
この記事は以下のような人を対象としています。
・監査に関する基本知識や監査対応について知りたいと思っている人

「監査」っていう言葉をよく聞くけど、いまいちどんなものかピンとこないよ。

異動して初めて監査に対応することになったけど、どんな準備をすればいいんだろう。
年が明けると、年度末はもう目の前。
そこには「決算」という一大イベントがまちかまえています。

経理会計担当の事務員からすると、毎年現れるラスボスですよね。
その決算と切っても切れない縁があるのが「監査」
この監査を受けることで、学校法人の適正な運営が確保され、利害関係者への説明責任を果たすことにつながるわけです。
しかし、この「監査」という言葉、耳にする機会が少なくないにも関わらず、いまいちどういうものかイメージしにくいと感じる人が多いように思います。

私立学校事務員として働く年数が短い人や監査と縁が薄い部署に所属する人などは特にです。あと教員もですね。
だから、そういった人に「監査で問題になる」とか「監査対応で必要」といった説明をしても、「何のこと?」という表情をされることが多いです。
ただ、学校法人に勤める以上、必要最低限の監査に関する知識は身につけておく必要があります。
そこには私立学校事務員にとって重要な「私立学校法」という法律が関係しているからです。
そのため、

監査?お金に関することでしょ?経理会計担当者だけ理解しておけばいいんじゃない?
といった考えはあらためておく必要があります。
そこでこの記事では、私が私立学校事務員としておさえておきたいと考える「監査に関する基本事項」についてまとめてみました。
内容は以下のとおりです。
- 私立学校における監査の法的根拠
- 私立学校法改正と監査
- 日ごろからできる監査準備3選
参考にしていただければ幸いです。
【ここだけでも】私立学校における監査の法的根拠
まずはそもそもの「監査」とはということについてです。
私立学校における監査とは、前述したとおり、学校法人の適正な運営の確保と利害関係者への説明責任の履行を目的としています。
その目的達成のために、私立学校法に基づいて実施される法定のチェック機能です。
では具体的にどう「法定」されているか私立学校法の条文を確認しておきましょう。
第百四条 計算書類等は、文部科学省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。
「e-GOV法令検索より引用」より引用
2 前項の規定にかかわらず、会計監査人設置学校法人においては、計算書類及びその附属明細書については、文部科学省令で定めるところにより、監事及び会計監査人の監査を受けなければならない。
このように、私立学校は監査を受ける義務があることが法律によって定められているわけです。
ではこの監査、一体誰が行うのでしょうか。
そこには2種類の登場人物がいます。
- 監事
- 会計監査人
そして、それぞれが行う監査は以下のとおりです。
- 監事:業務監査・会計監査
- 会計監査人:会計監査
これも私立学校法に定めがありますので確認しておきましょう。
第五十二条 監事は、次に掲げる職務を行う。
一 学校法人の業務及び財産の状況並びに理事の職務の執行の状況を監査すること。
(中略)第八十六条 会計監査人は、第五節の定めるところにより、第百三条第二項に規定する計算書類及びその附属明細書並びに財産目録その他の文部科学省令で定めるものを監査する。
「e-GOV法令検索より引用」より引用
多くの人がイメージしている監査が「会計監査」だと思います。

だから「監査は経理会計担当しか関係ない」といった意識を持つ人が多いんでしょうね。
確かに、前出の第百四条や第八十六条は計算書類等への監査について定めており、第五十二条にも「財産の状況」といった文言が見受けられます。
これだけ見れば、「監査=会計監査」というイメージを持ってしまうことも理解できます。
ただ、第五十二条には「学校法人の業務」や「理事の職務の執行」も監査の対象であることが定められています。
「学校法人の業務」とはすなわち、私たち私立学校事務員が行う業務のこと。
そして「理事の職務の執行」も結局のところ、理事の命を受けて実行する我々の業務のことを指していると考えられます。
だから、経理会計担当以外の部署の人にも監査は関係しているというわけです。

