
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人会計に関する知識を身につけたいと考えている人。
学校法人会計基準で定められた計算書類といえば「貸借対照表」「事業活動収支計算書」「資金収支計算書」の3つです。

厳密には「活動区分資金収支計算書」がありますが、ここでは資金収支計算書と同じものだと思ってください。
これまでの記事で「貸借対照表」と「事業活動収支計算書」に関するクイズを出題してきましたので、今回は「資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)」について取り上げたいと思います。
他の計算書類と同様に1回では全ての内容を網羅することが困難なため、複数回に分けてクイズを出題していきます。
第一回目は、資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)の総論的な内容です。
形式はこれまでと同様にビジネス会計検定3級を参考にしています。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとに今回の出題に関連した情報を紹介しています。
学校法人のお金の流れが記録される資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)。
組織が活動を続けるために必要なお金の状態を把握するために、その仕組みなどについて知識を身につけておきましょう。
少しでも皆さまの理解を深めるための一助になれば幸いです。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)総論①
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
ア.資金収支計算書は、計算書類の1つとして位置付けられており、当該会計年度末現在における学校法人の運用資産の状況を表示する計算書類である。
イ.活動区分資金収支計算書は、教育活動による資金収支、施設整備等活動による資金収支、その他の活動による資金収支の3つの区分に分けて表示される。
正解:C
学校法人会計基準では以下のように定められています。
第三十二条 資金収支計算書は、当該会計年度の諸活動に対応する全ての収入及び支出の内容並びに当該会計年度における支払資金(現金及びいつでも引き出すことができる預貯金をいう。以下同じ。)の収入及び支出のてん末を明瞭に表示するものとする。
e-GOV法令検索より引用
従って、運用資産に状況を表示するものではないため、アは誤りとなります。
また、活動区分資金収支計算書については、以下のように定められています。
第三十九条 活動区分資金収支計算書には、資金収支計算書に記載される資金収入及び資金支出の決算の額を次に掲げる活動ごとに区分して記載するものとする。
一 教育活動
e-GOV法令検索より引用
二 施設若しくは設備の取得又は売却その他これらに類する活動
三 資金調達その他前二号に掲げる活動以外の活動
よって、イは正となります。

「施設整備等活動」や「その他の活動」といった表現については、計算書類の様式で確認できますので、以下のリンクから併せてチェックしておきましょう。
活動区分資金収支計算書
(e-GOV法令検索へのリンク)
【第2問】資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)総論②
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
ア.資金収支計算書には、「補助金の適正な配分と効果」という目的もある。
イ.資金収支計算書の資金の増減額と事業活動収支計算書の収支差額の増減額は一致する。
正解:B
アについては、文部科学省が公表している資料をご参照ください。
学校法人会計基準について
(文部科学省ホームページへのリンク)

資料に振られているページ番号で言うと6ページですね。
補助金は資金面の支援という意味合いがありますので、その資金の状況を確認するために資金収支計算書は必要というわけです。
従って、アは正となります。
また、事業活動収支計算書は現物寄付など現金預金の動きが伴わない収入および支出が含まれるため、必ずしも資金の増減額とは一致しません。
よって、イは誤りとなります。
【第3問】資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)総論③
ア.資金収入の計算は、当該年度内に実際に支払資金へ入ってきたお金のみが対象となる。
イ.資金支出の計算は、当該年度内に実際に支払資金から出ていったお金のみが対象となる。
正解:C
学校法人会計基準の定めを確認しましょう。
第三十三条 資金収入の計算は、当該会計年度における支払資金の収入並びに当該会計年度の諸活動に対応する収入で前会計年度以前の会計年度において支払資金の収入となつたもの(第三十七条第一項において「前期末前受金」という。)及び当該会計年度の諸活動に対応する収入で翌会計年度以後の会計年度において支払資金の収入となるべきもの(第三十七条第一項において「期末未収入金」という。)について行うものとする。
2 資金支出の計算は、当該会計年度における支払資金の支出並びに当該会計年度の諸活動に対応する支出で前会計年度以前の会計年度において支払資金の支出となつたもの(第三十七条第二項において「前期末前払金」という。)及び当該会計年度の諸活動に対応する支出で翌会計年度以後の会計年度において支払資金の支出となるべきもの(第三十七条第二項において「期末未払金」という。)について行うものとする。
e-GOV法令検索より引用
「前受金」「未収入金」「前払金」「未払金」についてはこちらの記事をご参照ください。
このように実際の資金の出入りだけが、資金収入および資金支出の計算対象となっているわけではないので、アおよびイは誤りとなります。
【第4問】支払資金①
次の文章について、正誤の組み合わせとして正しいものを選びなさい。
ア.資金収支計算書における「支払資金」には手許現金や普通預金が含まれるが、定期預金は含まれない。
イ. 資金収支計算書の翌年度繰越支払資金の金額と貸借対照表の現金預金の金額は一致する。
正解:C
設問1で紹介したとおり、支払資金は「現金及びいつでも引き出すことができる預貯金」のことを指します。
定期預金は基本的に「いつでも引き出すことができる預貯金」に該当するため、支払資金に含めます。
従って、アは誤りとなります。

