
この記事は以下のような人を対象としています。
・私立学校事務員として働くうえでの基礎知識を身につけるために、役立つツールを教えてほしい。
これまで、日本私立学校振興・共済事業団(以下、私学事業団)が毎月発行する「月報私学」の各月ごとの活用法を紹介してきました。
今回は、その続きにあたる2月号の活用法の紹介になります。
2月号は2月1日に発行されるため、現時点では内容が不明ですが、例年2月号に掲載されている記事というものがあります。
そうした記事の中で、私が毎年参考にしているものを3つピックアップしたいと思います。
その3つは、以下のとおりです。
- 大学・短期大学・高等学校の財務状況
- 私立高等学校入学志願動向
- 私学共済制度の加入者資格Q&A
私の個人的な意見として、この2月号が月報私学の中で最も重要な情報が詰まっている号だと思っています。
その理由は、「大学・短期大学・高等学校の財務状況」と「私立高等学校入学志願動向」が掲載されているからです。
そういった私の思いも含めて、記事をご覧いただければと思います。
ご参考になれば幸いです。
なお、前述のとおり本年度の2月号の内容は現時点でわかりませんので、掲載されていない場合もあります。その点はご容赦ください。
【大学・短期大学・高等学校の財務状況】
毎年、私学事業団が実施している「学校法人基礎調査」
この調査では、各学校法人の直近の決算データも収集されています。

大学や短期大学の場合、生徒数や教職員数など経常費補助金の算定基準となる重要な数値もこの調査で集められていますよ。
この決算データを集計して、学校法人単位と学校単位の財務状況を公表している、というのがこの記事の内容になります。
もう少し具体的に言うと、
- 学校法人単位
大学法人、短期大学法人、高等学校法人の3種類の法人について、それぞれ「事業活動収支差額比率」「運用資産と要積立比率」の値を5年分掲載 - 学校単位
大学、短期大学、高等学校の3つの学校種について、それぞれ「事業活動収支差額比率」の値を5年分掲載
といった感じです。
月報私学でも少し触れられていますが、参考までに「大学法人」と「大学」の違いを例を挙げて説明しておきます。
- A学校法人:A大学、A短期大学、A高等学校を設置
- B学校法人:B短期大学、B高等学校を設置
この場合、A学校法人のことを「大学法人」といい、A大学を「大学」と言います。

幼稚園をスタート、大学をゴールとして考えると、設置している学校のなかで最もゴールに近い学校種が、「〇〇法人」の「〇〇」部分に入ると思ってもらったらいいと思います。
そして同様に、B学校法人は「短期大学法人」、A短期大学、B短期大学はそれぞれ「短期大学」、A高等学校、B高等学校はそれぞれ「高等学校」として決算データの集計の対象となります。
従って、同じ「事業活動収支差額比率」であっても、先ほどの例で言うと、
- A学校法人の事業活動収支差額比率:A学校法人全体の比率
- A大学の事業活動収支差額比率:A大学単体の比率
といったように異なるというわけです。

A大学の事業活動収支差額比率が低くても、A短期大学とA高等学校が好調であれば、A学校法人としては事業活動収支差額比率が高いということもあり得ます。
このあたりの違いを理解して、記事を読む必要があります。
では、具体的にどこをチェックした方がよいか。
私の個人的な意見としては、「学校種別」の事業活動収支差額比率の傾向を確認することをおすすめします。
法人種別ではなく学校種別です。
これは、新任からベテランまで全ての私立学校事務員に共通しておすすめしたいポイントです。
- 18歳人口の状況
- 学校種ごとの入学志願者動向
- 学校種ごとの収支状況
この3点は私立学校事務員として頭に入れておくべき数字だと私は考えています。

自分の勤め先を取り巻く環境を把握するための重要な数字です。
特に、「事業活動収支差額比率がマイナス」の学校数を掲載している箇所はチェックしておきましょう。
ニュースなどでも取り上げられることがある数値ですので、保護者や取引先も知っている可能性が高いからです。
だから、「赤字の大学が増えたんだってね」と話題を振られて、最低でも「ここ数年は続いてますね」とおおよその数字を示しながら説明できるくらいの準備しておく必要があります。
ステークホルダーの関心にも応えられる準備をする。
こうした「誰かに説明すること」を意識して記事を読むと、情報が頭に残りやすいと思います。
逆に、やってはいけないことも1つお伝えしたいと思います。
それは、自分の勤め先との比較です。
もっと詳しく言うと、全国平均より上または下というだけで、判断しないということです。
月報私学の事業活動収支差額比率は、学校の規模を加味せず、単純に全国の大学や短期大学、高等学校の事業活動収入と事業活動支出を、学校種ごとに合計して算出したものになります。
従って、規模の大きな学校の影響を受けやすい。
そのような状況で算出された数値と、自校の数値と比較して「全国平均より上だから問題ない」とか「全国平均より下だから危ない」と言ったところで、特段意味はないと思っています。