でも、業務監査は会計監査みたいに「監査を受けなければならない」という決まりはないですよね。
こんな意見もあるかと思います。
これについては確かに明確な定めはありませんが、
- 監事の設置が学校法人に義務付けられている(私立学校法第十八条)
- その監事の職務として業務監査が定められている
という点から、学校法人が監事による業務監査を受けることが義務付けられていると解釈できるというのが私の個人的な見解です。
まずはこうした根拠により、監査は行われていると理解しておきましょう。
【3つだけ】私立学校法改正と監査
監査の法的根拠のところでも触れたとおり、私立学校法と監査は密接な関係があります。
そして令和7年4月1日より改正私立学校法が施行されています。
改正私立学校法については以下の記事もご参照ください。
かなり大幅な改正があったわけですが、「監査」に関する改正で私がおさえておきたいと考えているポイントは以下の3つです。
- 大臣所轄学校法人等で、会計監査人の設置が義務化
- 大規模な大臣所轄学校法人等は常勤監事を必置
- 大臣所轄学校法人等は内部統制システムの整備義務
聞き慣れない単語があると思いますので、私なりの解釈を以下に載せておきます。
- 常勤監事:日常的に当該学校法人の業務を監査する人
- 会計監査人:「外部の目」で当該学校法人を監査する会計の専門家
- 内部統制システム:理事会、評議員会、監事、会計監査人等が互いに協働しながら不祥事を防止するための仕組み
細かなところを含めると、もっと知っておくべきことはありますが、「監査」に関するところではこの3つの改正だけでも理解しておきましょう。

大臣所轄学校法人等ってことは、大学や短期大学、規模の大きい高校なんかを設置している学校法人だけのことでしょ。
そう思った方、早計です。
今回の改正は私立学校のガバナンス改革の推進を目的としています。
この「ガバナンス改革の推進」は、もちろん大臣所轄学校法人等だけに求められているわけではありません。
近年、私立学校の不祥事が相次ぎ、社会から透明性や内部統制の強化が求められており、そうした背景から、法的な面から「監査体制の強化」を図ろうとしているわけです。
この点については、全ての私立学校に当てはまります。
- 学校法人は社会から不正防止等に対する体制の強化を求められている
- なかでも規模の大きい学校法人は、私立学校法によって監査専門の機関の設置が義務付けられている
経理会計担当でなくても、こうしたことは利害関係者に説明できるように情報を整理しておきましょう。
【何から手をつける】日頃からできる監査準備3選

常勤監事や会計監査人の設置とか内部統制システムの構築なんか、偉い人がやることだから結局私には関係ないよね。
そんな声も聞こえてきそうですが、この考えも早計です。
先ほど述べたとおり、学校法人は社会から不正防止等に対する体制整備が求められています。
ここで言う「不正防止等」は何も役員の横領などだけを指しているわけではありません。

そういう大きな話題ばかりがマスコミに取り上げられるので、そう思ってしまうのも無理ありませんが。
日々の業務における小さなミスやトラブル等も含まれています。
従って、学校法人における日常業務全般が監査の対象であり、それに関わる事務員全員が、常日頃から監査を意識して仕事に取り組む必要があるわけです。
むしろ、学生生徒や保護者からすれば、役員よりも事務員と接する機会が多いため、
「我々の仕事=学校法人の仕事」という認識を持っている人がほとんどと言っても過言ではないと思います。
監査の準備は、そうした身近な利害関係者からの信頼獲得につながると考えましょう。
では、その監査の準備で一体何をすればよいのか。
業務監査と会計監査に共通してやるべきこととして、以下の3つが代表的なものになります。
- 支出・契約の“根拠資料”を必ずセットで保管する
- 書類の“置き場”と“流れ”を固定する
- 監査でよくある指摘を“部署の共通知識”にする
それぞれ簡単に解説していきます。
支出・契約の“根拠資料”を必ずセットで保管する
ポイントは以下のとおりです。
- 見積書・契約書・支払伝票などを一式で管理
- 監査では「根拠のつながり」が最も重視されるため、セット保管が効果的
監査の大部分を占めるのがこの”根拠資料”のチェックです。

