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実務12:【基本】私立学校事務員向け簿記3級講座②[現金預金編]

学校事務員のお仕事(実務編)
jimmy
jimmy

この記事の目的は、以下のとおりです。
・現金預金に関する日常の仕訳ができるようになる
・仕訳の基本となる「型」を理解する
・現金預金担当者として知っておくべき知識を身につける

今回は簿記3級の範囲のうち「現金預金」について、学校法人での業務に関わるものに絞って解説します。

簿記の基礎その他の取引
×商品売買帳簿
現金預金試算表
×手形と電子記録債権(債務)伝票と仕訳日計表
有形固定資産決算手続

私の経験から申しあげると、現金預金に関する業務は経理事務の中で最も多くを占めるものです。
簿記は活動を記録・報告する作業ですが、ほとんどの活動において「お金」が関係するからです。

日常業務でよく取り扱うものを例としてピックアップしていますので、その処理方法を学んでいただければと思います。

参考書籍

書籍名:みんなが欲しかった!簿記の教科書 日商3級 商業簿記 第12版

著者名:滝澤ななみ

発行所:TAC出版

発売日:2024年2月26日

【全体図】簿記3級における「現金預金」の範囲

参考書籍の目次から項目を抜粋すると、現金預金の範囲は以下の5項目に分けられています。

現金
×現金過不足
普通預金と定期預金
×当座預金
小口現金

このうち「現金過不足」と「当座預金」は私の知る限り、学校法人での経理業務に必要のない項目のため省略し、」の項目に絞って解説します。

なお、仕訳の解説の際に使用する勘定科目名は、学校法人によって多少異なる可能性がありますので、各自ご確認ください。

現金

まず「現金」という言葉の定義を確認しましょう。

これは、皆さんが「現金」という言葉を聞いてイメージするものと同じと考えてください。
つまり、紙幣や硬貨のことです。
グループは「資産」に分類されます。

簿記3級の学習内容ではこれに加えて「小切手」も含まれますが、私の経験上、学校法人の業務で小切手を扱ったことは一度もありませんので、説明から省きます。

業務内容

学校法人によって多少違いはありますが、私が勤めてきた学校法人での現金業務をまとめると以下の流れになります。

  • 手提げ金庫で現金を管理
  • 入出金があればその都度、出納帳に記録
  • その日の終わりに金種表を作成し、出納帳の残高と一致するか確認
  • 会計ソフトに入出金の情報を入力

②の出納帳は、ノートの場合や所定の様式をプリントアウトしたものの場合などがあります。
入出金日や金額、入出金内容を記載するものです。

③の金種表は、金種(1万円札や500円硬貨など)ごとの枚数と金額を記載するものです。

仕訳

業務内容の④の際に、仕訳が必要となります。
入金、出金それぞれ例を挙げて説明します。

入金

(例)卒業生から卒業証明書の発行手数料500円を現金で受け取った。

まず、例を「現金500円」と「発行手数料500円」に分解しましょう。

次に、グループ分け増減の確認をし、仕訳の左右どちらに記載するかを決めます。

項目グループ増減配置
現金資産増加
発行手数料収入増加

「発行手数料」は「証明手数料」という勘定科目となりますで、仕訳は以下のとおりです。

勘定科目金額 勘定科目金額
現金500証明手数料500

出金

  (例)110円切手を30枚購入し、3,300円を現金で支払った。

これも分解しましょう。「切手購入3,300円」と「現金3,300円」になります。

続いてグループ分け増減の確認仕訳の左右決めをします。

項目グループ増減配置
現金資産減少
切手購入支出増加

切手は「通信費」という「支出グループ」の勘定科目になりますので、仕訳は以下のようになります。

勘定科目 金額 勘定科目 金額
通信費3,300 現金3,300

(補足)現金業務のスリム化

現金による処理のメリットとデメリットとして、以下のことが考えられます。

    メリット   デメリット   
すぐに処理ができる残高管理が面倒
振込手数料がかからない不正が発生しやすい

私は、メリットの効果よりもデメリットの影響の方が大きいと考え、これまで勤めてきた学校法人では極力現金によるやりとりを減らしてきました。

その際にネックとなるのが振込手数料でした。
そこで、以下の2つのやり方でこの問題に対応してきました。

  1. 教職員に給与口座の変更を依頼
  2. 取引金融機関に手数料免除対象の拡充を交渉

金融機関は例えば「同一支店内の振込は手数料不要」という対応をとっていることが一般的です。
そこで教職員に、その手数料不要の条件に合う金融機関の支店で口座開設するよう依頼しました。