「うちの学校、全国平均以下だからもうだめだ」といった発言をしないだけでなく、そういった発言をする人と距離をおくことも大切です。
経験上、そういう人とはあまり関わらない方がいいという印象ですので。
自校との比較をするのであれば、私学事業団が発行している「今日の私学財政」を入手して、そちらに掲載されている数値を使いましょう。
月報私学で把握するのはあくまで「傾向」
そのことを意識して読むことをおすすめします。
【私立高等学校入学志願動向】
大学や短期大学の入学志願動向は、令和7(2025)年度10月号の記事に掲載されていましたが、今回の記事はその高等学校版になります。

大学、短期大学の入学志願動向は、掲載される号がここ数年毎年異なっているので、このブログでは触れなかったんですよね。
前述のとおり、この入学志願者動向も私立学校事務員として把握しておくべき数字の一つです。
収支状況と同様に、
- 自校を取り巻く環境の確認
- ステークホルダーの関心への対応
を意識して情報にあたるようにしましょう。
そして、私がチェックすべきと思っているポイントは以下の2点。
- 入学定員充足率
- 直近10年の入学定員充足状況
まずは、この2点をチェックして基本的に状況をおさえておきましょう。
あとは、月報私学2月号発行のタイミング前後で、おそらく入学志願動向の最新版も私学事業団のホームページに掲載されるはずですので、詳細はそちらで確認するようにします。
ここでも大切なのは、あくまで傾向をつかむことが目的ということ。
決して、公表された数字を自校と比較して一喜一憂しないようにしましょう。
加えて高等学校の場合、「高等学校等就学支援金の所得制限撤廃」という大きな制度変更がありました。
所得制限撤廃についてはこちらの記事もご参照ください。
まだ、今回の入学志願動向の数値には影響を与えていないかもしれませんが、今後の「私立高等学校の授業料実質無償化」の動きとあわせて数字の変化を見ることも重要になってきます。
まずは、現在の傾向を把握するように情報をアップデートしておきましょう。
【私学共済制度の加入者資格Q&A】
最後は私学共済関連です。
この時期、ほとんどの学校が新年度に向けて、新たな教職員を採用していると思います。
その採用において、「この人は私学共済に加入できるのか」という点は、担当者として確認が必要です。

担当でなくても、社会保険の基礎知識として知っておくべきことだと個人的には思っています。
特に近年は短時間労働者の私学共済加入について、様々な制度変更がありました。
専任教職員であれば、基本的に問題なく加入できると思いますが、非常勤講師の人のように「短時間労働者に該当しそうな人」の判断がややこしくなっているというのが実感です。
非常勤講師の人にとっては、私学共済に加入できないと、自分で国民健康保険に加入しなければならなくなるため、手続きの手間と保険料の全額自己負担という問題が生じてしまいます。
この短時間労働者に関する制度変更の前の話ですが、以前の勤め先で、私学共済加入の条件がきちんと伝わっておらず、トラブルとなったことがありました。
本人は加入できるものと思っていたところ、担当コマ数が少なく、加入の条件を満たさなかったのです。

「私学共済に加入できるから、別の学校の採用を断ってきたのに」ということで、かなり不満のご様子でした。
このようなことを防ぐために、あいまいな返事をせずに適切に回答できるよう、こうした変更に関する知識を身につけておく必要があるわけです。
そうした点も踏まえて、抜け漏れがないように記事をチェックしておきましょう。
まとめ
前述しました「私が私立学校事務員として勤めるうえで押さえておくべきと考えているポイント」の3つのうち2つが、例年この月報私学2月号には掲載されています。
そういう意味で表題に「超重要」とつけさせていただきました。
私立学校を取り巻く環境は刻々と変化しています。
まずは「人数」と「お金」を切り口にその環境変化をつかむようにしてみてはいかがでしょうか。
月報私学にはそのための情報が詰まっていると思いますので、活用しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。











