
この記事は以下のような人を対象としています。
・私立学校で勤めるにあたって、意識すべき大切な時期があるなら知りたい。
私立学校事務員として働き始めると、卒業式や入学式、学校の創立記念日など、1年を通して様々な行事やイベントを経験します。
また、そうした行事等以外にも決算や成績処理など業務的な繁忙期もあります。
そんな中で、これらのいずれにも該当しないにも関わらず非常に大切な日があります。
それが「5月1日」という日です。
そこでこの記事では、私立学校事務員が知っておくべき「5月1日」の重要性について解説します。
新入職の私立学校事務員の方をメインの対象者として、以下のような内容にまとめています。
- そもそも5月1日は何の日か
- 特に意識すべきポイント2点
参考にしていただければ幸いです。
【そもそもの話】5月1日には何があるのか
まずは概要です。
結論から申しあげますと、5月1日に何か行われるわけでもなく、何かしなければならないわけでもありません。
それでは、なぜ重要なのかというと、5月1日は「基準日」になるからです。
代表的なものとして以下のような調査の基準日に設定されています。
- 文部科学省:「学校基本調査」
- 本私立学校振興・共済事業団:「学校法人等基礎調査」
- 各都道府県が実施する調査
これらの調査については、基本的に「5月1日現在」の状況を回答します。
そして、この調査の数値をもとに補助金が算定される仕組みになっています。

厳密には「学校基本調査」は補助金を算定するためのものではありませんが、国が実施する「学校に関する統計調査」として大切な役割を担っているため、重要度は高いのです。
また、これは私の経験則による部分もありますが、その年度の収入がどの程度になるかを判断する「基準日」にもなります。
年度の始まった4月当初は、まだまだ生徒や教職員の人数が変わる可能性が高く、一カ月ほど経過した5月には状況が落ち着くという印象があります。
そのため5月になれば、生徒数の見通しが立つようになり、それはその年度の学納金収入の見通しも立つということにもつながります。
学納金収入はその学校の収入の8~9割を占めます。 つまり、その見通しが判明すれば1年間の収入の大部分を予測することができるというわけです。

民間企業とは異なり、年度途中に突然収入が大きく増えるということは学校ではまず起こりえません。逆に生徒の転・退学等で減ることの方が多いです。
そのため、5月1日現在の生徒数を基にした数値をその年度の収入のMAXとして考え、支出をコントロールする必要があります。
こうした「基準日」という観点から、5月1日という日が重要になるわけです。
【特に意識すべき点①】生徒数
前述のとおり、5月1日現在の生徒数には「学校の収支状況」という面から相当な注意を払う必要があります。
その収入のうち、学納金収入における重要性はすでに述べましたが、補助金収入の面でも生徒数は非常に大きな意味を持っています。
これも私の経験上の話になりますが、生徒数が減少傾向にあると、都道府県等からの補助金の金額も減少傾向になります。
その点から、生徒数が補助金収入に与える影響は大きいものと言えることができると思います。
都道府県等が実施する生徒数調査への回答を行う際には、そういった状況を特に意識しましょう。

つまり、「正確さ」が重要ポイントということです。
この「正確さ」を担保するために、これと言った確実な方法はありません。
とにかく、教員との連携を密にとることを心掛けるのみです。
生徒の欠席状況などを事務室が把握できる方法があるのであれば、積極的に活用することをおすすめします。
そうして把握した情報をもとに、欠席の多い生徒が把握できれば、担任に「転学や退学の話は出ていないか」などをこまめに確認しましょう。
あとは校長など管理職を通じて、教員にアナウンスすることも有効です。
生徒の異動情報は、1年を通じて注意すべきことですが、とりわけこの5月1日時点については慎重に把握するよう努めましょう。

ただし、上述の話は全て高校を前提にしています。人数の多い大学ではこのような把握は困難でしょう。
大学の学籍担当者は本当に大変だと思います。
参考までに、この生徒数調査でやりがちなミスを1つご紹介します。
それは「休学者を除く」というミスです。
休学している生徒は学校に来ていないため、調査担当者がカウントから除いてしまうというケースがあります。
休学は「学校には在籍している」状態であるため、生徒数には含めます。
新入職の事務員の方などは、まだそういった知識がないため、生徒数に含めず調査に回答してしまうわけです。
「休学者は生徒数に含める」よく覚えておきましょう。
【特に意識すべき点①】教職員数
生徒数に並んで重要なのが、この教職員数。
これも、補助金の交付額を算定するための基礎となる数字だからです。
民間企業にお勤めの方などからすれば「ありえない」という印象かもしれませんが、民間企業でいうところの「従業員」の給与等に対して、都道府県等が補助金を交付してくれます。
従って、この人数を誤って報告すると、場合によっては「補助金の不正受給」という扱いを受けることになります。

たまに、ニュースなどで「職員数を水増しして補助金を不正受給」のような内容が報道されますよね。
わざと水増しして報告するのは論外ですが、単純に担当者のカウントミスの場合もあります。
しかし、そういった場合でも「単純ミス」ではなく、「故意に水増し」のようなニュアンスで報じられることがありますので、注意が必要です。
そうなると、補助金の返還という直接的な収入への影響だけでなく、「不正を行った学校」という風評被害による間接的な収入へのダメージにもつながりかねないということを、担当者は特に理解しておくべきです。
なお、この教職員数でも生徒数と同様のやりがちなミスがあります。
生徒数の時は「休学」でしたが、教職員数の場合は「休職」がポイントです。
これもいつから休職しているかなどによって、教職員数には含めずに回答しなければならない場合があるからです。
生徒も教職員も「休」に注意が必要、ということを認識しておきましょう。
なお、私の20年以上に渡る私立学校事務員経験からすると、「ルールや根拠資料を複数の目でチェックする」「都道府県等の担当者に確認する」など地味な方法の繰り返しが、結局ミス防止の最善策になります。

くれぐれも「思い込み」や「担当者一人」で回答しませんように。
まとめ
私立学校事務員にとって大切な「5月1日」という日。
例えば「この生徒の異動は5月1日生徒数に影響があるか」など、この日を意識して考えられるようになることが、事務員として大事なことの1つだと私は考えています。
また、経理・会計担当者としては前述のとおり、5月1日時点での生徒数や教職員数から、その年度の収支の見通しを考えられるようになることも重要です。
「学納金」「補助金」「人件費」と学校の収入・支出それぞれにおいて大部分を占める数字の基となるのがこの「5月1日」における人数だからです。
そういった意味からも、単なる統計調査の基準日としてではなく、学校の経営を考えるうえで大変意味のある日だということを理解しておきましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。