大量のファイルを監査が行われる部屋へ運び出すのが本当に手間なんですよね。
例えば、経理関係だと
- 会計伝票
- その他の請求書などの根拠資料一式
の2種類くらいに分けておけばよいというのが実感です。
そして、その”根拠資料”の整理で重要なのが「根拠のつながり」
そこには2つのつながりがあります。
- 時系列のつながり
- 規程とのつながり
まず、時系列のつながりです。
物品を購入して代金を支払うまでの流れを書類で表すと以下のようになります。
見積書→納品書→請求書
こうした流れがわかるように書類を整理しておくと、見る方も説明する方もストレスが少なくてすみます。
誰かに時系列で説明するつもりになって整理してみましょう。

ちゃんとそれぞれの日付が時系列になっていることもチェックが必要です。
もう1つが規程とのつながりです。
経理関係で多いのが「契約書の漏れ」です。
経理規程などで「〇〇円以上の場合は契約書が必要」と定めているにも関わらず、契約書がないということがよくあります。

高額の工事関係など、発生頻度が低いものはスルーしがちです。
あと、規程改正なども見落としがちなので要チェックです。いつの間にか基準の金額が変わっていたということがありますので。
「ルールを順守して業務を遂行しているか=規程とのつながり」も監査のチェックポイントですので、「前からこうやっている」という思い込みを捨てて、規程を確認しながら業務にあたりましょう。
2. 書類の“置き場”と“流れ”を固定する
これもポイントは「スムーズな監査」です。
特に以下の点に注意しておきましょう。
- 契約書、領収書、申請書など、種類ごとに保管場所を明確化
- 「提出→確認→決裁→保管」の流れを可視化し、誰が見ても分かる状態にする
書類の提出を求められた際に手間取っていると、それだけで相手に多少なりとも不信感を持たせてしまいます。
せっかく適切に業務が処理できていても、そんなところで躓いてしまってはもったいない。
配置図などを作成し、可視化して、誰でもわかるようにしておくことをおすすめします。
また可視化という点では業務フローの可視化も監査対応で必須です。
監査をする側の人は、不正やミスが起こらない業務の流れになっているかをチェックしてきます。

私は新人のころ、会計士から学費の請求から収納までの流れがうまく説明できなかった苦い経験があります。
上司のフォローのおかげで切り抜けられましたが、担当者として恥ずかしい思いをしました。
新たに担当となった人でも説明できるように、整備しておきましょう。
3. 監査でよくある指摘を“事務室の共通知識”にする
直接業務に関わることではありませんがこれも重要です。
過去の監査結果を共有し、部署全体で指摘事項を把握しておくことで、業務改善につなげることができます。
また、監査する側の人は、あえて前回の監査で確認したことと同じことを尋ねてくることがあります。
理由を聞いてみると、「業務に変わったところがないかを確認するため」とのこと。
同じところは同じ、変更点は変更点として明確に区別して説明できるように、記録を整備しておくことは有用です。
私の個人的な考えとしては、その部署に配属になって日が浅い人は、率先して監査指摘事項を取りまとめる係を担当することをおすすめします。
それによって自部署の業務に関する知識や問題点を把握することができるからです。
立候補してみてはいかがでしょうか。
まとめ
私立学校における監査は、法的根拠に基づく重要なガバナンス機能です。
そして私立学校法改正により、その重要性はさらに高まりました。
ただ、その重要性は理事や経理会計担当だけが理解しておけばよいものではありません。
社会からの要請として、全ての私立学校事務員が理解しておくべきものです。
事務員として、監査を「負担」ではなく「学校法人を守る仕組み」と捉え、日常業務を遂行するなかで準備を進めていくことが大切です。
日常を整えることが、最も確実な監査対策であり、それが社会からの期待に応えることへつながるということを意識して、今日から少しずつ整えていきましょう。
この記事で紹介した内容がその参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

