
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人会計に関する知識を身につけたいと考えている人。
以前の記事で学校法人の事業活動収支計算書についてのクイズを出題しました。
以前の記事でも述べましたが、事業活動収支計算書には学校法人の経営状態を表す重要な情報がたくさん掲載されています。
そのため、1回だけでなく複数回にテーマを分けて出題したいと考えています。
そこで今回は、事業活動収支計算書の「教育活動以外の収支」をテーマにクイズを作成してみました。
形式はこれまでと同様にビジネス会計検定3級を参考にしています。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとに今回の出題に関連した情報を紹介しています。
事業活動収支計算書を読み解くうえで、どの区分にどのような情報が記載されているかを理解しておくことは必須です。
少しでも皆さまの理解を深めるための一助になれば幸いです。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】教育活動外収支の算定
以下の情報により、教育活動外収入および支出に該当するものの金額を合計し、教育活動外収支差額として正しい数値を選びなさい。
その他の受取利息・配当金200 附属事業収入150 徴収不能額100 借入金利息150
収益事業収入200
正解:A
問題文で挙げたものを分類すると以下のようになります。
教育活動外収入:その他の受取利息・配当金、収益事業収入
教育活動外支出:借入金利息
教育活動収入:附属事業収入
教育活動支出:徴収不能額
よって教育活動外収支は(200+200)-150=250となります。

教育活動外収入と支出に該当する項目はそれほど多くありません。
なかでもここで挙げた利息関係は、ほとんどの学校法人で見かけるものですので覚えておきましょう。
ちなみに「収益事業収入」と「附属事業収入」は名前が似ているので混同しやすいです。
- 附属事業収入:病院、研究所等の学校法人の「教育活動に附属する」機関からの収入
- 収益事業収入:学校法人が設立した会社等「教育活動に附属しない」機関からの収入
と、ここでは一旦理解しておいていただければ結構です。
【第2問】特別収支の算定
以下の情報により、特別収入および特別支出に該当するものの金額を合計し、特別収支差額として正しい数値を選びなさい。
資産処分差額50 施設設備寄付金200 施設設備補助金300 災害損失200 資産売却差額50
正解:C
問題文で挙げたものを分類すると以下のようになります。
特別収入:施設設備寄付金、施設設備補助金、資産売却差額
特別支出:資産処分差額、災害損失
よって特別収支差額は(200+300+50)-(50+200)=300となります。
「資産売却差額」と「資産処分差額」 これも名前が似ているので「どっちが収入科目だったっけ?」となりがちです。
- 資産売却差額:資産を売って儲かった場合(収入)
- 資産処分差額:資産を売って損した場合(支出)
例えば100万円の車を1台持っていたとします。
これを中古車買い取りに出した際、
- 110万円で売れた:110万-100万=プラス10万円
- 90万円で売れた:90万-100万=マイナス10万円
となります。
前者が「資産売却差額10万円」、後者が「資産処分差額10万円」といった取り扱いになるわけです。

売れた金額そのままではなく、「差額」が計上されるというところがポイントです。
以前の記事でもお伝えしましたが、事業活動収支計算書は「純粋に学校の資産が増えた(減った)もの」が記載対象となります。
そのため、100万円の車が100万円で売れても、学校法人としてはプラスマイナスゼロとなるため、事業活動収支計算書には表れないことになります。
私たちの生活の収支を考える際には、お金の出入りが基準となるため、この事業活動収支計算書の考え方はピンとこないかもしれません。
しかし、学校の経営状況把握のためにはおさえておきたいポイントですので慣れておきましょう。
【第3問】経常収支差額①
以下の情報により、経常収支差額を計算し、正しい数値を選びなさい。
教育収支差額500 借入金利息100 奨学費200 教員人件費300 教育活動収入1,000
その他の受取利息・配当金100
正解:B
経常収支差額=教育収支差額+教育活動外収入-教育活動外支出で計算されます。
従って、
経常収支差額=教育収支差額500+その他の受取利息・配当金100-借入金利息100=500
となります。
奨学費や教員人件費は教育活動支出に含まれるため、教育活動収支差額500を算出する際にすでに計算済みです。
また、教育活動収支差額=教育活動収入-教育活動支出ですので、教育活動収入1,000も教育活動収支差額500の計算過程に含まれています。

