
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人会計に関する知識を身につけたいと考えている人。
これまでの記事で学校法人会計基準についてのクイズを出題してきました。
「法令」や「計算書類」に関する内容で、どのクイズも私立学校事務員として理解しておくべきと私が思っているものばかりです。
そして、今回はその続編です。
テーマは「計算書類分析」
形式はこれまでと同様にビジネス会計検定3級を参考にしています。
問題を全部で3問用意し、全ての問題のあとに今回の出題に関連した情報を紹介しています。
これまでのクイズで、学校法人会計基準に関わる法令や計算書類の基本的な構造などは理解できているはずです。
それらを活かして、今度は計算書類を分析する際に必要となる知識を習得していきましょう。
自分の勤め先の現状把握や学校内外の関係者への説明責任の履行などに役立つはずです。
皆さまの理解を深める一助となれば幸いです。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】利害関係人の範囲
次に挙げるもののうち、利害関係人に該当するものの個数を選びなさい
(ア) 文部科学大臣および都道府県知事
(イ)学生生徒
(ウ)保護者
(エ)取引先
(オ)学校で働く教職員
正解:C
利害関係者については、まず令和7年4月1日施行の改正私立学校法に関する資料を確認しておきましょう。
私立学校法の改正に関する説明資料(令和7年3月25日更新)
(文部科学省ホームページへのリンク)
この説明資料のなかに、「改正私立学校法が想定するステークホルダー」について触れている箇所があります。
そこには次のように記載されています。
学校法人制度の理念や目的、教育研究・社会連携等の活動が複雑化する現状等を考慮し、従来の利害関係人の範囲(学生生徒やその保護者、職員、債権者等)にとどまらず、寄付者や産業界等、その範囲は広範に渡るものと解するべき。
「私立学校法の改正に関する説明資料(令和7年3月25日更新)」より引用
つまり、設問でいうところの(イ)から(オ)が利害関係人に該当するということになるわけです。
また、(ア)の文部科学大臣および都道府県知事は、学校法人にとっての「所轄庁」という立場になります。
これについては私立学校法の条文を確認しておきましょう。
第四条 この法律中「所轄庁」とあるのは、第一号、第三号及び第五号に掲げるものにあつては文部科学大臣とし、第二号及び第四号に掲げるものにあつては都道府県知事(第二号に掲げるもののうち地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下この条において「指定都市等」という。)の区域内の幼保連携型認定こども園にあつては、当該指定都市等の長)とする。
e-GOV法令検索より引用
一 私立大学及び私立高等専門学校
二 前号に掲げる私立学校以外の私立学校並びに私立専修学校及び私立各種学校
三 第一号に掲げる私立学校を設置する学校法人
四 第二号に掲げる私立学校を設置する学校法人及び第百五十二条第五項の法人
五 第一号に掲げる私立学校と第二号に掲げる私立学校、私立専修学校又は私立各種学校とを併せて設置する学校法人
つまり経営・ガバナンス上の利害関係人に該当すると言えるわけです。
従って(ア)から(オ)すべてが利害関係人となるため、正解はCとなります。
一言で「利害関係人」といっても、それぞれ立場や目的が異なります。

保護者や生徒は自分が払った学費の使途に興味があるでしょうし、取引先はきちんと代金を支払ってくれるのかを気にするでしょうからね。
そうした違いを理解したうえで、利害関係人が求める情報を適切に提供できるように計算書類分析を行う必要があります。
【第2問】定量情報と定性情報①
次の文章のうち、正しいものの個数を選びなさい。
(ア)定性情報のなかにも数値で表現されるものがある
(イ)教職員の平均年齢や人数、学生生徒等の人数、入学定員数は定量情報である
(ウ)定性情報は計算書類分析では必要とされない
(エ)計算書類分析を行うにあたり、内部関係者と外部関係者では入手できる情報は同じである
正解:A
こちらについては、私学事業団の資料が参考になります。
自己診断チェックリスト
(私学事業団ホームページへのリンク)
この資料には、学校法人の経営状況を分析するにあたっての「定性情報」と「定量情報」がいくつも紹介されていますので、これを参考にしながら選択肢をそれぞれ見ていきたいと思います。
まず(ア)ですが、数値化できないものを「定性情報」と呼びますので誤りとなります。
私学事業団の資料でいうと「理事会の決定方針の周知徹底」や「建学の精神の明示」などが定性情報として扱われています。

〇か×かで回答するようなものですね。
(イ)はそのとおりです。
私学事業団の資料にもこれらの定量情報を使った指標が用いられています。
(ウ)は誤りです。
計算書類分析を行うにあたっては、対象となる学校法人の状況を詳細に把握しておく必要があります。

