
この記事は以下のような人を対象としています。
・私立学校事務員として寄付金や補助金についての情報を整理したいと思っている人

異動で補助金の担当になった。業務を進めるにあたってどんなことを知っておけばいいんだろう。

私立学校に勤めていて寄付金や補助金のことを何も知らないってなんか恥ずかしい。簡単なことだけでもおさえておきたいなぁ。
こんなことを思った経験、ありませんか。
- 毎年のようにある制度改正
- 寄付者の価値観の変化
- デジタル化の加速
補助金や寄付金は、今まさに“変化の波”の中心にあるといえます。
これらの要因により、ここ数年で大きく様変わりしているというのが私の実感です。
もう少し具体的に見ると、
- 文部科学省による税制改正や寄付控除制度の見直し
- オンライン寄付等の普及
- 補助金のDX関連へのシフト
などの外部環境の急速な変化があると思われます。
たとえば、寄付金の例を見てみましょう。
「学校法人が税額控除対象法人として認められるための実績判定期間の短縮」という税制改正があり、令和7年4月1日から施行されました。
詳しくは以下をご参照ください。
税額控除対象法人の特例要件について
(文部科学省ホームページへのリンク)
寄付金制度は今後もさらに動きが大きくなることが予想されます。
また、制度以外にも寄付者自身の変化というポイントも見逃せません。
寄付者の価値観は「共感」「透明性」を重視する方向に変化し、クラウドファンディングや使途指定型寄付が増加している様子です。
私学事業団が公開している寄付募集の事例集では、各学校法人がストーリーテリングや寄付者との関係構築に力を入れていることが紹介されています。
こちらについては、私学事業団のホームページもご覧ください。
寄付募集のアイデア事例集
(私学事業団ホームページへのリンク)

ただパンフレットを配布してお願いするだけでは、当然ですがまず集まりません。
もちろん補助金についても同様に変化の流れが押し寄せています。
従って、寄付金・補助金担当者としては、学校の財務基盤を強化し、教育の質を高めるために、こうした補助金や寄付金の最新トレンドをおさえることは欠かせないというわけです。
言い換えれば、担当者は、制度・寄付者心理・デジタル技術の変化を理解し、学校の未来を支える“攻めの事務”へと進化する必要があるとも言えます。
そこで今回は、そうした“攻めの事務”を目指すためにおさえておくべき補助金・寄付金のポイントを私なりにまとめてみました。
ポイントは以下の5点です。
- トレンド①:寄付者の価値観は「共感・透明性」へシフト
- トレンド②:オンライン寄付の急拡大と決済手段の多様化
- トレンド③:補助金は「DX・ICT整備」関連が増加傾向
- トレンド④:監査・ガバナンス強化に伴う“説明責任”の重要性
- トレンド⑤:担当者に求められるスキルの変化
皆さまの参考になれば幸いです。
【トレンド①】寄付者の価値観は「共感・透明性」へシフト
寄付者は「何に使われるのか」「どんな成果が出たのか」をこれまで以上に重視するようになっています。

学校法人が取り扱うお金全般に対して、使途公開や説明責任の強化が重要視されている、というのが私の実感ですね。
さらに、寄付文化が多様化し、寄付者が自分の価値観に合うプロジェクトを選ぶ時代になってきているという傾向も感じられます。
そういった寄付者の価値観や社会からの要請を踏まえて、寄付金に関する業務にあたることが私立学校事務員には求められています。
具体的な対応としては、
- 寄付者向け報告書の充実
- SNSや動画を使ったストーリーテリング
- 卒業生・地域との関係強化イベントの開催(例:寄付感謝の集い)
などが考えられます。
実際、私の以前の勤め先では、上記の「寄付感謝の集い」のようなイベントを開催していました。
卒業生からの寄付を原資に、在校生へ奨学金を給付するといった事業を行っており、その一環として卒業生と当該在校生がお互い顔を合わせてコミュニケーションをとるといった内容です。
どちらからも好印象な感想を頂戴していたのを覚えています。
結局、寄付者の心を動かすのは「学校の想い」と「透明性」です。
担当者はただ募集パンフを配布し、入金処理をするだけでなく、“伝える力”を磨くことが求められていることを意識しておきましょう。
【トレンド②】オンライン寄付の急拡大と決済手段の多様化
新型コロナウィルス感染症の問題を機に一気に進んだ「キャッシュレス決済」
その流れは寄付金にも及んでいます。
学校法人の寄付の申し込み方法を調べてみると、ネット・書面・窓口など多様化しており、特にオンライン寄付は今や必須の選択肢。
前述の私学事業団が紹介している事例からもそれは明らかだと思われます。

決済手段の多様化が寄付者の利便性を大きく左右しているというのは実感がありますね。
従来型の振込用紙を渡しても、「窓口に行けない」という声がちらほら耳に入ってくるので。
オンライン申込や決済手段としては以下のようなものがあるようです。
- クレジットカード決済
- QRコード決済
- 継続寄付(サブスク型)
- クラウドファンディングの活用
私の勤め先ではクレジットカード決済による寄付を実施しています。
私自身、実際に利用して寄付してみましたが、家にいながら全て完結するので大変便利だと感じました。
やはり、オンライン寄付の導線設計(HP・SNS・メール連携)は、寄付金額を左右する重要な要素だということです。
他校の事例などを調べて、自校にも取り入れていく姿勢が大切になってきます。
【トレンド③】補助金は「DX・ICT整備」関連が増加傾向
以前の記事で、令和8年度の文部科学省予算のポイントについて解説しました。
そこでも触れましたが、「教育DX(デジタル化)の本格推進」が補助金における重要なキーワードの一つであると私は思っています。
文部科学省の資料を見ても、ICT整備・セキュリティ強化・データ活用など、学校のDXを後押しする分野にシフトしている様子が見受けられます。
詳しくは文部科学省のホームページをご覧ください。
令和8年度文部科学省予算(案)等の発表資料一覧(1月)
(文部科学省ホームページへのリンク)

