
この記事は以下のような人を対象としています。
・私学共済の「積立貯金」について、どんな制度で、どんな人に向いているか知りたい。
私立学校に勤めている人が加入できる「私学共済」には、健康保険や年金などの社会保険的なものだけでなく、加入者の日常生活をよりよくするための「福祉事業」というものもあります。
以前の記事でも少し紹介しましたので、そちらもご参照ください。
今回はその「福祉事業」のなかでも「積立貯金事業」について紹介したいと思います。
この「積立貯金事業」は申し込みが年2回で、その時期も限定されている特徴があり、まさにこの4月が2回のうちの1回に当たる時期になります。
そこで、申し込みの判断材料にしていただければと考え、このタイミングにあわせて記事を書いた次第です。
私自身、この積立貯金を利用しており、また積立貯金にかかる事務も担当していますので、その経験から、おさえておくべきポイントをピックアップして紹介します。
皆さまの参考にしていただければと思います。
【どんな内容?】積立貯金事業の概要
まずは、どんな事業か簡単に見ておきましょう。
見るポイントは以下の3つです。
- 申込方法
- 積立方法・払戻方法
- 解約方法・中断方法
申込方法
まずは申込方法ですが、前述のとおり年2回しか申し込みができません。
申込時期になると、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)から学校にパンフレットが届きます。
学校の私学共済事務担当者(以下、担当者)がそのパンフレットを配布するなどして、教職員に周知します。
その際、あわせて申込締切日もアナウンスされます。

パンフレットには私学事業団への申込期日が記載されていますが、それは私学事業団に申込書類が到着しなければならない期日なので、学校はその期日に間に合うように独自の学内締切日を設定します。
希望者は、申込書類を担当者から受け取り、積立金額など必要事項を記入し、「印鑑」を所定の位置に押して、担当者に提出します。

この「印鑑」がポイントです。スタンプ印でなければどんな印鑑でもいいのですが、どの印鑑で押したかわかるようにしておきましょう。
貯金を下ろすときに、申込時に押した印鑑が必要になりますが、どの印鑑を使ったかわからないという人が大変多いです。
以上が申込の概略です。
積立方法・払戻方法
申込が完了したら、あとは月々の給料やボーナスから自分が申込時に設定した金額が自動的に差し引かれて、私学事業団に貯金されていきます。

実際は、担当者が給与システム等に申込者各自の積立金額を登録して、給与や賞与から差し引くように設定しています。
申込者からすれば、特に手間がかからないので「自動的に」天引きされているという感覚です。
払い戻しは、所定の書類を担当者経由で私学事業団に提出して行います。
この払い戻しにも期日があり、毎月25日に私学事業団必着となっており、25日までに到着した分が、翌月の20日に「学校」へ送金されます。

ここも注意が必要です。払い戻しを申請した本人ではなく、学校に一旦お金が送金されます。そこから、本人へ送金されることになります。
20日に本人の預貯金口座にお金が入ってくると勘違いしている人とたまに揉めます。
以上が積立方法・払戻方法についてです。
解約方法・中断方法
最後は解約・中断についてです。
解約も中断も前述の払い戻しと同じく、毎月25日が期日となっています。
解約の場合、貯金元本と利息の合計額が学校に送金されます。その後、学校から本人へ送金される流れになります。
一方中断の方は、その後の状況によって異なります。
「やっぱり解約します」となれば、前述の解約の流れになりますが、「やっぱり積立を再開します」という場合、すぐには再開できません。

厳密には再開のことを「復活」と言います。以降、「復活」で統一します。
復活は新規申込のタイミングと同じく、年2回に限定されています。
タイミングを逃すと、次のチャンスは半年後になりますので、注意が必要です。
以上が解約方法・中断方法についてです。
共済積立貯金の良いところ・悪いところ
以上のような概要を踏まえたうえで、良いところと悪いところを見ていきましょう。
ある人から見れば「良いところ」でも、別の人にとっては「悪いところ」になる可能性があります。
そのあたりを理解して、「自分にとってはどうか」を考えながら読んでいただければと思います。
紹介するのは以下の2点です。
- タイミングが限定的
- 利率
タイミングが限定的
前述の手続きで紹介した内容も含めて、各種手続きを表にすると以下のとおりです。
毎月 | 年2回 |
---|---|
払い戻し | 新規申込 |
中断 | 復活 |
解約 | 金額変更 |
払い戻しを例に考えてみましょう。
お金が必要になった場合でも、最短で1カ月程度自分の手元にお金が入ってくるのを待つ必要があります。
皆さんの印象はどっちですか。
- 「金融機関に預けていたらいつでも引き出せてしまうので、引き出しにくい方がいい」
- 「必要な時に自由に引き出せるようにしておきたい」
実際こんなやりとりがありました。

払い戻しの期日は20日だから、今日(20日)手続きしたら間に合いますよね。

20日に私学事業団必着ですから、今日じゃ間に合わないですよ。

子どもの進学費用がいるから困るんですけど。
来月にはお金が必要なんです。

いや、どうしようもないです・・・。
当然、こちらではどうにもできないので「無理です」の一点張りで対応したのですが、教員の方は大層ご不満な様子でした。
その後、その教員は積立貯金を解約しました。
一方で私は、機械的に給与から差し引かれて、すぐには引き出せないという「自分の意思が反映しにくい」という仕組みが自分に合っていると感じて、この積立貯金を継続しています。
この他にも、積立金額が半年に1回しか変更できないので、出費がかさんだ月でも容赦なく設定金額が天引きされます。
その月々の状況を考えながら貯金したい人には厳しいですが、とにかく一定額を強制的に貯金したいという人にはいい仕組みとも言えます。

その時の状況によるとは思いますので、どっちがいいか悪いかではなく「どちらかと言えば○○」という具合に、いろんなケースを考えてみて全体として考えてみることをおすすめします。
利率
利率は、令和7年4月1日から年利0.35%となっています。
半年複利で利息が付いていきます。
ここ近年は、毎年利率が変動しているという状況です。
これを高いと見るか低いと見るかで印象が変わります。
この記事を執筆している令和7年3月時点では、1年定期の利率は大手の金融機関で0.2~0.3%といったところです。
「定期預金より少し高い」と考える人もいれば、「他の金融商品と比べて低い」と考える人もいると思います。

これも実際、私の周りでは「個人向け国債の方が利率がよさそうだから、積立貯金を解約してそっちにしよう」と動いている人が何人かいます。
私は金融のプロではありませんので、どっちがいいとは言えませんが、この利率に対する皆さまの印象をもとに、お金の預け先としてかどうかを考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
私立学校事務員、特に高校事務員は、経理・会計から共済事務も含めた給与関係など、様々な業務を経験する立場にあります。
当然、私学共済に関する知識は社会保険だけでなく、福祉事業に関するものも含めて理解しておく必要があります。
前述のように、4月は積立貯金の申込等の時期ですので、教員等から積立貯金に関する質問を受ける機会も増えます。
その際には、概要だけでなく良いところや悪いところまで含めて明確に答えられるように準備しておきましょう。
この記事が、そのお役に立てれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。