
この記事は以下のような人を対象としています。
・会計検査院対策のために知っておくべき基本事項を知りたいという人。
先日、令和6年度決算検査報告が内閣に送付されました。
検査報告の内容は、会計検査院のホームページから確認できます。
令和6年度決算検査報告
(会計検査院Webサイトへのリンク)
補助金業務を担当していて一番不安になるのがこの「会計検査院対応」
この検査で「不当事項」に挙げられてしまうと、学校法人にとって様々なダメージを負うことになります。
もちろん、担当者の精神的ダメージも甚大です。
この検査を通るために補助金業務担当者は、日々神経をすり減らしていると言っても過言ではないと私は思っています。

こんなことを言っていますが、私は幸い一度も会計検査院の対応をしたことはありません。
ただ、いつ検査に来られても対応できるよう、準備はしてきたつもりです。
そんな私が今回の検査報告を見て、「これは補助金業務担当者として基本の『キ』だ」と感じた不当事項が何点かありました。
そこで今回の記事では、その基本の『キ』とも言うべき事項について取り上げたいと思います。
具体的には以下の5点です。
- 対象外年度
- 対象外費用
- 内定前着手
- 補助金重複
- 教育・管理区分
特に、「これから補助金業務を担当する可能性があるから不安」と思っている方を対象と内容をまとめています。
それ以外の方にとっても、基本の確認にお役立ていただければ幸いです。
【年度区切り】対象外年度に関する不当事項
会計検査院の公表資料を引用します。
補助対象は事業実施年度内に完了する事業であることなどとされているのに、事業実施年度の翌年度以降(以下「後年度」という。)に効力が発生するため事業実施年度内に完了しているとは認められない後年度分のライセンス料を補助対象経費に含めるなどしていた。
出典:会計検査院Webサイト(https://www.jbaudit.go.jp/)
会計検査院の資料にもあるとおり、基本的に補助金は当該年度に実施および完了する事業が対象となります。
2025年度を例にすれば、2025年4月1日から2026年3月31日までに実施・完了する事業が補助対象になるというわけです。
単純に「物品を購入する」とか「工事を行う」ということであれば、スタートとゴールが確認しやすいと思います。
しかし、ライセンス料のように「〇年〇月〇日から△年△月△日まで」といった期間が設けられるようなものは注意が必要。
その期間が年度をまたいでいることに担当者が気づかないケースが発生するからです。

請求書などにも「ライセンス料」とだけ記載されていることが多いという印象があります。
他にも、
- 保守料
- リース料
などが挙げられます。
地道な方法になりますが、これらの費用を頭に入れておくのが一番の対処法だと思っています。
請求書等でこうした文言を見かけたときは取引会社に、

これって期間はいつからいつまでになりますか?
と尋ねるようにしましょう。
【要綱を熟読】対象外費用に関する不当事項
これもまずは公表資料を引用します。
附属病院等に置くものに係る経費やサーバに係る経費は補助の対象とならないことなどとされているのに、附属病院に置く機器の更改に係る設計費等及びサーバの導入に係る経費を補助対象経費に含めるなどしていた。
出典:会計検査院Webサイト(https://www.jbaudit.go.jp/)
補助金を申請するにあたって、必ず目を通さなくてはいけないもの。
それが「要綱」です。

「要項」だったり言い方は様々ですが、要するにその補助金を申請するにあたって守るべき事項が記載されたルールブックのようなものになります。
その要綱等には必ずと言っていいほど「対象外経費」というものが書かれているはずです。
例えばネットワーク整備費に関する補助金であれば、
- 通信費などランニングコストに係る費用
- 工事を伴わない機器のみの購入費用
- クラブ活動のみに使用する場合の費用
などが対象外経費として挙げられているのを私は見たことがあります。
これをうっかり含めてしまうと、このような不当事項として扱われてしまうわけです。
要綱等に明確に「対象外」と記載されているため、検査院も白黒判断がつけやすい。
そのため目をつけられる可能性が高い、と以前の勤め先では教わってきました。
これも結局「要綱等をよく読む」といった当たり前のことを徹底できるかがポイントになります。

私は、要綱等の対象外経費の記載箇所だけピックアップしてチェックリストにし、1つずつ確認するようにしていました。
地味ですが、おすすめの方法です。
【お手つき厳禁】内定前着手に関する不当事項
公表資料の内容を確認してみましょう。
補助対象は補助金の交付内定以降に着手する事業であることとされているのに、交付内定以降の事実と異なる日付を記載した請書の写しを実績報告書に添付して提出し、実際には交付内定前に着手していた事業を補助の対象としていた。
出典:会計検査院Webサイト(https://www.jbaudit.go.jp/)
大原則として補助金は、
「募集」→「申請」→「内定」→「事業着手」→「事業終了」→「実績報告」
といった流れで進んでいきます。
従って、「内定」つまり「この事業は補助金の対象になりました」という連絡があるまで、事業を始めてはいけないことになっているケースが多いです。