仮に財務的な数値が良くても、内部の統制が全く取れていないようだと健全な経営状態とは言えませんよね。
従って、学校法人の情報を適切に理解するためには、定量情報と定性情報の両方が必要となってくるわけです。
最後の(エ)も誤りです。
これは「情報の非対称性」というものになります。
学校法人に勤める教職員と学生生徒や保護者とでは、当然手に入る情報は異なります。

だから透明性の高い情報公開が求められているわけです。
さらに同じ学校法人内部でも、教職員と理事とでは入手できる情報に違いが生じます。
計算書類分析を行うにあたっては、こうした違いも認識しておきましょう。
よって正しいものは(イ)のみとなるため、正解はAになります。
【第3問】定量情報と定性情報②
次の文章の空欄(ア)から(ウ)に当てはまる語句の適切な組み合わせを選びなさい。
学校法人の経営状態を把握するための情報には、数値化できる定量情報と、数値化しにくい定性情報とがある。後者の具体例としては(ア)が挙げられる。計算書類分析で主な対象となるものは(イ)である。計算書類分析の結果を評価する際には、過去の結果どれだけ改善されたかを見る(ウ)が用いられることがある。
正解:A
こちらも、前述の「自己診断チェックリスト」の内容を見ながら確認していきたいと思います。
まず(ア)ですが、定量情報は数値化できることが要件になります。
その観点から「面倒見のよさ」は定量情報としては取り扱われません。

某マンガの戦闘力みたいに測れたらいいんですけどね。
一方、教職員数は「専任教員数」や「専任職員数」といった定量情報として、分析等に用いられています。
続いて(イ)ですが、計算書類は「金額」という定量情報のかたまりです。
従ってその分析も、定量情報がメインとなって行われます。
参考までに、自己診断チェックリストの「1.財務比率等に関するチェックリスト」のパートを確認してみましょう。
チェックリストの冒頭に記載されているとおり、このパートでは「定量的な判断」を行うことを目的としています。
その目的のために、様々な数値データを取り扱っているわけです。
そしてそこには、計算書類の情報が多く用いられています。
このことからも、計算書類分析が定量情報を主な対象としていることがわかると思います。
最後は(ウ)です。
「〇〇比率△%」と数値だけ算出したところで、経営状態を詳しく分析することはできません。
そこには何かしらの比較が必要となってきます。
チェックリストでは、比較の方法として「絶対評価」「相対評価」「趨勢評価」の3パターンを用いています。
そのうち、過去からの改善を評価しているのが「趨勢評価」になります。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、重要な用語ですので覚えておきましょう。
以上により、正解はAとなります。
【理解度アップ】「〇〇1人あたり△△」で見る
設問3のところで、計算書類分析は主に定量情報が対象であることをお伝えしました。
そんな定量情報を分析するにあたって、私がよく使用するのが「〇〇一人あたり△△」という方法です。
この記事で紹介しました私学事業団の自己診断チェックリストでも用いられている分析方法の1つです。
計算書類分析をすると、どうしても他の学校と数値を比較したくなります。

テストの点数を友達と比べたくなるような感覚ですね。
そんなときに私はこの「〇〇1人あたり△△」を使います。
例えば、人件費。
人件費比率を比べてみることももちろん行いますが、それだと単純に「うちの方が高いor引低い」ということしかわかりません。
仮に人件費比率が他校より高かったとします。
人件費比率は「人件費÷経常収入×100」で算出されるわけですが、高い要因が人件費なのか経常収入なのかまでは比率を見ただけでは判断がつきません。
そこで登場するのが「〇〇1人あたり△△」です。
本務教員人件費を専任教員数で割れば「専任教員1人あたり人件費」が算出できます。

職員も同様ですね。
大学法人や短期大学法人であれば、事業報告書などから教職員数を把握できると思います。
そうして入手した数値を基に「〇〇1人あたり△△」を算出してみるわけです。
これにより、学校の規模などの影響をおさえたうえで、要因を探ることが可能となります。

もちろん、教職員の年齢構成なども人件費の額に関係してきますので、算出した数値を過信しないようにしましょう。
一方、経常収入は、私の場合「学生生徒等1人あたり経常収入」で確認します。
経常収入の大部分を占めているのが学生生徒等納付金だからです。
こうして「〇〇1人あたり」に換算して比較すると、より詳しく経営状況を把握することができるようになると思います。
一度、やってみてはいかがでしょうか。
まとめ
よく「うちの学校は○○比率が△%だ」といった感じで、財務比率等だけが一人歩きしてしまっているケースを見かけます。
しかし、財務比率等を算出するだけが計算書類分析ではありません。
分析にあたっては、
- 利害関係人によって求めている情報が異なること
- 数値には表れにくい定性情報も詳細な分析のためには必要であること
といった意識を持っておかなければなりません。
その意識に基づき、適切な情報を提供することが分析の目的なのです。
そうした計算書類分析をするにあたっての前提を理解していただくことが、今回の記事の目的でした。
参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

