この記事の目的は、以下のとおりです。
・数字の多い決算書を読み解けるようになる
・保護者にわかりやすく、学校の財政状態や収支状態を伝えられるようになる
・視覚的に見やすく、理解しやすい資料を作成できるようになる
学校の経営状態を知りたくて決算書を見たものの、数字が多く、なかなか頭に入ってこないという経験がある方は多いと思います。
その原因の1つとして「数字の多さ」が考えられます。
そこで、決算書に一工夫して、読みやすくする方法を紹介させていただきますので、皆さまのお悩み解決につながれば幸いです。
参考書籍
書籍名:決算書の比較図鑑 見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる
著者名:矢部 謙介
発行所:日本実業出版社
発売日:2021年11月1日
【エクセルで一発】貸借対照表の図解化
貸借対照表は「比例縮尺図」に変換して見る。
まずは、貸借対照表からです。
参考書籍では以下のように紹介しています。
なお、この書籍では貸借対照表のことを「B/S」と呼んでいますが、その説明は省略させていただきます。「貸借対照表=B/S」と機械的に覚えてください。
B/Sを読み解くには、この図に示したように、B/Sを金額と面積が比例するような図に変換するとわかりやすくなります。この図解を「比例縮尺図」と呼んでいます。
P19
学校法人の貸借対照表を比例縮尺図で表すと右のとおりです。
「有形」「無形」「固定」「流動」といった言葉が出てきますが、計算書類の図解化がメインの内容のため、説明は割愛させていただきます。
それでは、実際の貸借対照表の様式を使いながら、変換してみましょう。
数値は適当なものを記載しています。
左側がもととなる貸借対照表で、それを比例縮尺図に変換したものが右側です。
各項目の「本年度末」の欄の数値をもとに作成します。
左側の各項目には「資産の部合計」に占める割合を記載し、比例縮尺図の右側の各項目には「負債及び純資産の部合計」に占める割合を記載しています。
これで完成です。
普通に貸借対照表を見るよりも、視覚的に財政状態を把握できるようになります。
ここから「有形固定資産が資産のほとんどの割合を占めているが、中身は何か?」など、次の興味につながる効果もあると思います。
なお、割合ではなく実際の金額を記載してもかまいません。
比例縮尺図自体は、エクセルの「積み上げ縦棒」グラフを使用することで、近いものが作成できます。 貸借対照表から必要な数値をエクセルに入力し、グラフを選択すれば簡単にできると思いますので、ぜひ勤め先の学校の貸借対照表等で実践してみてください。
【簡単】事業活動収支計算書の図解化
事業活動収支計算書も「比例縮尺図」に変換して見る。
次は事業活動収支計算書です。
事業活動収支計算書も貸借対照表(B/S)と同様に「比例縮尺図」で図解化しましょう。
図解のイメージは右のとおりです。
各項目の内容については、以前の記事で解説しましたので、ここでは省略させていただきます。
右側に収入の項目、左側に支出の項目を配置します。
収入と支出の差額がプラスであれば左側、マイナスであれば右側に収支差額を配置します。
これも、実際の事業活動収支計算書の様式を使いながら、変換してみましょう。 数値は適当なものを記載しています。
各項目の「決算」の欄の数値をもとに作成します。
貸借対照表と同じく、割合を記載して完成です。もちろん実際の金額でもかまいません。
これも視覚的に収支状況を把握できる効果があります。
自分の勤める学校だけでなく、他校とも「比例縮尺図」で比較すると、収支構造のどこに違いがあるか直感的に理解できる効果も期待できます。
エクセルの「積み上げ縦棒」グラフを活用して作ってみましょう。
【一目瞭然】活動区分資金収支計算書の図解化
活動区分資金収支計算書は「ウォーター・フォール・チャート」に変換して見る。
最後は活動区分資金収支計算書です。
この計算書類は、前の2つと異なり「ウォーター・フォール・チャート」という図を使います。
参考書籍では以下のように紹介しています。
ウォーター・フォール・チャートは、期首に保有されていた現金が、営業活動、投資活動、財務活動のそれぞれによってどれだけ増減したのかを示すグラフです。
P39
企業の計算書類を前提とした書籍ですので、学校法人用に「営業活動=教育活動」「投資活動=施設整備等活動」「財務活動=その他の活動」と置き換えて、以下の図解のイメージを見ましょう。
比例縮尺図と異なり、割合ではなく上図のように実際の金額を各項目に記載します。
「▲」はマイナスという意味です。
このイメージ図は、左から右へ見ていきます。
そうすることで、前年度繰越支払資金がどのような要因で増減し、翌年度繰越支払資金となったかを視覚的にとらえることができますので、増えたお金が段々減っていく様子がわかると思います。
実際の様式からの変換は、皆さまの練習用のためにあえて記載しません。
これもエクセルのグラフで簡単に作成できますので、ぜひ練習のために作成してみてください。
まとめ
数字だらけの計算書類は「比例縮尺図」と「ウォーター・フォール・チャート」で図解化して攻略!数字を極力減らして見る。
図解化は自身の理解を深めるだけでなく、他人に伝える際のツールとしても役立ちます。
皆さまの数字力アップのために、様々な計算書類の図解化に取り組んでみてはいかがでしょうか。
お読みいただきありがとうございました。