(学校負担分)
オ.一般社団法人 授業目的公衆送信補償金等管理協会への補償金
正解:A
問題文の項目を区分すると以下のとおりになります。
教育研究経費:オ
管理経費:ア,イ
設備関係支出:ウ
人件費:エ
私立大学等経常費補助金や授業料等減免費交付金などは、交付を受けたあとに実績報告をする流れになっています。
この実績報告において、すでに交付決定を受けた金額を実績額が下回るケースがあるのです。
このような場合、私学事業団では、返還金を管理経費として処理することが妥当という見解を示しています。
よって、アは管理経費となるわけです。

これが発生すると、担当者としては憂鬱な気分になります。
また、基本的に学生生徒等への奨励金は教育研究経費として処理することになりますが、対象が「卒業生」の場合、管理経費となります。
これも私学事業団の見解ですので、覚えておきましょう。
その他の選択肢については、
ウ:図書は「資産」になるため、基本的に設備関係支出
エ:私学事業団の掛金(学校負担分)は、給与などと同様に人件費
オ:授業実施が目的であるため、教育研究経費
となります。
【第4問】管理経費①
次の項目のうち、管理経費に含まれるものの個数を選びなさい。
ア.学生アルバイトへ支払うバイト代(学校と雇用関係あり)
イ.有価証券の購入費
ウ.休職者へ支給する傷病手当金
エ.被災による損害額(原状回復に要するものを含まない)
オ.学校法人が行う寄付
正解:B
問題文の項目を区分すると以下のとおりになります。
管理経費:オ
資産運用支出:イ
経過勘定:ウ
特別支出:エ
人件費:ア
それぞれの選択肢については、
ア:学生でも学校と雇用関係がある場合は、基本的に人件費
イ:有価証券購入は「資産運用」にあたるため、有価証券購入支出
ウ:傷病手当金は学校の支出にあたらないため、経過勘定(預り金または立替金)
エ:現状復旧にあたらない被災による損害は、特別支出
オ:補助金の交付を受けている学校法人の性質等を鑑みて、管理経費
となります。
【第5問】管理経費②
次の項目のうち、管理経費に含まれるものの個数を選びなさい。
ア.役員への報酬
イ.借入金の支払利息
ウ.借入金の元本返済
エ.授業料の返金
オ.入学試験の合格通知の発送費
正解:A

設問のタイトルが「管理経費②」なのに正解が「0つ」とはどういうこと?
そう思った人もいるかもしれませんが、ひっかけ問題だと思ってください。
それぞれの選択肢については、
ア:役員に関するものでも報酬は人件費
イ:借入金利息
ウ:借入金返済支出
エ:授業料収入を取り消す処理(経費にはならない)
オ:入学選抜試験実施に係る経費のため、教育研究経費
となります。
【理解度アップ】代表例を1つだけおさえよう
経理・会計担当者以外の人からすれば細かい内容になったかもしれません。
ここで大切なのは、設問で挙げたもの一つひとつを覚えるのではなく代表例を頭に入れておくということです。
保護者等から、

この教育研究経費と管理経費は何が違うの?
と尋ねられたときに、答えられないようでは私立学校事務員として失格だと私は思っています。
そのようなケースを想定して、適切に対応できるように準備しておく必要があるわけです。
これも計算書類を読み解く力の1つだと思います。
民間企業の場合に一般消費者から、

私が払った代金はどこに使われているのですか?
などと言われることは滅多にないと思われます。
しかし、学校の場合、

私が払った学費はどこに使われているのですか?
と尋ねられることはありえます。
そうした説明責任を果たすために、教育研究経費や管理経費といった区分を設けているものと私は理解しています。
だから、先ほどの保護者からの問いには、

主にこの教育研究経費にあてられています。
中身は〇〇や△△といった教育活動に必要なものになります。
といった説明ができるようにしておくべきです。
管理経費に対する説明も同様です。
この「説明責任を果たす」という責務は、経理・会計担当者だけに課されたものではありません。 私立学校事務員全員に求められています。
ぜひ、前述の1~7項目の1つだけでも覚えて、その代表例を挙げられるように備えておきましょう。
まとめ
「教育研究経費」と「管理経費」
この学校法人特有の区分けが、学校法人の「公共性」に関係していると思います。
納められた学費や交付された補助金がちゃんと教育活動に使われていること。
それを計算書類に明確に表すことで、関係者の目に触れるようにし、公共性を高めているのです。
細かい各経費の中身はおいおい覚えるものとして、まずはそうした意義を理解しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