また、学校のお金をメインで預けている金融機関の担当者に「同一支店だけでなく、別の支店宛の振込でも手数料免除にしてほしい」と粘り強く交渉し、承諾を得ることができました。

関係者の協力もあって、現金のやりとりは減らすことができました

簿記の内容とは直接関係ありませんが、日々の仕訳を通じて少しでも手間が減らせたりリスクが軽減できることはないかと考えることも担当者としては必要です。

普通預金と定期預金

現金と同じく、私たちが日常で使っているものと同じものをイメージすれば問題ありません。

ただし、ほとんどの学校法人が、日々の入出金に使用する「メインとなる口座」以外に学費の入金を受けるための口座など、用途別に預金口座を使い分けています
グループは「資産」に分類されます。

業務内容

インターネットバンキングや通帳記帳で日々の入出金状況を把握し、それらを会計ソフトに入力します。その入力時に仕訳作業が発生します。

仕訳

これも入金、出金それぞれ例を挙げて説明します。

入金

(例)学費受入用口座に授業料100,000円が入金された。

まずは、分解です。「学費受入用口座100,000円」と「授業料100,000円」になります。

そしてグループ分け増減の確認仕訳の左右決めです。

項目グループ増減配置
学費受入用口座資産増加
授業料収入増加

授業料はそのまま「授業料」という「収入グループ」の勘定科目になりますので、仕訳は以下のようになります。

勘定科目金額 勘定科目金額
学費口座100,000 授業料100,000

出金

(例)電気代200,000円が支払用口座から口座引落された。

電気代200,000円」と「支払用口座200,000円」に分解し、グループ分け・増減確認・左右決めです。

項目グループ増減配置
電気代支出増加
支払用口座資産減少

電気代は「光熱水費」という「支出グループ」の勘定科目になりますので、仕訳は以下のようになります。

勘定科目金額 勘定科目金額
光熱水費200,000支払口座200,000

その他のケース

(例)定期預金口座を開設するため、普通預金口座から1,000,000円お金を移した。

勘定科目金額 勘定科目 金額
定期預金1,000,000普通預金1,000,000

定期預金も普通預金も同じ「資産」グループです。
今回は定期預金口座の残高を増やすケースですので、左側に「定期預金」右側に「普通預金」を記載します。

仮にこの定期預金が満期になり、お金が普通預金口座に戻った場合は以下の仕訳になります。

勘定科目 金額 勘定科目 金額
普通預金1,000,000定期預金1,000,000

(補足)決済性普通預金口座

普通預金口座のなかでも「決済性普通預金口座」という種類があります。
これは「利息がつかない普通預金口座」と理解していただければ問題ありません。

利息がつかない代わりに、金融機関が破綻した場合、その口座の全額が保護されます
通常の普通預金口座は「元本1,000万円までとその利息等」しか保護されません。

私は、学校の資金のうち、特に大切な資金についてはこの「決済性普通預金口座」で管理するようにしています。

経理・会計を担当するうえで知っておいた方がよい情報と思い、紹介させていただきました。

小口現金

参考書籍では以下のように解説しています。

日常発生する細かい支払いに備えて、各部署の担当者に一定額の現金を渡し、各部署で発生した少額の支払いについてはこの現金で行うということがあります。この場合の各担当者に渡された現金を小口現金といいます。

P96

経理・会計担当部署が入出金の管理をする現金=現金
経理・会計担当部署以外入出金を管理する現金=小口現金

と理解すれば問題ありません。
仕訳は、勘定科目が「現金」から「小口現金」に変わるだけのため、詳しい説明は省略します。

まとめ

<入金>
(現金・普通預金)/収入に関する勘定科目

<出金>
支出に関する勘定科目/(現金・普通預金)

この2つの基本の型をマスターすれば、日常業務に関する仕訳の80%は処理できる!

私は簿記の知識が全くないまま、経理・会計担当部署に配属となったため、業務の遂行に悪戦苦闘の日々を過ごしました。

そのときの経験から、まずは「お金が増えたら左、減ったら右」を何も意識せずに自然と仕訳できるようになることが、大切であると考えています。

今回の記事の内容をもとに、経理初心者の人は体に染みつくほどこの基本の型を反復していただければと思います。
参考になれば幸いです。

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