細かいことを言うと、事前に手続きをすれば内定前に着手することができたりする場合がありますが。
つまり、きちんと手続きどおりに事業を進めていない場合、こうした不当事項として挙げられることがあるということになります。
たまに、こうしたルールをよく理解していない上司などから、

この前やったあの工事、この補助金の申請条件に当てはまるけど、申請できないの?
と言われることがあります。
担当者としては、要綱等でそうしたことができない旨を説明したり、検査院の報告を見せて、

不当事項に挙げられる可能性がありますけどよろしいですか?
と聞き返すくらいの対応をとりましょう。
ちなみに余談ですが、この事業実施時期に関することで補助金担当者のなかで語り継がれているエピソードがあります。
それが「こいのぼりの話」です。
ある学校が検査院に補助事業の実施状況がわかる資料を見せた際、1枚の写真が出てきました。
その写真には「こいのぼり」が写っていたそうです。
しかし、実績報告書類等に記載された補助事業の実施期間は、こいのぼりが揚がる時期ではありません。
検査院がそれに気づき、これはいつ撮影された写真なのか問い詰められ、その結果、虚偽であることが判明したというお話でした。
話の真偽は定かではありませんが、皆さんも変に取り繕うのはやめておきましょう。
当たり前ですが、期間は厳守です。
【連携又は一元管理】補助金重複に関する不当事項
これは、私立大学等経常費補助金に関する不当事項として挙がっていました。
内容を見てみましょう。
ポスト・ドクターのうち、元年度2人、2年度2人、3年度2人、4年度2人、5年度1人については、独立行政法人日本学術振興会が同大学の研究者に対して交付した科学研究費補助金により人件費が賄われていて、同学校法人が賃金を「職員人件費(兼務職員)」で会計処理していないことから、補助要件を満たしていなかった
出典:会計検査院Webサイト(https://www.jbaudit.go.jp/)

ざっくり言うと、科学研究費補助金の対象となっている人件費を、私立大学等経常費補助金の対象にもしてしまったという感じです。
大規模の学校になるとこうしたことが起こりやすいという印象があります。
詳しい話は省略しますが、科学研究費補助金は学校法人の直接的な収入にならないので、見逃されがちです。
とにかく関係部署が連携して、「何が」「どの補助金の対象か」ということを一覧にするなどして管理を行う必要があります。
また、小さな学校でもこうした一元管理は重要です。
私の体験としては、コロナウィルスが蔓延していた時期は大変でした。
次々と感染症対策関連補助金が交付されるため、どのタイミングで募集があった補助金で何を購入したのかということを逐一把握する必要があったからです。
幸い小さな学校で、情報が私のところに集めやすく、一元管理がしやすかったためなんとか管理できましたが、規模が大きかったらと思うとぞっとします。
個人の補助金に関する知識だけでなく、組織としての体制整備も大事ということも覚えておきましょう。
【グレーなラインもある】教育・管理区分に関する不当事項
最後は教育研究経費と管理経費の話です。

教育研究経費と管理経費って何?
という人は、以前の記事をご参照ください。
これも、私立大学等経常費補助金に関する不当事項として挙がっていました。
公表資料の内容を確認してみましょう。
特別補助のうちの「大学間連携等による共同研究」について管理経費支出を所要経費に含めていたのに、事業団は、これらの誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。
出典:会計検査院Webサイト(https://www.jbaudit.go.jp/)
私はこれを見たとき、「意外だな」と感じました。
教育研究経費と管理経費の区別といった解釈が分かれやすいものは、検査院の不当事項に挙がりにくいという話を私学事業団の方から伺ったことがあったからです。

白か黒かで言うと「グレー」と判断されるようなものですね。
逆に人数や個数といった白黒はっきりしたものは、不当事項に挙がりやすいという話でした。
そうした点から考えれば、よほど明らかに管理経費に該当するものを含めてしまったのだろうと推察されます。
これは補助金担当者というより経理・会計担当者が注意すべき事項だと思います。
とにかく管理経費に分類される7種類を頭に叩き込んで日々の業務に当たる以外、対処法はないというのが私の意見です。
経理・会計担当の私立学校事務員にとっては基本中の基本ですから。
まとめ
私の以前の勤め先では、会計検査院に不当事項として挙げられた経験があったそうです。
私が勤める前の話なので当時の状況は不明ですが、マスコミに「故意に補助金を多く受給した」というニュアンスで取り上げられて、風評被害等様々な影響があったと聞いています。
このようなことが起こらないように補助金担当者は正確な知識を身につけておく必要があります。
それは補助金だけでなく学校法人会計も含めてです。
そのことが学校を守り、関係者からの信頼獲得にもつながります。
地味ですがとても大切な仕事であることを意識しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


