
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・保護者等から「教育に係るお金」について相談を受けたときのための知識を身につけたい人。
以前に、ファイナンシャル・プランニング技能検定(以下、FP技能検定)の3級レベルの知識は、私立学校事務員の仕事をするうえで身につけておいた方がよいとお話ししました。
とは言っても、具体的にFP技能検定のどの部分が、事務員としての仕事に役立つか、イメージしにくいという人もおられるのではないでしょうか。
そこで今回は、皆さまが「FP技能検定3級の試験を参考にした問題を解きながら、私立学校事務員に必要な基礎知識を身につける」ということをテーマに記事をまとめてみました。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとにより理解が深められるような情報を紹介する形式になっています。
まずは「ライフプランニング」の範囲の中から、「教育資金」に関する部分を取り上げたいと思います。
「住宅」「教育」「老後」は人生3大支出と言われます。
その中でも「教育」については、保護者等から相談を受けるケースが多いです。
保護者等の不安を解消できるように知識を身につけておきましょう。
【第1問】国の教育ローン①
日本政策金融公庫の教育一般貸付(以下、国の教育ローン)の借入限度額は次のうちどれか。
正解:B
学生・生徒一人当たり上限は350万円です。
ただし、海外留学資金等の所定の条件を満たす場合は、上限450万円まで借りることができます。
【第2問】国の教育ローン②
国の教育ローンの返済期間と借入金利の組み合わせで正しいのは次のうちどれか。
正解:A
返済期間は20年以内、固定金利です。
金利の方は、家庭の状況(母子家庭等)により、通常の借入の場合より金利が優遇される場合があります。
【第3問】日本学生支援機構奨学金
日本学生支援機構が実施している奨学金制度の種類について正しい組み合わせはどれか。
正解:C
日本学生支援機構が実施している奨学金制度には、返還義務のない「給付奨学金」と返還義務のある「貸与奨学金」があります。
さらに貸与奨学金は、無利息の「第一種奨学金」と利息付きの「第二種奨学金」に分かれています。
【第4問】国の教育ローンと日本学生支援機構奨学金
国の教育ローンと日本学生支援機構奨学金の関係について正しい組み合わせはどれか。
正解:A
国の教育ローンと日本学生支援機構奨学金は併用できます。
つまり、国の教育ローンを借りながらさらに日本学生支援機構奨学金も借りることができるというわけです。

保護者等には説明する際に、併用できることを伝えると同時に借入金額が大きくならないよう注意喚起をすることも意識しておきましょう。
【第5問】借りたお金の返済方式
借りた教育ローンや奨学金の返済方法として「元利均等返済方式」と「元金均等返済方式」があるが、それぞれの特徴について正しいものはどれか。 ただし、返済期間や金利などの他の条件は同一とする。
正解:B
- 元利均等返済方式:当初の返済額【少】、総返済金額【多】
- 元金均等返済方式:当初の返済額【多】、総返済金額【少】
という特徴があることを覚えておきましょう。
【理解度アップ】それぞれの制度のポイント
ここからは、国の教育ローンと日本学生支援機構奨学金のそれぞれの制度について、さらに知っておいていただきたいポイントについて、制度を比較する形式で紹介したいと思います。
比較するポイントは以下の3点です。
- 金利
- 所得基準
- 成績基準
比較という意味で、「給付」と「貸与」ではそもそもの性質が大きく異なるので、日本学生支援機構の「給付奨学金」の方は比較対象から省かせていただきます。
【金利】(高)国の教育ローン (低)日本学生支援機構奨学金
まず、知っておくべきことは金利の種類です。
以下の2つをおさえておきましょう。
- 利率固定方式
- 利率見直し方式
利率固定方式は、適用された金利が返済終了までずっと変わらない方式です。
一方、利率見直し方式は一定期間ごとに世の中の金利の状況を勘案して、金利が変動する方式になります。
それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット | |
利率固定方式 | 返済金額が変わらないため、 返済計画が立てやすい | 世の中の金利が低くなった場合でも、金利を下げてもらえない |
利率見直し方式 | 世の中の金利が低くなった場合、返済にかかる金利が下がる | 世の中の金利が高くなれば、その分返済金額も上がってしまう |
詳しい数値については頻繁に変動するようなので、ここでは触れません。
ただ、両方の制度についてそれぞれのホームページを確認したところでは、国の教育ローンの方が高い様子です。
日本学生支援機構奨学金は、利率固定方式の方が金利を高く設定しています。

金利は借りる側にとって重要なポイントですので、細かい数字は置いておくとしても、どの程度の水準化は確認しておきましょう。
以前の勤め先で、ある民間企業が実施する教育ローンを利用した方からお叱りの電話を受けたことがあります。
話の内容としては「こんなに金利の負担が重いとは思わなかった」とのこと。
私とは別の担当者がその教育ローンを紹介したのですが、どうやら説明が不足していた様子でした。
単純に「金利〇%」ですという説明だけではなく、上述のように何かと比較して説明することで、相手もイメージしやすくなると思いますので、心がけてはいかがでしょうか。
【所得基準】(厳)第一種奨学金 (中)国の教育ローン (緩)第二種奨学金
次は所得基準です。
前述のとおり、日本学生支援機構の貸与奨学金は「第一種奨学金」と「第二種奨学金」とに分かれており、それぞれ所得基準が異なります。
これもここでは詳細を割愛しますが、ホームページで確認すると以下のような様子でした。
第一種奨学金>国の教育ローン>第二種奨学金
第一種奨学金は、無利息という他と比べて有利な条件である代わりに、その分所得基準が厳しく設定されています。
一方、同じ利息付である国の教育ローンと第二種奨学金とでは、国の教育ローンの方が基準が厳しいといった状況です。
日本学生支援機構奨学金の方は、ホームページで「進学資金シミュレーター」というサービスを提供しているので、そちらを利用して所得基準等を確認するようすすめています。

今の勤め先は高校なので日本学生支援機構奨学金を利用することはできませんが、進学後のお金のことを事務員に相談される保護者も毎年おられますので、こうした基準やサービスをおさえておくといいと思います。
【成績基準】(厳)第一種奨学金 (緩)第二種奨学金 (なし)国の教育ローン
最後は成績基準です。
ここに奨学金と教育ローンの大きな違いが表れてきます。
それは「借りる対象」という違いです。
- 国の教育ローン:保護者
- 日本学生支援機構奨学金:学生
そのため、国の教育ローンには成績基準は設けられておりません。
保護者の人の中には情報が入り混じってしまい、混乱してしまう人がおられますので、事務員としてはこの「借りる対象」を覚えておき、適切に説明できるようにしておきましょう。
参考ですが、高校生が対象の「就学支援金」には成績基準は設けられておりません。
これもあわせて覚えておくことをおすすめします。
就学支援金については、こちらの記事もご参考ください。
まとめ
人生三大支出の「教育資金」について、FP技能検定3級の内容にプラスアルファするかたちで紹介しました。
私の経験上、上述の内容をおさえておけば、基本的な対応は問題ないと考えています。
それぞれの制度自体はもっと細かな条件等がありますので、この記事をきっかけに興味を持った方は調べていただき、さらに知識を増やしていただければと思います。
そうすれば、ご自身が家庭を持った際に使える知識も身につきます。
まずは、この記事を参考にして保護者等の不安を解消し、信頼につなげましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。