この記事は、こんな人を対象としています。
・私立学校の事務員で、学校法人会計基準を学ぼうと考えている方
・私立学校の事務員になる予定、または目指す方
・以前に、学校法人会計基準を学んで挫折した方
・学校法人会計基準についてとりあえず要点だけ知りたい方
これまで、数回の記事に渡って学校法人会計基準について解説してきました。
今回は、それらの記事の中からポイントだけ選び、まとめた総集編のような記事となっています。
詳細は各記事をお読みいただくとして、まずは要点だけ整理するために活用いただければと思います。
制定経緯
結論:行政(国や地方公共団体)による私学助成の実現のために制定
「私立学校法」
私立学校が「公的な存在」であることの法的根拠
「私立学校振興助成法」
公的な存在である私立学校への財政的援助のための基本的ルール
「学校法人会計基準」
適正な財政的援助のために学校法人が守るべき会計処理ルール
私立学校に勤める者としては、日本の教育分野における私立学校の重要性を意識する必要があります。
学校法人会計基準の制定経緯を通じて、その重要性を理解し、日々の業務を遂行しましょう。
目的と基本原則
意義:学校法人共通の会計処理のルール
目的:①行政による適切な財政的援助(私学助成)の実施
②情報公開、透明性の確保
補助金を交付する行政(国や地方公共団体)だけでなく、学費を納める生徒や保護者も意識する必要があります。
業務で使用するお金について、それら関係者に「説明できるか」を考えながら業務に取り組みましょう。
- 真実性の原則
- 複式簿記の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
生徒や保護者からすれば、会計担当かそれ以外かは関係ありません。「学校事務員」として見られていますので、「自分は関係ない」と考えずにこれらの原則は押さえておきましょう。
資金収支計算書
資金収支計算書は「すべてのお金の出入りを記録・報告する」家計簿
まずは「資金収支計算書って何?」という点は理解しておきましょう。
支払資金の管理(経営の安全性)
真実性の証明
そして、その役割は2つありました。これらの観点から、自分が勤める学校の経営状態を把握できるようになりましょう。
事業活動収支計算書
学校法人の収支の均衡(バランス)状態を把握するものさしの役割。
「教育活動収支」「教育活動外収支」「特別収支」の3つの目盛りで構成。
学校の経営状態に関するニュースなどで取り上げられるのは、ほとんどこの「事業活動収支計算書」に関わる数値です。
これらの役割や構成を理解しておきましょう。
- 経常収支
- 基本金組入前当年度収支
- 当年度収支
あわせて、これら3つの「見るべきポイント」も押さえておきましょう。
特に基本金組入前当年度収支は、経営状態を見るための重要ポイントの1つです。
貸借対照表
役割:財政状態の健全性を映し出す「鏡」
- 「資産」「負債」「純資産」の3つのエリアで構成
- 「資産」の額=「負債」+「純資産」の額でバランス
校舎やグラウンド、預貯金など学校がどんな資産を保有していて、その資産をどのような財源で手に入れたかを映し出しています。
- 長期の視点:「純資産」と「負債及び純資産の部合計」の額を比較
- 短期の視点:「流動資産」と「流動負債」の額を比較
資金収支計算書や事業活動収支計算書は、1年間の活動のみが表されますので、「偶然この年だけ経営状態がよかった」ということがあり得ます。
しかし、貸借対照表はこれまでの累積結果を映し出しますので、そういったことはありません。
長期・短期両方の視点から、財政状態の健全性をチェックしましょう。
全体像
資金収支計算書、事業活動収支計算書、貸借対照表はつながりを持っています。
つながることで果たす役割がありますので、理解しておきましょう。
「安全性」の観点
資金収支計算書が「過程(根拠)」、貸借対照表が「結果」の関係
まずは、資金収支計算書と貸借対照表のつながりです。
「お金」は、学校が活動するうえで最も重要なものの1つです。
その大切さがこの「つながり」に結びついています。
「永続性」の観点
事業活動収支計算書が「過程(根拠)」、貸借対照表が「結果」の関係
続いて、事業活動収支計算書と貸借対照表のつながりです。
こちらも「収支の均衡」という重要なポイントに関わる「つながり」になります。
活動区分資金収支計算書
資金収支計算書を以下の3つの活動区分に分けた構成
- 教育活動による資金収支
- 施設整備等活動による資金収支
- その他の活動による資金収支
資金収支計算書を3つの活動区分に分けた計算書類が「活動区分資金収支計算書」でした。
チェックポイント:教育活動資金収支差額のプラス・マイナス
そして、その3つの活動区分のうち「教育活動資金収支差額」に注目し、プラスかマイナスかを確認することが、重要でした。
なぜなら、この学校の本業ともいうべき教育活動で資金が流出している状態では、将来資金不足となり、経営破綻になる恐れがあるからです。
その兆候を見逃さないよう、このポイントは必ずチェックしましょう。
まとめ
駆け足になりましたが、皆さまが知識を整理するためにお役立ていただければ幸いです。
お読みいただき、ありがとうございました。