
この記事は以下のような人を対象としています。
・私立学校事務員として働くうえでの基礎知識を身につけるために、役立つツールを教えてほしい。
これまで、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)が毎月発行する「月報私学」の各月ごとの活用法を紹介してきました。
今回は、その続きにあたる8月号の活用法の紹介になります。
8月号は8月1日に発行されるため、現時点では内容が不明ですが、例年8月号に掲載されている記事というものがあります。
そうした記事の中で、私が毎年参考にしているものを3つピックアップしたいと思います。
その3つは、以下のとおりです。
- 私学事業団 融資にかかるQ&A
- 短時間労働加入者にかかるQ&A
- 「資格取得報告書」等を提出する際の注意点
「短時間労働加入者」については、令和4年(2022年)度から令和6年(2024年)度の間に改正があったため、この間の月報私学にQ&Aが掲載されておりました。
そこから勘案すると、今年度の8月号には掲載されていない可能性がありますが、知識の整理のためにこれまでの情報をまとめたいと思います。
その他の記事についても、前述のとおり本年度の8月号の内容は現時点でわかりませんので、掲載されていない場合もあります。
その点はご容赦ください。
私学事業団 融資にかかるQ&A
私学事業団の融資については、月報私学5月号にも掲載されており、以前の記事で紹介しました。
内容的には5月号で紹介している内容のうち、問い合わせが多いものをピックアップしたものが、8月号に掲載されているというイメージです。
従って8月号を読むだけでも、融資制度の概要はつかむことができると思います。

私は8月号のQ&Aの方もプリントアウトしておいて、5月号とセットで保管しています。
ちなみに以下の2点のように、8月号のみに掲載されているような内容もあります。
- 連帯保証人
- 融資までの手続き期間
今年度の8月号にも掲載されていた場合はチェックしておきましょう。
こうした融資関連の知識を身につけておく意義は2つあると考えています。
- 私立学校事務員として働く上での「資金調達のための基礎知識」
- 私たち自身の「社会人としての基礎知識」
2の活用例としては、住宅ローンや教育ローンを検討する場面が考えられます。
金利や返済方法、保証人といった用語に関する知識がなければ、思いもよらない不利益を被ることもあるわけです。
例えば前述した「連帯保証人」。
「保証人」と「連帯保証人」の違いを理解しておかないとトラブルになる可能性があります。
少し横道に逸れますが、マメ知識として知っておくと役に立つと思いますので、「保証人には認められているが連帯保証人には認められていない」という権利を3つ以下に挙げておきます。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
- 分別の利益
「催告の抗弁権」とは「先に借りた本人に取り立てをしろ」という権利とここでは理解してください。
保証人の場合、この抗弁権が認められているので、もしお金を貸した人から「払って」と言われても上述のように言い返すことができます。
逆に連帯保証人の場合だと、この抗弁権が認められていないので、貸した方からすれば本人、連帯保証人どちらからでも取り立ててよいことになります。
「検索の抗弁権」は「先に借りた本人から取れるだけ取ってからしか払わない」という権利とイメージしてください。
例えば、借りた本人が100万円の貯金を持っているとすると、そのことを貸した人に伝えて「その100万円を取ってからでないと払わない」と言う権利があるということです。
この権利も連帯保証人には認められていません。
最後は「分別の利益」です。
これは一言で言うのが難しいので、例を以下に挙げます。
AさんがBさんから100万円借りて、CさんとDさんがそれぞれAさんの保証人になったとします。
この場合、CさんとDさんは各自50万円ずつ保証すればいいということになります。
これが分別の利益です。
逆にC,Dさんが2人とも連帯保証人だと、50万円ではなくそれぞれ100万円全額を保証することになります。
このように「連帯保証人」は、借りた本人とほぼ同じ責任を負っていると理解していただければ問題ないと思います。

話が長く逸れてしまいましたので、融資の件に戻ります。
私学事業団の融資の場合、理事長が「連帯保証人」になることが求められています。
連帯保証人の性質が理解できていないと、この「連帯保証人になる」ということの責任の重さが理解できないのではないでしょうか。
そしてそれは前述のように、自身が住宅ローンや教育ローンを検討する際にも関係します。
きちんと「連帯保証人」の性質を理解したうえで、親や兄弟姉妹等の承諾を得ることができるように準備しておくべきです。
こうした状況を想定して、この「融資制度」に関心を持つことをすすめているわけです。
一度記事を読んで、わからない単語を調べるなどしてみてはいかがでしょうか。
短時間労働加入者にかかるQ&A
こちらについては、ことの経緯を先に整理したいと思います。
まず、2016(平成28)年に私学共済に加入できる人の要件が見直されました。
その見直し後の要件は以下のとおりです。
- 所定労働時間が週20時間以上
- 月額賃金8.8万円以上 (年収106万円以上)
- 雇用期間1年以上の見込み
- 学生でないこと
- 教職員 501人以上の学校法人等
見直し前の要件は割愛しますが、これにより私学共済に加入できる対象が広がりました。
対象となったのは主に「短時間労働加入者」に該当する人たちです。
そして、2022(令和4)年に上述の「雇用期間1年以上」が「2ヶ月以上」、「教職員501人以上」が「101人以上」引き下げられ、さらに2024(令和6)年には「101人以上」が「51人以上」に引き下げられました。

見直し前の基準だと要件に該当しないため、私学共済に加入できず、自分で国民健康保険に加入する必要がありました。
そのころは、非常勤講師の方から「私学共済に入りたい」とよく言われた覚えがあります。
こうした要件の緩和により加入者が増えたため、学校側から「このケースは短時間労働加入者に該当するのか」という問い合わせが増加したことによりQ&Aが掲載されたと推察されます。
そして前述のとおり、私学共済に加入したいという非常勤講師の方は多いという印象です。
特に高校事務室で働いていると、直接相談を受けるケースも少なくありません。
そのような場合に備えて、準備しておいた方がよいでしょう。

例によって私はこのページをプリントアウトして、いつでも見られるように準備しています。
また、これは学校の収支に関わることでもあります。
私学共済の掛金は、従業員と学校法人の折半で支払う必要があるからです。
そのため、加入者が1人増えると学校の負担もその分増えることになります。
余計なという言い方は適切ではないかもしれませんが、正しく要件を理解しておかなければ、余計な掛金を支払うことにもなりかねません。
適切な対応がとれるように知識を身につけておきましょう。
「資格取得報告書」等を提出する際の注意点
私学共済の加入者になるためには、「資格取得報告書」を提出する必要があります。
さらに、同じ学校法人が設置する大学から高校へ異動となった場合には「所属学校等変更報告書」の提出が必要になります。
これらの書類を提出する際に、ありがちなミスをピックアップして紹介するにかたちになっています。

私は一度読んで、自分の業務マニュアルやチェックリストに反映させて、以降の年度は特に変わっていないかを確認しています。
ボリュームが少ないので、それほど手間にはなりません。
あとは、新たに私学共済事務の担当者となった事務員に対してプリントアウトしたものを渡しておくといった指導にも活用しています。
参考にしていただければと思います。
まとめ
少し本題とは離れた内容になってしまった部分もありますが、融資や私学共済にかかるお役立ち情報を紹介させていただきました。
直接の担当業務のことだけを考えてしまうと、どれも関係ないと捉えてしまい、読み飛ばしてしまうかもしれません。
しかし、融資制度のところで述べたとおり、自分のプライベートも含めて情報に触れると、また違った印象を受けることになります。
分量もさほど多くはありませんので、ぜひ「関係ない」と思う前に一読してみることをおすすめします。
そうした積み重ねが、大切だと考えています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。