
この記事の内容は、以下のような人を対象にしています。
・学校法人会計に関する知識を身につけたいと考えている人。
これまで学校法人会計に関するクイズを出題してきました。
貸借対照表に関するクイズは前回で一旦終わりとし、今回は「事業活動収支計算書」をテーマにしたクイズに挑戦していただきたいと思います。
形式はこれまでと同様にビジネス会計検定3級を参考にしています。
問題を全部で5問用意し、全ての問題のあとに今回の出題に関連した情報を紹介しています。
貸借対照表と同様に、学校法人会計基準で作成が義務付けられている計算書類の1つである「事業活動収支計算書」
その年度の学校法人の経営状態を見るために重要なものになりますので、理解を深めておきましょう。
なお、この記事は掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
【第1問】事業活動収支計算書の構成①
事業活動収支計算書は3つの活動に区分されて、その収支状況を記載する形式となっている。
その3つの区分とは「教育活動収支」「教育活動外収支」「〇〇収支」である。
「〇〇」に入る正しい単語は次のうちどれか。
正解:C
学校法人会計基準の条文を引用します。
第二十三条
e-GOV法令検索より引用
事業活動収支計算書は、当該会計年度の次に掲げる活動に対応する事業活動収入及び事業活動支出の内容を明瞭に表示するとともに、当該会計年度において第十二条及び第十三条の規定により基本金に組み入れる額(以下「基本金組入額」という。)を控除した当該会計年度の諸活動に対応する全ての事業活動収入及び事業活動支出の均衡の状態を明瞭に表示するものとする。
一 教育活動
二 教育活動以外の経常的な活動
三 前二号に掲げる活動以外の活動
一のことを「教育活動収支」、二のことを「教育活動外収支」、三のことを「特別収支」と言います。
各区分については以前の記事でも紹介していますので、そちらをご参照いただければと思います。
【第2問】事業活動収支計算書の構成②
事業活動収支計算書にはいくつの収支差額が示されているか。
ただし、前年度繰越収支差額および翌年度繰越収支差額を除くものとする。
正解:B
事業活動収支計算書は、以下の6つの収支差額が記載される形式となっています。
- 教育活動収支差額
- 教育活動外収支差額
- 経常収支差額
- 特別収支差額
- 基本金組入前当年度収支差額
- 当年度収支差額
詳しくは、実際の様式を確認しておきましょう。
事業活動収支計算書
(e-GOV法令検索へのリンク)
その中でも私が特に重要と思っているものが以下の3つです。
- 経常収支差額
- 基本金組入前当年度収支差額
- 当年度収支差額
こちらについても、以前の記事の内容をご参照いただければと思います。
事業活動収支計算書を見るときの大切なポイントとなりますのでおさえておきましょう。
【第3問】事業活動収支計算書における収支差額の概念
次のアからウの文章のうち、誤っているものの個数はいくつか。
ア.本業の教育活動収入から教育活動支出を差し引いた収支差額のことを、経常収支差額と言う。
イ.経常収入は「教育活動収入計+教育活動外収入計」、経常支出は「教育活動支出計+教育活動外支出計」で算出され、経常収支差額は経常的な収支バランスを表している。
ウ.学校法人の最終的な利益を示すのは、基本金組入前当年度収支差額である。
正解:C
ア.学校法人の本業の収支を示す「教育活動収支差額」の説明である。
イ.そのとおり
ウ.学校法人の最終的な利益を示しているのは、基本金組入まで反映させた「当年度収支差額」である。
事業活動収支計算書から経営状況を読み解くためには、どの収支差額がどんな内容を示しているか、きちんと把握しておく必要があります。
教育活動→教育活動外→経常収支→特別→基本金組入前→当年度
という流れを頭にインプットしておくと理解しやすいと思いますので、覚えておきましょう。
【第4問】事業活動収入のルール
次の文章は、事業活動収入について説明したものである。( )に当てはまる語句として適切なものはどれか。
事業活動収入は、当該会計年度の学校法人の( )とならない収入を計算するものとする。
正解:C
学校法人会計基準の条文を引用します。
第二十四条
e-GOV法令検索より引用
事業活動収入の計算は、当該会計年度の学校法人の負債とならない収入について行うものとする。
わかりにくいと思いますので、私たちに置き換えてイメージしてみましょう。
例えば、私たちが働いて受け取る給料は「負債とならない収入」にあたります。

