
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・私立学校事務員の仕事に不動産や相続の知識が必要なのかという疑問を持っている人。
以前の記事で、ファイナンシャル・プランニング技能検定(以下、FP技能検定)3級の試験範囲の中から私立学校事務員の仕事に役立ちそうなものを紹介しました。
今回はその続きとして、「不動産」と「相続・事業承継」の部分で私立学校事務員として知っておくべきと私が感じたものをピックアップしてみました。
これまでと同様に、FP技能検定3級の試験を参考にした問題を解きながら、必要な基礎知識を身につける形式にまとめています。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとにこの「不動産」と「相続・事業承継」に関連した情報を紹介しています。
「不動産や相続の知識を事務員の仕事で使うことなんかないのでは?」と思っている方も、一読いただければと思います。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】登記事項証明書
不動産の登記事項証明書の交付を請求できる者は次のうちどれか。
正解:C
不動産の登記事項証明書は誰でも閲覧でき、交付を請求することもできます。
【第2問】登記記録の見方
不動産の登記記録において、所有権に関する登記事項が記録されている箇所として正しいものは次のうちどれか。
正解:A
所有権に関する事項は権利部甲区に記録されます。
なお、所在や地番など不動産の物理的概要は表題部、抵当権など所有権以外の権利に関する事項は権利部乙区に記録されます。
【第3問】不動産登記の法的効力
不動産登記に認められていないのは次のうちどれか。
正解:A
不動産登記には公信力は認められていません。
「公信力が認められていない」とは、不動産登記を信用して取引し、トラブルにあった場合でも、原則保護されないということです。
なお、対抗力は認められているため、登記された権利をもって第三者に対抗できます。
【第4問】教育資金贈与①
受贈者の贈与を受けた年の前年分の所得税に係る合計所得金額がいくらを超えると、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けることができなくなるか。
正解:B
「贈与を受ける年の前年」の合計所得金額が1,000万円を超えた場合、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けられなくなります。
「贈与を受ける年」ではないところが、ポイントです。
なお「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受ける場合は、「贈与を受ける年」の所得で判定されます。
【第5問】教育資金贈与②
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けた場合、受贈者1人につき、贈与税が非課税となるのはいくらまでか。
正解:C
教育資金の一括贈与を受けた場合、受贈者1人につき1,500万円までが贈与税の非課税対象となります。
なお、結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合は、受贈者1人につき1,000万円までが贈与税の非課税対象となります。
【理解度アップ登記事項証明書と教育資金贈与
「不動産」と「相続・事業承継」の分野に関する問題をピックアップしましたが、正直なところこの分野で私立学校事務員の仕事に直接かかわる部分は、他の分野と比べてかなり少ないです。
「不動産」については、新たな土地を取得したり校舎等を新築することがあれば、建設会社などとのやりとりの際に知識を活用することもあり得そうですが、私の経験上レアケースだという印象です。
不動産に係る税金についても、基本的に学校法人は非課税扱いになっていますので、勉強するほどではないように思います。
文部科学省のホームページに、学校法人に係る税制優遇のことが掲載されていますので、参考までにリンクを載せておきます。
学校法人に係る税制優遇(文部科学省ホームページへのリンク)
あと「相続・事業承継」については、基本的に「個人」を対象とした内容ですので、仕事において知識を活かす機会はほぼありません。

個人的には、私立学校事務員としての知識というより、イチ社会人として知識として身につけておくべきものだと思っています。
そんななかで、私がこれまでの仕事の記憶を掘り起こして、この2つの分野で仕事に関係がありそうだと感じたものが以下の2つでした。
- 登記事項証明書
- 教育資金贈与
この2つについて、以降私のエピソードなどに触れながら紹介していきたいと思います。
【どんなものかだけでも】登記事項証明書
これは、私が勤めている学校を管轄する都道府県の検査のときのことです。
検査の前にあらかじめ、「この資料を準備してください」という内容が書かれた書面が学校に送られてくるのですが、そのなかに不動産の登記事項証明書があったのです。
検査は基本的に補助金関係を中心にチェックを受け、その他の事項として学校運営などを確認するというものになります。
そのため、「なぜ、不動産の登記事項証明書?」と思いました。
疑問には思いましたが、準備物の中に入っているので準備しないわけにはいきません。 法務局へ行って取得してきました。

これが、設問1のところに関係してきます。
特に身分証なども必要なく、窓口に行って申請用紙を書き、手数料を支払えば誰でも取得できます。
そうして取得した登記事項証明書ですが、普段見る機会がないのでどのように見ればよいかわかりません。
そこで設問2が関係してきます。
設問にあるとおり、登記事項証明書は大まかに3つのパートに分かれています。

厳密にいうと3つではないのですが、ここではひとまず3つと理解しておきましょう。
3つのパートの概要については設問の解説の方を参照していただければと思います。
万が一、検査の際に検査員の人から登記事項証明書の内容について質問を受けて、「知りません」と答えるわけにはいきません。
そうした場面に備えて、登記事項証明書の基本的な知識は習得しておいた方がよいと私は考えています。

ちなみに実際の検査では、登記事項証明書のことについて質問は全く挙がりませんでした。内心ホッとしたのを覚えています。
そのついでとして、登記事項証明書の法的効力もしておけば役立つかなと思い、設問3を紹介させていただきました。
「登記事項証明書にはこういうことが記録されていて、その記録をもって利害関係者に対抗できる」
この程度でいいと思いますので、理解しておきましょう。
【突然の問い合わせも】教育資金贈与
まずそもそも、この「教育資金贈与」とは何なのかというところから入りたいと思います。
国税庁のホームページにパンフレットが掲載されていますので、詳しくはそちらをご参照ください。
「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
(国税庁ホームページへのリンク)
ざっくり言うと、
「一定の手続きを踏んで、おじいちゃんやおばあちゃんが孫の授業料などの教育資金の面倒をみた場合、本来贈与税が発生するところ、1,500万円までは非課税にするよ」
というものです。

とりあえずこんな感じで理解しておけば実務上は問題ないと思います。
この「一定の手続き」に関するところで、学校の方に問い合わせが入ることがあります。
例えば領収書の発行などです。
こうした問い合わせを受けた際に、「なんのこと?」となってしまってはよくありません。
問い合わせてきた側に「この学校、大丈夫?」という不安を与えてしまうかもしれないからです。
そういった事態に備えて、今回この「教育資金贈与」に関する設問を取り扱った次第です。
先述の国税庁のパンフレットもあわせて読んでいただき、知識を身につけておくことをおすすめします。
まとめ
先に述べたとおり今回の分野は、実務上で使うケースがかなり限定的です。
それでも私のエピソードにあるように、都道府県の検査や学校関係者等からの問い合わせ対応といった重要な場面で知識が必要となることがあります。
知っていると、周りの人からの信頼獲得にもつながると思いますので、学習してみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。