国全体で教育DXを推進していて、学校現場のICT環境整備が急務となっているためですね。
この公表資料をざっと見ただけでも、以下のような内容が確認できます。
- ICT環境整備
- 校務DX環境整備
- デジタル教科書導入

「⾼等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」なんか、まさにその表れといった名称ですよね。
補助金担当者は、こうした補助金について最新の情報を入手し、学内に発信しながら取りこぼしがないように環境整備を支援していく必要があります。
補助金の申請要件の確認や整備・補助金申請のスケジュール管理を関係部署と定期的に行う体制を整えておきましょう。
また、前述したとおり、「財務基盤の強化」だけでなく「教育環境の整備」という役割を担っています。
これらについては、補助金の担当者以外の方も担っている共通の役割です。
「これ、うちの部署に導入できそう」というアイデアがあれば、積極的に発信するように心がけましょう。
【トレンド④】監査・ガバナンス強化に伴う“説明責任”の重要性
トレンド①でも触れましたが、学校法人が取り扱うお金全般に対して、使途公開や説明責任の強化が重要視されている傾向が感じられます。
最近の動向の中で、そういった傾向を最も感じたのが「私立学校法の改正」です。
そこでは、
- 会計監査人設置の義務化(大臣所轄学校法人等)
- 学校法人会計基準の適用対象拡大
- 適正な財務状況の開示
などが盛り込まれていました。
私立学校法改正については、こちらの記事もご覧いただければと思います。
こうした状況も踏まえて、当然、寄付金・補助金の適正な管理も行う必要があるというわけです。
使途公開や説明責任の強化が叫ばれる背景には、ここ最近の学校法人における不祥事が関係していると考えられますが、これを理事長や理事など偉い方々だけのものと考えてはいけません。
私立学校事務員としては、日常業務レベルでの取り組みが不可欠になってきます。
特に、寄付金・補助金担当者としては、
- 証憑管理の徹底
- 寄付金台帳のデジタル化
- 補助金の執行記録の整備
などに取り組む必要があると思われます。

紙で整備しているとどうしても劣化してしまい、古いものになると管理が難しくなるんですよね。
昔の寄付金台帳なんか、もうボロボロで・・・。
ちなみに私の勤め先では、定期的な担当者の変更を実施しています。
新しい目で見ることで、おかしな点に気づきやすくなるというメリットがあると感じています。
また、忘れがちなのが資料の差し替え。
正しい資料は提出しているのですが、手元の控えが修正前の資料のままということはよくあります。

実際私もやってしまい、所轄庁の実査のときに発覚したことがありました。
提出書類は正しいものだったので、問題ありませんでしたが、汗が止まりませんでした。
監査対応は“その場しのぎ”ではなく、こうした小さな取り組みの積み重ねが重要です。
【トレンド⑤】担当者に求められるスキルの変化
直接的な寄付金・補助金のトレンドではありませんが、トレンド①から④の影響もあり、寄付金・補助金担当者には従来の事務処理能力に加えて、
- 多様化するステークホルダーへの対応のためのコミュニケーション力
- 広報的な視点(ストーリーテリング)
- クラウドツールの活用などICT関連スキル
が求められるようになってきています。

補助金獲得のために他部署と連携したり、DXやオンライン決済などに関する知識も必要になってきている感じもします。
特にコミュニケーション力は意識したいところ。
寄付者・教職員・外部業者など、関係者と連携しながら業務を進めることが必須だからです。
「一日中、机に向かって事務作業」のようなイメージで私立学校事務員の仕事に就くとギャップを感じると思います。

それでも、そういった業務の割合が多いのは事実ですが。
最近では、学校法人が設立した株式会社に事務処理業務は委託し、事務員は戦略等の企画・提案・実行に集中し、とにかく学校全体を巻き込んで仕事に取り組むことをすすめているところもあるようです。
私はDXやICT関連については、とにかく入門書やネット動画から情報を集めるようにしています。
特にネット動画の存在はありがたい。
再生速度を上げて視聴し、ざっと基本的なところをおさえたうえで入門書を読んでみると、頭に残りやすいというのが実感です。
簡単に取り組めるのでおすすめします。
担当者のスキルや知識が学校の信頼を左右する時代になっているということを意識しておきましょう。
まとめ
寄付金・補助金業務は、学校の財務基盤を支える重要な役割です。
今回紹介したトレンドを理解し、日々の業務に活かすことが、学校の未来をつくることにつながります。
その第一歩としてまずは、日常業務を改善するところから始めてはいかがでしょうか。
年間スケジュールを「見える化」したり、教職員への情報共有を「仕組み化」するだけでも、効果はあると思います。
また、こうしたトレンドを意識することは、今はこれらの担当者ではない事務員の人にとっても大切です。
トレンドを通じて、学校法人が社会から求められていることを理解できるからです。
その理解がきっと業務改善につながるはず。
今回の記事がその一助になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。