基本的に後から返す義務はないものですからね。
一方、カードローンなどの借金はお金は増えますが、「負債とならない収入」にはあてはまりません。
前回までに出題した貸借対照表のクイズの中で解説したとおり、借入金は「負債」つまり後から返済する必要のあるお金に該当するからです。
同様に他人から一時的に預かっただけのお金も「負債とならない収入」には該当しません。

「パン買ってきて」と言われて預かったお金は「やっぱりパンいらないから返して」と言われたら返さないといけないからです。
このように誰にも返す必要のない収入が事業活動収入になります。
【第5問】事業活動支出のルール
次の文章は、事業活動支出について説明したものである。(ア)(イ)に当てはまる語句の組み合わせとして適切なものはどれか。
事業活動支出は、当該会計年度において消費する(ア)の取得価額及び当該会計年度における(イ)の対価に基づいて計算するものとする
正解:B
学校法人会計基準の条文を引用します。
第二十四条
e-GOV法令検索より引用
2 事業活動支出の計算は、当該会計年度において消費する資産の取得価額及び当該会計年度における用役の対価に基づいて行うものとする。
こちらも私たちの実生活に置き換えてみましょう。
基準の定めからすると、支出の種類は「当該会計年度において消費する資産の取得価額」と「当該会計年度における用役の対価」の2種類になります。
前者は単純に「生活に必要なものを購入するために支払ったお金」とここでは理解しておきましょう。
そして後者は、光熱水費などがイメージしやすいと思います。

「電気の使用」という用役に対して、「電気代」という対価を支払っているというイメージですね。
一方で、ローンなどの借入金の元本返済は事業活動支出には該当しません。
お金(資産)が減る代わりに「お金を返す」という義務(負債)も減るからです。
純粋に資産が減少する支出が事業活動支出であると覚えておけば、まずは問題ないと思います。
【理解度アップ】現物寄付にまつわるエピソード
事業活動収支計算書を構成する「収入」「支出」「収支差額」についての問題を解いていただきました。
それぞれについてどんなものかある程度イメージできるようになってのではと思います。
ただ、どうしても私たちの実生活からはイメージしにくいものもあります。
そのなかの代表例として「現物寄付」が挙げられます。
以下、この現物寄付について少し詳しく紹介していきます。
まず「寄付」と聞くと、ふるさと納税などお金を相手に渡すイメージが強いように思います。
しかし、お金以外にも「物」を寄付する場合があるのです。
それが現物寄付です。
学校に対して個人や企業などが、「物」を寄付するというケースがあります。
このような場合、学校側は事業活動収入として扱うことになります。

設問4の「負債とならない収入」に該当するというわけです。
寄付なのであとで返す義務はありませんので。
私たちが日々生活をするなかで、何か物をもらった際に「これは収入だ」と考えることはないと思いますので、ここがギャップに感じるわけです。
そんな現物寄付ですが、私が私立学校事務員として働いてきた中で、特に多いと感じるのが「図書」の現物寄付です。
そしてこれがトラブルに発展することもあります。
私の今の勤め先での出来事ですが、退職する教員が勝手に自分の所有する図書を学校の図書室に寄贈していたのです。
図書の冊数や金額というのは、学校の財政状態を把握するために必要な情報です。
そのため、毎年度会計上の数値と図書室が管理している数値とが一致しているかを確認します。

図書室は独自に図書システムを導入して管理しているケースが多いので、そのシステムと会計システムの数値を比べるわけですね。
ところが、前述のように会計システムを通さずに直接図書室の蔵書にしてしまうと、数値が合わなくなってしまうわけです。
本人は生徒のためと思い、寄贈したのかもしれませんが、会計上はそんなに単純な話では済みません。
こうして決算時の忙しい中、寄贈分の図書を「現物寄付」として受け入れる作業が発生することになりました。

作業自体は会計システムに入力するだけなので簡単なのですが、順調に進んでいた流れがストップしてしまうので、精神的にはあまりよろしくないんです。
こんなことが起こらないように、図書の寄贈をする場合は、会計担当に一言かけるように日ごろから教職員に周知徹底しておくことをおすすめします。
まとめ
事業活動収支計算書の基本となる部分について問題を解いていただきました。
まずはこうした計算書の仕組みを覚えることが大切です。
仕組みがわからなければどこにどんな情報が示されているかわからないからです。
この記事を参考に、実際にご自身の勤め先の事業活動収支計算書を見てはいかがでしょうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。