三角形の面積や円周の公式のような感覚で覚えてしまいましょう。
【第4問】経常収支差額②
以下の情報により、経常収支差額を計算し、正しい数値を選びなさい。
基本金組入前当年度収支差額100 資産処分差額50 収益事業収入200 資産売却収入100
施設設備補助金150
正解:A
基本金組入前当年度収支差額から逆算するかたちで算出します。
経常収支差額=基本金組入前当年度収支差額-特別収入+特別支出で計算されます。
従って、
経常収支差額=基本金組入前当年度収支差額100-施設設備補助金150+資産処分差額50=0
となります。

上からでも下からでも計算できるようにしておくことで、事業活動収支計算書の構造が頭に入ってきますよ。
ちなみに、資産売却収入は資金収支計算書で使用される勘定科目であるため、事業活動収支計算書では出てきません。
また、収益事業収入も教育活動外収入としてすでに計算に織り込み済みであるため、ここでは使用しません。
【第5問】当年度収支差額
以下の情報により、当年度収支差額を計算し、正しい数値を選びなさい。
教育活動収支差額500 教育活動外収支差額△150 特別収支差額200
基本金組入前当年度収支差額100 基本金組入額合計△50 基本金取崩額150
正解:B
当年度収支差額=基本金組入前当年度収支差額+基本金組入額合計で計算されます。
従って、
当年度収支差額=基本金組入前当年度収支差額100+基本金組入額合計△50=50
となります。

基本金組入額合計はマイナス表記(数字の頭に△をつける)になります。
これもそういうルールだと思って覚えてください。
この当年度収支差額の均衡状態を明らかにすることが、事業活動収支計算書の目的ですのでおさえておきましょう。
【理解度アップ】収支差額比率の傾向をつかむ
これまでの記事でも何度か触れてきましたが、私が事業活動収支計算書で重視している収支差額(比率)は以下の3つです。
- 経常収支差額(比率)
- 本金組入前当年度収支差額(比率)
- 当年度収支差額(比率)
そのなかでも、文部科学省などの行政も重視しているのが「基本金組入前当年度収支差額(比率)」です。
少し古いデータになりますが、文部科学省のホームページでは、大学・短期大学・高等学校の基本金組入前当年度収支差額(比率)の推移が掲載されています。
私立大学・短期大学・高等学校の収支状況(経年の推移)
(文部科学省ホームページへのリンク)

個人的には年度が変わるごとに更新してほしいなぁと思っています。
これを見ると、各学校種における基本金組入前当年度収支差額比率のおおまかな数値が把握できます。
かなりざっくりですが、
- 大学:3.5%前後
- 短期大学:△8.0%前後
- 高等学校:3.0%前後
といった感じになっています。
続きの年度の数値が知りたい場合は、私学事業団が発行している「月報私学」から確認することも可能です。
こうした「基本となる数値」を頭に入れておくことが重要になります。
もちろん、正確に覚えておく必要はありません。
「だいたいこのくらい」という感覚で覚えておき、自分の勤め先の決算数値を見たときに頭の中で比較できるようになっていれば問題ないと思います。
自分の勤めている学校の収支がどのような状況なのか。
これを説明できることは、自分にとっても、保護者や行政など関係者への説明責任を果たすという意味でも大切だと私は考えています。
おさえておきましょう。
まとめ
前述したとおり、収支状況を関係者へ説明できるようになっておくことは、私立学校事務員にとって必須だと思っています。
しかしただ機械的に、

うちの基本金組入前当年度収支差額比率は全国平均より高いです。
と言えたらいいわけではありません。
今回出題したような内容を踏まえて、どのような計算過程を経て、この収支差額比率が導き出されているかを理解したうえで説明できることが重要です。
この記事がその理解の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