2年定期のように、満期が1年を超える場合は支払資金から切り離して「長期定期預金」として取り扱ったりします。
また、3つの計算書類はそれぞれつながっており、資金収支計算書の翌年度繰越支払資金の金額と貸借対照表の現金預金の金額は一致します。
計算書類のつながりについては以下の記事もご参照ください。
【第5問】支払資金②
以下の情報により、資金収支計算書における支払資金に該当する項目の金額を合計したものとして正しい数値を選びなさい。
ただし普通預金は、特定の使途に充てるためのものではないものとする
普通預金500 手許現金100 修学旅行費預り資産200 有価証券200 決済性普通預金300
正解:B
問題文で挙げたものを分類すると以下のようになります。
支払資金:普通預金、手許現金、決済性普通預金
支払資金以外:有価証券、修学旅行費預り資産

普通預金であっても、例えば「施設設備の充実のため」といったように特定の使途に限定している場合は、「現金及びいつでも引き出すことができる預貯金」に該当しません。
よって支払資金は(500+100+300)=900となります。
企業会計と異なり、基本的に有価証券は支払資金と切り離して、個別に計算書類に記載します。
また、修学旅行費を生徒から徴収している場合は、その徴収したお金を支払資金から切り離して、個別に計算書類に記載します。
支払資金は資金収支計算書を見る際の最も重要なポイントの1つですので、その中身についてはよく理解しておきましょう。
【理解度アップ】活動区分資金収支計算書を見る手順
企業会計では、
- 「収益性」
- 「安全性」
- 「成長性」
の3つのポイントを意識して決算書を読み解きます。
この観点を学校法人の計算書類にあてはめると、活動区分資金収支計算書を見るポイントは「安全性」です。
以前の記事で、この活動区分資金収支計算書でチェックすべきところは「教育活動資金収支差額の金額だけ」とお伝えしました。
もちろんここをチェックするだけでも「安全性」を把握することは可能ですが、もう少しじっくりと読み解く場合は、私は以下の手順を踏んでいます。
- 前年度繰越支払資金と翌年度繰越支払資金の増減
- 教育活動資金収支差額の金額
- 施設整備等活動資金収支差額の金額
- 教育活動資金収支差額+施設整備等活動資金収支差額の金額
④は企業会計の書籍などでは「フリーキャッシュフロー」と呼ばれていたりします。

学校法人にとって大切な「教育活動」と「施設設備の整備活動」の後に残ったお金なので、フリーに使えるお金だとイメージしていただければと思います。
順に解説すると、
- すぐに出し入れできるお金が増えたか減ったかをチェック
- 本業では手元にお金を残せているかをチェック
- 将来のための施設設備の整備にお金を使っているかをチェック
- 自由に使えるお金が残っているかをチェック
といった感じです。
ご自身のお勤め先もこの流れでチェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
企業会計のキャッシュフロー計算書はよく、「会社の血液の流れを表したもの」といった表現をされています。
学校法人会計の場合、まさに資金収支計算書(活動区分資金収支計算書)はまさに「学校法人の血液の流れを表したもの」と言っても言い過ぎではないと思っています。
結局、企業も学校法人も「血液=お金」の流れが悪くなったり、枯渇することで活動を継続できなくなるからです。
そんな大事な情報が記載されている計算書類ということを意識して、読み解くための知識を身につけていきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。




